[初心者必見]4基準から導くおススメの「シュラブ」ローズ10選

画面いっぱいに咲きほこるパールピンクのバラ「ナエマ」の美しい花姿。[撮影者:花田昇崇]

本稿は バラ初心者の品種の選び方。あなたに最適なバラを探す4基準 で案内した基準を前提に、数多くある『シュラブ(半つる性)』ローズのなかからはじめてでも育てやすいバラを紹介します。初心者でも簡単に育てられる“総合的に強い”品種です。

今回扱う品種は3つの樹形のうち「シュラブ樹形(=半つる性)」に属する10品種です。バラ栽培にはじめて挑むシュラブローズ最初の1株は紹介するなかから選べば間違いないはずです。

強いシュラブをお探しのあなたはぜひ本稿をご覧ください。

 

初心者はバラをどう選ぶ?

バラ初心者の品種の選び方。あなたに最適なバラを探す4基準 はこれまでバラを育てたことがない人に向けて最初の1株を探すための視点を説明しています。

 

シュラブの特徴についてご存じない方はこちら

シュラブってなに?|多様・多彩なバラの個性が集まるシュラブの魅力 ではシュラブ樹形の特徴や花色の多彩さの魅力など、シュラブの魅力を紹介しています。

なお、以下で紹介する品種のなかで作出された欧米本国の分類では「フロリバンダ」とされるものの、日本の気温環境ではシュラブに類する特性を有する品種があります。それらは実情に即して本稿で扱います。[LCIやポリアンサについても同様。]

 

初心者は必ずチェック!おススメのシュラブ10選

[各10品種の品種データの「芳香」「耐病性」に付した星マークは6段階評価としています。6段階中★が多いほど「強さ」をあらわします。★3=標準的な強さ(普通)

[※表記の参考 : 普通 < 普通よりも強い < 強い < かなり強い < 最強 ]

 

ザ・ジェネラス・ガーデナー(Austin,D)

ホワイトから淡い桃色に染まるバラ「ザ・ジェネラス・ガーデナー」の花姿。

分類|シュラブ・開帳,2.0×2.0m。花径8㎝。2002年発表

 

人気のイングリッシュローズより、ザ・ジェネラス・ガーデナー。

ホワイトの花色は徐々に淡い桃色に染まっていく。

イングリッシュローズの代名詞的な香りの「ミルラ」にムスクの香りが微妙に混じる中香。

うどんこ病・黒星病ともに「普通よりも強い」程度の耐病性なので薬剤散布をした方が安全。もっとも、イングリッシュ・ローズの中では耐病性が強い部類。

日光を好み、日陰は苦手。

横に伸びるタイプなので基本的には地植え向き。構造物に誘引して咲かせるのがよいが、樹勢が強い上に枝が太く、かつするどいとげが多いので誘引作業には苦労する。

「返り咲き」品種で秋の花つきはイマイチ。

 

ザ・ジェネラス・ガーデナー|4基準データ

  • 花色 : ホワイト~薄くピンクが混じる
  • 芳香 : ★★★☆☆☆ [中香]
  • 耐病性 : ★★★★☆☆ [うどんこ病・黒星病ともに「普通よりも強い」]
  • 樹形 : シュラブ|横に伸びるタイプ

 

ザ・フェアリー(Bentall,A)

柔らかな桃色から薄いピンク色へと変わるバラ「ザ・フェアリー」の花姿。

分類|ポリアンサ・ドーム,2.0×2.0cm。花径:3cm。1932年

 

柔らかな桃色が時間とともに退色し、薄いピンク色へと変わっていく。

うどんこ病、黒星病ともに「強い」耐病性で薬剤散布をしなくてもやられることが少ない。”ほぼ”無農薬で育てることも可能。

香りはほぼない[弱い]。

花つきが良く、年間を通して咲き続ける。花つきも良い。低い位置で切りそろえ、低いフェンスなど横方向に誘引していくと良い。修景バラとして扱うのにも向いている。

[ポリアンサは、ノイバラとチャイナローズなどの交雑種の系統]

 

ザ・フェアリー|4基準データ

  • 花色 : 桃色~薄桃色
  • 芳香 : ★☆☆☆☆☆ [無香~微香]
  • 耐病性 : ★★★★☆☆ [うどんこ病&黒星病ともに「強い」]
  • 樹形 : ポリアンサ|[枝が伸びると]地を這うタイプ

 

シャンテ・ロゼ・ミサト(DELBARD)

ダークピンクにパープルが加わるバラ「シャンテ・ロゼ・ミサト」の花姿。

分類|シュラブ・1.5×1.0m。花径:7cm。2007年発表

 

歌手の渡辺美里さんに捧げられたバラとして有名。

ダークピンクの花色に徐々にパープルが加わる。甘すぎず、控えめな紫が混じる花色は若々しさを主張しすぎることなくしっとりと奥深い大人の色気をみせる。

うどんこ病、黒星病ともに「強い」耐病性で薬剤散布をしなくてもやられることが少ない。”ほぼ”無農薬で育てることも可能。

香りは「ミルラ」を主とする強香。ラベンダーのような香りも混じる。

あなたが

  • バラの初心者
  • 強いミルラ香を楽しみたい

ということならシャンテ・ロゼ・ミサトが最適。

花つきが良く、しかも花もちも良い。露地栽培で成株になれば年中観賞できるほど。

直立して縦方向に伸びていくタイプ。省スペースですむので、地植えでも鉢栽培でもいずれにも向く。樹勢も強い。

鉢で育てる場合には深めに切り戻すようにすると木立ち性品種のように管理できる。浅めの剪定にとどめ、オベリスクなどに絡ませても見栄えする。

路地に植える場合にはアーチやフェンスに誘引するなどして縦・斜め上方向に誘引すると見栄えする。

 

シャンテ・ロゼ・ミサト|4基準データ

  • 花色 : 淡いピンク~淡い紫
  • 芳香 : ★★★★★☆ [強香|ミルラ]
  • 耐病性 : ★★★★☆☆ [うどんこ病&黒星病ともに「強い」]
  • 樹形 : シュラブ|縦に伸びるタイプ

 

ナエマ(DELBARD)

画面いっぱいに咲きほこるパールピンクのバラ「ナエマ」の美しい花姿。[撮影者:花田昇崇]

分類|LCI(ラージ・フラワード・クライマー)。花径8㎝。1998年発表

 

女性の支持が厚い人気の品種

パールピンクのエレガントな花色。中心になるほど少し濃くなる。

うどんこ病、黒星病ともに「強い」耐病性で薬剤散布をしなくてもやられることが少ない。”ほぼ”無農薬で育てることも可能。

花つきが良く、花もちも良い。清々しいフルーツの爽やかさが強く香る(強香)のと相まって、満開のナエマの園には至福の時が流れる

花弁は薄い。そのため強くなく雨でシミがでやすい。これは予め知っておきたい。

分類のLCI[ラージ・フラワード・クライマー]は、地を這うランブラーと木立ち性[フロリバンダやハイブリッドティー]が交雑されて作出された品種の系統。

「クライマー」であることから構造物に誘引する用い方が中心と思いがちだが、ナエマの場合には株元に花が咲きづらいので少し工夫が必要。樹形は「上に伸びるタイプ」になり、横に行きづらい。

切り詰めて木立ち性のように扱うのがおススメ

木立ち性のように扱うのであれば鉢栽培にも向く。構造物に誘引する場合には地植えとなる。

 

ナエマ|4基準データ

  • 花色 : 淡桃色
  • 芳香 : ★★★★★☆ [強香|フルーツ]
  • 耐病性 : ★★★★☆☆ [うどんこ病&黒星病ともに「強い」]
  • 樹形 : ラージ・フラワード・クライマー

 

ノック・アウト(Radrazz,W)

画面いっぱいに咲きほこる濃いローズレッド~ピンクの色味のバラ「ノック・アウト」の花姿。[撮影者:花田昇崇]

分類|シュラブ・横張り,1.0×1.0m。花径7㎝。2000年発表

 

濃いローズレッド~ピンクの色合いが妖しく美しい。花色は開花後、徐々に薄れていく。

ノックアウトの耐病性は相当に強く薬剤散布は不要。耐病性の強いバラの代名詞的な品種となっている。なかでも黒星病の耐性は「最強」クラス。もちろん無農薬栽培が可能。花名のノックアウトは「病気を倒す」という意欲の現れ。

花つきが良く、花もちも良い。そして晩秋まで咲き続ける。庭に植えればバラを年中観賞することができるのが嬉しい。

香りがなくはないが、弱い。ノックアウト唯一の欠点は香りの点だけ。

とはいえ、総合的にみてノックアウトは外せない。庭に一株あると初心者が安心できる品種といえる。

 

ノックアウト|4基準データ

  • 花色 : 濃いローズレッド~ピンク
  • 香り : ★☆☆☆☆☆ [微香]
  • 耐病性 : ★★★★★★ [うどんこ病は「かなり強い」。黒星病は「最強」]
  • 樹形 : シュラブ|こんもりとまとまるタイプ

 

バニラ・ボニカ(MEILLAND)

クリームを帯びた花色が徐々に中心から淡い黄色が広がってくるバラ「バニラ・ボニカ」の花姿。

分類|シュラブ・開帳,1.5×1.4m。花径4cm。2006年発表

 

クリームを帯びた優しい花色は咲きすすむにつれやがて中心から広がる淡い黄色で全体が染まっていく。

うどんこ病・黒星病ともに「普通よりも強い」程度の耐病性なので薬剤散布をした方が安全。

残念ながら香りは薄い。[フルーツ系の微香]

この品種の魅力は満開時に株全体を覆うほどに花で埋め尽くされる圧巻の姿にある。次々と開花するので花が絶えない。

横にのびやすい樹形。肥料を多めに与えすぎると、更に伸長して地を這うように横に伸びていってしまう。フェンスなどの低めの構造物に横に誘引するのが良い。

 

バニラ・ボニカ|4基準データ

  • 花色 : クリーム~アイボリー
  • 芳香 : ★☆☆☆☆☆ [微香|フルーツ]
  • 耐病性 : ★★★★☆☆ [うどんこ病&黒星病ともに「普通よりも強い」]
  • 樹形 : シュラブ|多肥環境だと地を這うように伸びる

 

ポンポネッラ(KORDES)

薄い桃色~濃い桃色のバラ「ポンポネッラ」の花姿。

樹形|フロリバンダ・2.0×2.0m。花径4cm。2005年発表

 

薄い桃色~濃い桃色となる幅広い花色。

耐病性に長所があり、うどんこ病・黒星病ともに「かなり強い」ので薬剤散布は不要。

香りをほどんど感じない点が残念。

しかし花数は最大で十数輪の房となる抜群の花つき。花もちも良い。年間を通じて繰り返し開花するので地植えにして修景バラのようにするのが良い。

欧米での分類はフロリバンダ品種だが、国内ではシュラブとして扱うのがベター。剪定を浅めにとどめれば枝は2mほどまで伸びる。低めのフェンスに沿わせて横に誘引していくと見事。反対に短く切り詰めてブッシュのように扱っても良い。どちらもおススメの優秀なバラ。

 

ポンポネッラ|4基準データ

  • 花色 : ディープ・ピーチ[濃い桃色]
  • 芳香 : ★☆☆☆☆☆ [無香~微香]
  • 耐病性 : ★★★★★☆ [うどんこ病&黒星病ともに「かなり強い」]
  • 樹形 : 木立ち性|フロリバンダ

 

ムンステッド・ウッド(Austin,D)

黒赤紫のバラ「ムンステッド・ウッド」の8分咲きの花姿。

分類|シュラブ・開帳,1.2×1.0cm。花径10cm。2008年発表

 

おススメのイングリッシュ・ローズの一種。

黒・赤・紫が複雑に入り混じりあう複合色。

ダマスクの強香。一度嗅ぐと忘れられなくなりそうな香りの質と強さ。

うどんこ病耐性が「強い」のに加えて「黒星病」にも「かなり強い」のが長所。強いイングリッシュ・ローズで安心して露地栽培できる。

大きくかつ小さなとげが非常に多いので素手での作業は危険。皮手袋が必須。若い枝は柔らかくしなやか。

地植えと鉢栽培のいずれにも適するが、とげがきついので鉢の場合には注意する。写真は鉢栽培のものだが、スペースが確保できるのであれば地植えをおススメしておきたい。非常に強い樹勢なので株にパワーがつくと大型化するので地植えするには植える場所に注意したい。

 

ムンステッド・ウッド|4基準データ

  • 花色 : 黒赤紫が混じる複合色
  • 芳香 : ★★★★★☆ [強香|ダマスク]
  • 耐病性 : ★★★★☆☆ [うどんこ病は「強い」|黒星病は「かなり強い」]
  • 樹形 : シュラブ|[適宜剪定すると]こんもりとまとまるタイプ・[枝を伸ばすと]地を這うタイプ

雄々しく猛る深紅の大蛇のようなバラ[ムンステッド・ウッド]の栽培実感 で詳しく紹介しています。

 

レッチフィールド・エンジェル(Austin,D)

ホワイト~アイボリーを基調にクリームイエローほんのり混じるバラ「レッチフィールド・エンジェル」の花姿。

 

天使の名前がついたバラ。

花色はホワイト~アイボリーを基調に、ときおりクリームイエローが入る。下界を見下ろすかのように、うつむき気味に咲く。

ダマスク香にティーの香りが混じる心地よい芳香だが、強く香ることはなく中程度の強さ。

うどんこ病、黒星病ともに「強い」耐病性で薬剤散布をしなくてもやられることが少ない。”ほぼ”無農薬で育てることも可能。

花もちが良いので長く咲かせておくことができる。うつむきかげんに咲くものの、クライミングのように扱うのには向かない。木立ち性[ブッシュ]に近い。

こんもりとコンパクトにまとまるため鉢栽培向き。とげが少ないのが初心者には嬉しい。

成株は繰り返してよく咲く。四季咲き性が強いのも長所。

 

レッチフィールド・エンジェル|4基準データ

  • 花色 : アイボリー~クリームイエロー
  • 芳香 : ★★★☆☆☆ [中香|ダマスク&ティー]
  • 耐病性 : ★★★★☆☆ [うどんこ病・黒星病ともに「強い」]
  • 樹形 : シュラブ|こんもりとまとまるタイプ

 

レディ・エマ・ハミルトン(Austin,D)

画面いっぱいに咲いたイングリッシュローズ「レディ・エマ・ハミルトン」の花姿。[撮影:花田上昇崇拝]

分類|シュラブ(S)。花径8㎝。2005年発表

 

ムンステッド・ウッドと並ぶおススメのイングリッシュ・ローズ。

クリアーで爽やかなオレンジ色の花色が魅力。

果実を思わせる花姿そのままの強いフルーツ香が何より素晴らしい

うどんこ病耐性が「強い」のに加えて「黒星病」にも「かなり強い」のが長所。強いイングリッシュ・ローズで安心して露地栽培できる。

伸びすぎずにコンパクトにまとまる樹形のため、鉢でも地植えでもどちらでも良い。ただし安心して雨にあてられることもあり、より大きく成長させる目的で地植えしておくのがおススメ。朝の外出時に漂う庭のフルーツ香は一日の気持ちを整えるのに最適。

花は一枝から約3輪ほどの房になってたわわに咲く。薄い花弁ということもあり、花もちは普通(3~4日)程度。ただしよく咲く。

剪定は、枝ぶりが細く、かつ株の内側に枝が密集していきやすいので、内側の枝の剪定に意識を向けるのが良い。

寒さに強いが、他方で暑さには弱い。昨今の日本の気温では5月の暑さでもダメージを受けやすい。鉢にせよ地植えにせよ、強すぎる日差しにはちょっとした遮光措置を講じるなどの対策を施すのがよい。

 

レディ・エマ・ハミルトン|4基準データ

  • 花色 : オレンジ色
  • 芳香 : ★★★★★☆[強香]
  • 耐病性 : ★★★★★☆[うどんこ病は「強い」|黒星病は「かなり強い」]
  • 樹形 : シュラブ|こんもりとまとまるタイプ

フルーツの香りと耐病性のバラ[レディエマハミルトン]の栽培実感 で詳しく説明しています。

 

補足。10品種の選抜基準について

最後にこれらをどのようにして選んだのかについて説明しておきます。

4基準とは、「花色」・「香りの強弱」・「耐病性の強弱」・「樹形」の4点を総合的に見て決めようということでした。

本稿で紹介してきた10品種は、

  • 4基準のうち「樹形」がシュラブ(半つる性)のもの
  • 花色―なるべく異なる花色
  • 香り―なるべく香りの強い品種
  • 耐病性―なるべく耐病性の強い品種

という観点から選びました。

このうち花色については青系や黄色系の品種の検討もしましたが、例えば黄色系の銘花「グラハム・トーマス」なども「初心者に最適」とまでは言い切ることができないと考え見送ることにしました。

花色は上記の写真をご覧いただくとして、「香り」と「耐病性」の2点の総合点が高い私の考えるシュラブ系品種が本稿で掲載したバラです

なお、余談ながら裏話をしておきますと、本稿で紹介した品種以外にも強いシュラブは数多く存在します。強い品種の話をあちこちから伝え聞きますが、実際に触れたこともない花を伝聞情報だけで紹介するのはいかがなものかと考え差し控えました。

本稿で紹介していない強い品種についてはあなたご自身でも探してみると楽しいと思います。探していくための手がかりは当サイトで紹介しています。ぜひ挑戦なさってみてください。

 

他の樹形についての紹介

木立ち性品種について紹介しています。こちらもどうぞ。

初心者必見!4基準から導くおススメの『木立ち性』バラ10選

今後クライミングローズについての紹介も予定しています。

更新予定:初心者必見!4基準から導くおススメの『クライミング』ローズ10選(※更新時期未定)

 

本稿のまとめ

さて、いかがだったでしょうか。

本稿ではシュラブ系品種を中心に、その他シュラブに準ずる特徴のある品種から手間暇のかからない初心者おススメの品種を10種紹介しました。

あなたの心を動かせた品種と出会うことができましたでしょうか。これら10種であれば病気に心を煩わされることなく純粋にバラの楽しみに触れることができるのではないかと思っています。「バラの品種は多すぎてどの品種を選べば良いかわからない!」といった方はこれら紹介したなかから最初の1株を選んでみてください。

本稿が皆様のより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活を始めませんか?

 

写真・記事の無断掲載・転載を禁止します。

バラの栽培/Sentence/All photos:花田昇崇

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