本稿では バラ初心者の品種の選び方。あなたに最適なバラを探す4基準 で案内した基準を前提に、これを踏まえて新たにバラ栽培を始められようとする初心者の方でも簡単に育てられる品種を紹介します。これから紹介するバラは“総合的に強い”ので栽培上の知識やテクニックがなくても立派で綺麗な花を咲かせやすい品種です。
今回扱う品種は3つに分類される樹形のうち、「ブッシュ樹形(=木立ち性)」の品種から10品種を選びました。この10品種は4基準をもとに管理人が選んだおススメのバラです。現時点におけるこれまでの私の総合的な経験に基づく独断と偏見での選別となりますが、バラ栽培にはじめて挑む木立ち性のバラ最初の1株は紹介するなかから選べば間違いないはずです。
強いブッシュをお探しのあなたは是非本稿をご覧ください。
目次
初心者はバラをどう選ぶ?
バラ初心者の品種の選び方。あなたに最適なバラを探す4基準 は、これまでバラを育てたことがない人を対象に、数万品種にものぼるバラの中からどういった考え方で最初の1株を探していけば良いのかという“いわば視点”についての説明をしています。まだの方はまずこちらを先に確認ください。
こちらの記事をご覧になれば失敗しないバラ選びができるようになることをお約束します。
木立ち性のバラ[ブッシュローズ]とは?
ハイブリッドティーとフロリバンダ、ミニアチュアの3つ、そして一部のオールドローズが木立ち性のバラ(=ブッシュローズ)に分類されます。[本稿では私の考えでグランディフローラも木立ち性のバラに含めて扱います。]
4つの略称は以下です。
- ハイブリッドティー = HT
- フロリバンダ = F
- ミニアチュア = Min
- グランディフローラ = Gr
こちらの記事ではハイブリットティーとフロリバンダの特徴や魅力を紹介しています。
⇒ ハイブリッド・ティーってなに?|新時代を開いた現代バラ誕生の物語
⇒ フロリバンダってなに?|枝先がブーケのように咲くバラの楽しみ方
先にご覧いただくことでいっそう本稿をお楽しみいただけます。
初心者は必ずチェック!お勧めの木立ち性のバラ10選
花色麗しく香り高く、しかも耐病性にも優れた木立ち性のバラ10品種を紹介していきます。
[各10品種の品種データの「芳香」「耐病性」に付した星マークは6段階評価としています。6段階中★が多いほど「強さ」をあらわします。☆3=普通]
[※表記の参考 : 普通 < 普通よりも強い < 強い < かなり強い < 最強 ]
エリナ(Dckson,P)
2006年に世界バラ連合の「栄誉の殿堂入り」を果たした世界的にも名の知れた銘花。
クリームイエローの花色が美しい。
エリナは黒星病とうどんこ病にそれぞれ「かなり強い」「普通よりも強い」と、両耐病性に強い抵抗力が認められる品種。株が幼いうちには定期的に薬剤散布した方が安心だが、しなくても病気でやられることは少ない。成株になった後にはほぼ無農薬で育てることが可能。
地植えにしてしまえば、あとはもう花がら摘みや剪定を適度に行うくらいですむのでおススメ。
暑さと寒さの相反する両方の耐性を兼ねており、比較的寒い地域や暑い地域でも健やかに成長する(=耐暑性・耐寒性がある)。
「微香~中香」と少し香りが弱いのが残念ながら、香らなくはない。
既に定評もあり、総合的に見て初心者におススメできる品種。
エリナ|4基準データ
- 花色 : クリームイエロー
- 芳香 : ★★☆☆☆☆ [微香~中香]
- 耐病性 : ★★★★☆☆ [うどんこ病「普通よりも強い」|黒星病「かなり強い」]
- 樹形 : 木立ち性|ハイブリッドティー
※ 主役も脇役もこなす知性のバラ[エリナ]の栽培実感 で詳しく紹介しています。
王妃アントワネット(MEILLAND)
名作少女漫画「ベルサイユのばら」の登場人物の名を冠するシリーズより。
やや透明感のあるローズピンクの花色は波状弁の花形と相まって鮮やかで洗練された美しさを感じさせる。
王妃アントワネットはうどんこ病と黒星病の両耐病性が「強い」ので薬剤散布はほとんど無縁。
[※2019年5月修正]
うどんこ病は「かなり強い」。黒星病は「普通」程度だが薬剤散布はほとんど無縁。
また、耐暑性・耐寒性もある。
さらに、強いティーローズ系の芳香を放つ強香さを兼ね備え、おまけに花つきや花もちも良いなど、逆に欠点を探すのに苦労するほどの品種。
樹勢も強いためよく育ち、半直立性なので場所も省スペースですむ。
「ピンク系×耐病性×香り」の3点の総合点で考えた場合この王妃アントワネットが最強クラスと言って良いかも知れない。
また、花色に特段のこだわりがなければ、とりあえず王妃アントワネットから始めてみるのもおススメ。
王妃アントワネット|4基準データ
- 花色 : ローズピンク
- 芳香 : ★★★★★☆ [強香]
- 耐病性 : ★★★★☆☆ [うどんこ病:「強い」|黒星病「普通よりも強い」]
- 樹形 : 木立ち性|ハイブリッドティー
※ 絢爛豪華なベルサイユのばら[王妃アントワネット]の栽培実感 で詳しく紹介しています。
ガーデン・オブ・ローゼズ(KORDES)
花色はピンク・ベージュ・アプリコットなどが季節により様々に発現する。
ガーデンオブローゼズは、うどんこ病の耐性については「普通よりも強い」程度であるものの、黒星病については「かなり強い」。
爽やかなティー系の芳香があるが、強くないのが残念。[微香~中香程度]
花もちは良い。
育つまで時間がかかる品種で初期生長が遅い。数年は1輪咲きになり花枝も短く、やや貧相に感じるきらいもある。ただし年数を重ねることで株が育ち、株が育つことで花枝が伸び、花も3~5輪の房となって咲くようになる。
コンパクトにまとまる樹形のため鉢でも地植えでもどちらでも良いが、できれば地植えにして修景バラのように扱うのがおススメ。若い株のうちは多くの花を求めすぎず、数年単位の長い目で育てるのがガーデンオブローゼズという品種と向き合うコツ。
ガーデン・オブ・ローゼズ|4基準データ
- 花色 : ピンク~ベージュ
- 芳香 : ★☆☆☆☆☆ [微香]
- 耐病性 : ★★★★★☆ [うどんこ病は「強い」|黒星病は「かなり強い」]
- 樹形 : 木立ち性|フロリバンダ
スーリール・ドゥ・モナリザ(MEILLAND)
モナリザの微笑みを意味する花名。
ひときわ眩しく輝くブリリアントレッドの花色がギュッと集まる房咲き品種。
うどんこ病に「強く」、黒星病には「かなり強い」。薬剤散布に煩わされることは少ない。
芳香が極めて薄いのが残念。ただし全く香らないというほどではない。
花つきよく、かつ花もちの良さは群を抜くほど。わりと大型に育つ点と雨によるシミができにくい点から露地で地植えして育てるのに向く。鉢はあまりおススメしない。
枝はしなやかで、それでいてよく伸びるのでシュラブに近い特徴がある。寒さと暑さに強い(耐寒性・耐暑性)。
無農薬栽培ができる赤バラとしておススメの一種。
スーリール・ドゥ・モナリザ|4基準データ
- 花色 : ブリリアントレッド[赤系統]
- 芳香 : ★☆☆☆☆☆ [無香~微香]
- 耐病性 : ★★★★★☆ [うどんこ病は「強い」。黒星病は「かなり強い」]
- 樹形 : 木立ち性|フロリバンダ・日本の環境下ではややシュラブに近い
ノヴァーリス(KORDES)
従来は、「ブルー・ムーン」や「ブルー・ナイル」などブルー系統のバラは耐病性の弱い品種が多いというのが一般的な認識。
そのようななかで、青味がかった色味をもつバラの中で「最強」と謳われるのがこのノヴァーリス。
うどんこ病の耐性については「やや強い」程度であるものの、黒星病の耐病性は「かなり強い」。屋外で地植えしているとノヴァーリスの優秀ぶりに目を見張る。
強い「ティー」の芳香があり香りの点でも申し分がなく、また、わりと寒い地域でも順調に生育する(=耐寒性あり)との話も伝え聞く。
青味がかったバラを育てるなら、まずはノヴァーリスを第一に検討したい。
ノヴァーリス|4基準データ
- 花色 : 藤色
- 芳香 : ★★★★☆☆ [強香]
- 耐病性 : ★★★★☆☆ [うどんこ病は「普通よりも強い」|黒星病は「かなり強い」]
- 樹形 : 木立ち性|フロリバンダ
ノスタルジー(TANTAU)
クリームホワイトの中心を外側の赤い花弁が包み込むダブルカラー。強い日差しで赤味が強くなる。先端が房になって咲く。
うどんこ病と黒星病にともに「とても強い」耐病性。定期的に薬剤散布をするとなお安心だが、しなくても病気でやられることは少ない。無農薬栽培で育てることが可能。
花つきが良いので次々と咲きやすい。花もちも良い。ただし、さほど花枝が長くはならないので切り花には適さない。
半横張りに育つが比較的コンパクトにまとまる。鉢植えでも地植えでもどちらでも良いが、私は日向で地植えにするのをおススメしている。
注意点は小さなとげが多いこと。手袋なしで触れると危険なので皮手袋が必須。
ノスタルジー|4基準データ
- 花色 : 中心のクリームホワイトを包む外側の赤色[ダブルカラー]
- 芳香 : ★★☆☆☆☆ [微香~中香]
- 耐病性 : ★★★★★☆ [うどんこ病&黒星病ともに「かなり強い」]
- 樹形 : 木立ち性|ハイブリッドティー
※ 黒星病に強く鉢植えも適するバラ。郷愁の[ノスタルジー]の栽培実感 で詳しく紹介しています。
ビブ・ラ・マリエ!(MEILLAND)
純白の花色がまぶしい美麗な品種。
ビブラマリエ!は、「最強」の耐病性を誇る白バラの一種で、黒星病とうどんこ病の双方に極めて強い抵抗力を備えています。白系統は病気に弱い品種が多いなかこの強さには目を見張る。薬剤散布とはほとんど無縁。香りの強さも魅力。
地植えにしてしまえば、あとはもう花がら摘みや剪定を適度に行うくらいでほとんど手がかからない。樹勢もとても強い。
ステム(茎)が長く、切り花としても楽しめる。しかも花もちも良い。庭で収穫した純白の切り花を食卓などに飾ることができるのは何より楽しい。
比較的暑い地域でも健やかに成長する(=耐暑性あり)。
ビブラマリエ!も欠点を探すのに苦労するほど優れた品種で、耐病性の強い木立ち性白バラを探すならこれを選んでおけば間違いない。白バラが好きなら必ず1株は手元に置いておきたい。
ビブ・ラ・マリエ!|品種データ
- 花色 : 純白
- 芳香 : ★★★★★☆ [ティー&フルーツの強香]
- 耐病性 : ★★★★★★ [うどんこ病&黒星病ともに「最強」]
- 樹形 : 木立ち性|ハイブリッドティー
※ ローズフェスタ4基準で最高峰の白バラ[ビブラマリエ!]の栽培実感 で詳しく紹介しています。
ボレロ(MEILLAND)
スノーホワイトの花色が柔らかにふんわりと重なる花弁を照らし繊細な表情を形づくる優しい花形。春の花には写真のように中心にうっすらとピンクがのる。ロゼット咲き。
うどんこ病に「強く」、黒星病には「かなり強い」。
フルーティな香りにわずかにスパイシーがひそむイタズラな香り。この強香に思わずため息が漏れる。
花つきが非常に良く、しかも花もちも良い。暑さ寒さの両方に強い(耐寒性・耐暑性)など、ボレロもまた短所を探すのに苦労するほど。
ビブラマリエ!につぐおススメの木立ち性タイプの白バラの第2位。
ビブラマリエ!との主な違いは、耐病性が若干劣る点。そして香りがより強く、繊細で柔らかな花弁といったあたり。
ボレロ|4基準データ
- 花色 : スノーホワイト
- 芳香 : ★★★★★☆ [強香]
- 耐病性 : ★★★★☆☆ [うどんこ病「強い」|黒星病「かなり強い」]
- 樹形 : 木立ち性|フロリバンダ
ファースト・インプレッション(Sproul,J)
本国アメリカでの分類上はフロリバンダだが、我が国ではミニバラ(ミニアチュア)として流通している。
咲き進むにつれて柔らかい黄色から薄いクリーム色へと変化するグラデーションカラー。
ファーストインプレッションの最大の売りは、うどんこ病への「強さ」もさることながら、雨に弱い品種が多い黄色系統のなかで黒星病の耐性が黄色系最強と思われるほどに「かなり強い」点。
花つきがとても良く、同時に花もちも良い。ミルラの香りもある[中香]。
ミニバラとしても扱われるため、樹形はもちろんコンパクト。鉢でも地植えでも構わないが、おススメは背丈の低さを生かして通路の足元を飾るように地植えすること。
耐病性の強い木立ち性の黄色バラを探すならこれを選んでおけば間違いない。
ファースト・インプレッション|4基準データ
- 花色 : 黄色~薄いクリーム色
- 芳香 : ★★★☆☆☆ [中香]
- 耐病性 : ★★★★☆☆ [うどんこ病は「強い」|黒星病は「かなり強い」]
- 樹形 : 木立ち性|フロリバンダ
ラ・パリジェンヌ(DELBARD)
ハイブリッドティーとフロリバンダの交雑種[=グランディフローラ]は両系統の特徴を併せ持ち、非常に強健な系統として知られる。
ラ・パリジェンヌは薄いピンク色を基調とした花弁に、黄色やオレンジ色がそれぞれの色調を保ったままで混在する、いわば“独立共存”の花色が気高い。花弁は波打ち、品がある。
うどんこ病と黒星病の耐性がともに「強い」。定期的に薬剤散布した方が安心だが、しなくても病気でやられることは少ないので安心してよい。
香りがフルーツ系の強香なのも嬉しい。
株は直立性でまとまりの良い樹形のため、鉢でも地植えでもどちらでも構わない。ただし、初期は花数がやや少ないきらいがあり、地植えをおススメしておきたい。株がよく育てば四季咲き性が強いため再三咲くようになる。とげは少ない。
なお、他のグランディフローラとしては、「クイーン・エリザベス」(1979年.栄誉の殿堂入り)がこの系統に含まれる。このクイーン・エリザベスは耐病性が「普通」程度であり本来は薬剤散布が必要だが、樹勢が強く枯れづらいのが特徴だと私見しています。
ラ・パリジェンヌ|4基準データ
- 花色 : 黄色・ピンクの花弁にオレンジ色のグラデーション
- 芳香 : ★★★★☆☆ [強香]
- 耐病性 : ★★★★☆☆ [うどんこ病&黒星病ともに「強い」]
- 樹形 : 木立ち性|グランディフローラ
参考: 強健で枯れにくいバラ。栄誉の殿堂[クィーン・エリザベス]の栽培実感
補足|10品種はこうして選ばれた。選抜基準について
以上の10品種です。
これまで10種のバラをご覧いただいてきましたが、最後にこれらをどのようにして選んだのかについて説明しておきます。
そもそも4基準とは、ざっくり言えば、「花色」・「香りの強弱」・「耐病性の強弱」・「樹形」の4点を総合的に見て決めようということでした。[正確には、4基準の記事参照]
本稿で紹介してきた10品種は、「樹形」が木立ち性[ブッシュ]のものを扱いました。他の3基準は以下のように選んでいます。
- 花色―赤~白~青~黄色などのオーソドックスな基本色が中心
- 香り―なるべく香りの強い品種
- 耐病性―なるべく耐病性の強い品種
このうち花色については全くの個人の好み次第ですから、なるべく幅広く異なる色合いから選ぶようにしました。
主観的に選ばれる花色と異なって、やや客観的に他との比較で決めることができるのが「香り」と「耐病性」の強弱の2点です。約500種類の木立ち性のなかから、「香り」×「耐病性」の2点の総合点が高いと管理人の考える品種を本稿で紹介しました。
[※香りの種類もバラには7つの種類があります。しかし種類については本稿では考慮せず、あくまでも「強弱」の観点から選びました。]
※他の2つの樹形からも各10品種のおススメのバラを紹介しています。
- 初心者必見!4基準から導くおススメの『シュラブ』ローズ10選
- 初心者必見!4基準から導くおススメの『つるバラ』10選[※更新時期未定]
本稿のまとめ
さて、いかがだったでしょうか。
本稿では木立ち性のバラのなかから初心者おススメの10種を紹介しました。これら10種であれば病気に心を煩わされることなく純粋にバラの楽しみに触れることができると思います。「バラの品種は多すぎてどの品種を選べば良いかわからない!」といった方は本稿で紹介するバラのなかから最初の1株を選んでみてください。
本稿が皆様のより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活をはじめませんか?
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バラの栽培/Sentence/All photos:花田昇崇