フルーツのようにみずみずしい果汁感を楽しめるバラがあります。つるバラ「パレード」です。
パレードは黒星病への抵抗力が認められるつるバラで自宅の庭に植えておけばさほど手がかからないおススメのつるバラの一種です。花つき、花もちともに良く、株が充実してからの満開時はまさしく花のパレードのよう。
本稿は、ほとばしる果汁感が魅力の黒星病に負けないつるバラ「パレード」の栽培実感です。
目次
品種の情報
4基準データ
- 花色 : 濃いローズ
- 芳香 : ★☆☆☆☆☆ (微香:爽やかなリンゴのような香り)
- 耐病性 : ★★★☆☆☆ (うどんこ病「普通よりも弱い」|黒星病「普通よりも強い」)
- 樹形 : LCI(ラージ・フラワード・クライマー)
※4基準とはバラ入門者の方がはじめてのバラを選ぶうえでの指標となる4つの判断基準です。さまざまにある選択要素のなかから最も重要な4つの基準を紹介しています。
詳しくはこちらをご覧ください。
⇒ バラ初心者の品種の選び方。あなたに最適なバラを探す4基準
補足基準データ
- 花つき : とても良い
- 花もち : とても良い
- 花形 : カップ咲き
- とげ : 少数の鋭くふといとげ
- 耐寒性/耐暑性 : 普通(冬:普通/夏:普通よりも弱い)
- 花径 : 9cm(中輪)
- 樹勢 : 強い
- 開花サイクル : 返り咲きから四季咲きへ
- 作出 : 1953年.アメリカ
- 原名 : Parade
※「カップ咲き」をはじめ、バラの花形にはさまざまなものがあります。
⇒ 花びらと花のかたちで見る「花の表記」の読み歩き
※補足データは4基準に準じる2次的な基準です。4基準ほど育てやすさに直結するものではありませんが個々の花の個性を形づくる情報です。
外観上の特徴
地植えして2~3年よく育てたパレードは株全体から枝先まで一面を花で覆うほど見事な花を咲かせます。
その名にたがわぬ花のパレードを味わうことができるつるバラです。
開花サイクル
殊に春の開花が大変見事です。
株が充実する前は秋の開花数はイマイチです。もっとも、四季咲き性が強くなるにつれて秋にも見事な花を咲かせるようになります。
[※後述の「花つき」を参照]
開花の様子
開花の様子はこちら。
花色・花のつき方
濃いローズ色の色味は、光を受けて縁が透けて見えると明るめのピンク色にも見えます。
房咲きで枝の先端に3~5輪程度の花を咲かせます。1輪の花の大きさは中輪(の品種)ながら、枝先の5つ程度の花がまとまって全体として一つのブーケのように見えるのでとても豪華に見えます。
枝先の一か所の花(5輪)が開くだけでとても強い存在感を放つ品種で、8分咲きのパレードはみずみずしく果汁感あふれる色味のバラだと思います。
どうですか。美味しそうに見えませんか?
そして、咲き進んで広がった写真がこちら。
無数の花をつけるわりには花首が細いのでパレードはうつむき気味に咲きます。
花びら
厚みが薄く光に透ける花びらなのでご覧の写真のように光の具合で見え方が変わります。
花つき
全体として見た花つきはとても良い部類のつるバラです。
ただし、株の充実具合によって秋の開花数に大きな違いが見られます。
場合を分けて説明すると以下のように。
株が充実する前の場合
- 春の花つき:ほどほどによく咲く。
- 秋の花つき:いまだ四季咲き性が強くなっておらず、ほとんど開花なし。または、ぽつぽつと咲く程度で秋の花数は少なめ(返り咲き程度)
株が充実した後の場合
- 春の花つき:花のパレードのように大量に咲く。
- 秋の花つき:四季咲き性が強くなり、秋の花数が増してほどほどによく咲く。(四季咲き)
このように株が充実しているかどうかで開花数に大きな違いがみられるので秋の花数を増やすには株をしっかりと充実させることが肝要です。
花もち
とても良い部類に入ります。
香り
果汁感あふれるビジュアルのまま強い香りを期待したかったパレードですが、残念ながら香りは強くありません。
せいぜい微香といったところ。爽やかなリンゴの香りと言われたりもするようですが、強くない香りなのでわかりづらいかもしれません。
育てやすさについての私の実感
耐病性
バラはさまざまな病気にかかり、品種を問わず最も頻繁にかかるのが「うどんこ病」と「黒星病」の2つの病気で、これらは「バラの2大病」と呼ばれています。
この2大病の耐病性は「普通」と評価します。
詳細を見ていきます。
うどんこ病への耐性
うどんこ病への抵抗力が「普通よりも弱い」品種です。
[※表記の参考:かなり弱い < 弱い < 普通よりも弱い < 普通]
早め早めに予防薬剤を散布することが必要です。薬剤の散布を怠ると花季のどこかのタイミングでうどんこ病が生じる可能性が高いでしょう。
うどんこ病の症状|風が運ぶ脅威。季節はずれの粉雪がもたらす病害 ではこの病気について解説しています。
黒星病への耐性
黒星病への抵抗力が「普通よりも強い」品種です。
[※表記の参考:普通 < 普通よりも強い < 強い < かなり強い]
黒星病に負けないつるバラはそれだけで長所です。
なお、「普通よりも強い」程度の場合には花季のどこかのタイミングで黒星病が発症する場合が多いでしょう。生育初期には黒星病に感染して葉を落として丸裸に近い状態になるケースもありえます。
ただし、この品種の場合には発症以後の花を咲かせないようにすれば足ります。このまま枯死するのではなく、何が何でも薬剤コーティングが必要というわけではありません。
そして、株が充実する2~3年以降になれば黒星病になってもそのまま花を咲かせて差し支えないので管理がラクになります。
耐病性まとめ
ご覧のように2大病のうち、うどんこ病に「普通よりも弱い」面があるものの、黒星病には「普通よりも強い」抵抗力が認められるので、中間をとって「普通」程度の耐病性と評価します。
地植えして、そして風通しの良い環境を確保できていればひとまずうどんこ病に神経質にならなくても大丈夫です。
樹勢
樹勢は「強い」です。
とげの具合
少数の鋭くふといとげがあります。
革手袋の装着が不可欠といったほどでもありませんが、もちろんあると安全です。
栽培のコツ
植える場所に注意する
地植えで大きく育つので株周り半径80㎝~1m程度を開けて植えること。
生長したシュートを逃がすために、植える前に予め誘引するスペースを考えるようにしましょう。生長した以降のことをイメージし、株の真上やその左右に誘引することができるような空間に余裕のある場所に地植えすることが大切です。
枝が密集しすぎてしまうとそこにうどんこ病が発症するので枝と枝との間が密集しすぎないように注意しましょう。
剪定はほどほどでOK
樹勢が強いので冬剪定を深めに伐っても春以降新たなシュートを伸ばします。
ただし、前年度の枝にも花を咲かせるので冬にあまり切りすぎないほうがよいです。冬剪定はシュートの先端を落とす程度でよいと思います。
壁面・フェンス・アーチに誘引して高い位置で咲かせよう
主枝は剪定ばさみでは切れない大きさに育つものの、しなる枝で基本的には誘引しやすい品種です。
下から見上げるように観賞するのに適するので目線よりも上になる位置で咲かせたい。
オベリスクがダメとは言わないが、旺盛な樹勢で株の内部がとても混みあうので、壁面、フェンス、アーチに這わせるのに向く品種です。
適する栽培方法
パレードはつるバラとして育てるので鉢には向きません。かつて13号鉢で3年ほどトライアルで育てたことがありましたが、全く向きませんでした。(余談ながら13号鉢からの冬の植え替え作業はとても大変でしたね。)
地植え一択です。
[※本稿の写真もすべて地植え。]
結論:育てやすいか?のまとめ
- 生長後のスペースを充分に確保できる場所があること
- 株が小さなうちは株の成熟を第一に優先すること。[→初期はあまり花を咲かせない。初期は病気の感染が認められたら薬剤散布が安全。]
- 枝葉それぞれの風通しの良さに意識する。[=うどんこ病に気を付ける]
この3点を意識しておけばあとはやがて花のパレードを楽しめるようになるでしょう。
耐病性は「普通」程度の強さながら上記を守れば育てやすい品種と言えるでしょう。(初心者向き)
本稿のまとめ
つるバラ「パレード」の栽培実感を紹介しました。もしも香りが強めだったらなお良かったですが、これでも充分。育てやすくて大変見事なつるバラです。
本稿がより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活をはじめませんか?
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パレードの栽培/Sentence/All photos:花田昇崇