バラの品種を眺めていると、今日、最も多く目にする樹形のタイプはもしかすると「シュラブ」かもしれません。
バラの樹形の分類でしばしば目にする「ブッシュ?」「シュラブ?」「クライミング?」「フロリバンダ?」・・・何がなんだかよくわからない。
そんなお困りのあなたにお届けするのが本稿です。「シュラブってどんなのだろう?」と疑問をお持ちのあなたのためのシュラブ樹形の説明です。やや学術的な考察を交えつつ説明します。
目次
シュラブ樹形のバラの特徴・傾向
特徴について
シュラブ樹形のバラに見られる主な特徴は下のようになろうかと思います。
- [豊富な花色]
- [豊富な花形]
- [他の樹形と比べて]芳香品種が多い
- 枝が細くて弓のようにしなやかで垂れる。自立しづらい品種が多い[→誘引する]
- 木立ち性[ブッシュ]のように育てることができる品種もある
- つる性[クライミング・つるバラ]のように育てることができる品種もある
などの多彩な花の魅力とさまざまなタイプの樹形が集まっています。
これらのうち①・②はすべての樹形に共通するものでシュラブ特有のものではありません。
芳香品種[③]はシュラブ品種のなかで特に多いという傾向があるかもしれません。
さて、問題は、④・⑤・⑥がシュラブをわかりづらくしている原因かと考えています。木立ち性のバラの特徴[⑤]とつる性のバラの特徴[⑥]もシュラブのなかに含まれているためです。
シュラブ[半つる性]樹形とは?
一般的な説明
そもそもバラは大きく3つの樹形にわけられています。
- 幹や枝が一定程度縦に伸びていき自ら自立できるタイプ[木立ち性・ブッシュ]
- 幹や枝が旺盛に伸びていき自ら自立できない、又は自立に適さないタイプ[つるバラ・クライミング]
- これらの中間に位置するタイプ[半つる性・シュラブ]
これらの中間に位置するとは、木立ち性とつる性の特徴の中間という意味です。
一般的にはこのように説明されることが多いようです。
よくわからない。中間って…。一般的な説明は抽象的すぎる?
ご覧のような一般的な説明がまさしくこの通りだと思いますが、ただしこの一般的な説明だけで内容を理解するのはなかなか困難です。
少し抽象的すぎるきらいがあろうかと思います。
そこで、もっとより具体的にシュラブ樹形の正体について見ていきたいと思います。
シュラブ樹形の正体
バラを誕生させる側の視点|消去法の分類
バラは毎年新しい品種が育種家たちによって生み出されています。
新品種を新たに生み出して、「このバラは木立ち性か?」「つるバラか?」などと樹形を選別していく側の視点から見た場合、シュラブに属するグループは消去法的な分類によって位置づけられるものと考えられます。
つまり、
「典型的なブッシュ[木立ち性]」や「典型的なクライミング[つる]」のそれぞれの枠内におさまらず、これらと異なる特徴を有する品種はすべてシュラブ
に分類されているものと考えられます。
このように分類されていることがシュラブ品種の具体的な特徴がわかりづらい原因になっているのではないかと思われます。講学的な見地で決められているからでしょうか。
シュラブ樹形の特徴を一言で説明しづらい理由
典型的なブッシュと典型的なクライミングの「中間的な品種」が属するグループがシュラブ樹形であるわけですが、このことはシュラブの特徴に“それなりの幅が生じる”ということを意味します。
この幅こそが品種の特徴をひとくくりで語ることを難しくしています。
また、結果として、シュラブ樹形のなかにはブッシュに近いものやクライミングに近いもの、あるいは双方に似ているものや似ていないものなど様々な特徴のバラが存在することになります。
このような事情がシュラブ樹形の特徴を一言で説明することを難しくさせている理由ではないかと考えられます。
このようにシュラブの特徴をひと言で語るのはやや難しいものの、しかしそのような講学的な区別は、私たち育てる側からすればあまり考慮する実益がないものだと感じています。
知りたい情報は「現に目の前にあるバラがどのような特徴のバラか」ということであって、「シュラブだから欲しい」「シュラブだから育てたい」といったニーズではないと考えられるためです。
[これに対して、つるバラは目的がはっきりしています。アーチ・フェンス・壁面などに誘引して広くバラを咲かせたいとあらかじめ用途を定めてクライミング樹形の品種を探しはじめることが通常です。]
私たち育てる側からの視点|柔軟さを魅力として考えたいグループ
シュラブ樹形の魅力を育てる私たちの視点から見た場合には、幅の広さは大きなメリットではないでしょうか。
切り詰めることでブッシュ樹形とおなじように扱うことができたり、典型的なクライミングほどには伸びないにしてもある程度これと似たように用いることができるなど、用途によってある程度柔軟に楽しむことができるわけですから。
私たちの環境や育て方のニーズによってある程度自由にコントロールすることのできる柔軟さがシュラブグループの大きな魅力だと考えられます。
あなたの目の前にあるそのシュラブの品種の特徴を踏まえて選びましょう。
シュラブ樹形を詳しく分類すると?
多様で幅の広いシュラブローズだからこそ、あなたが実際に育てようとするときには意識的に注意すべき点があります。
シュラブ樹形―4つの傾向―
幅の広いシュラブ樹形ですが、これを細かく分類すると以下の4タイプに集約されます。
- 翼を広げるように横幅をとるタイプ
- 縦に伸びるタイプ
- 地を這うタイプ
- こんもりとまとまるタイプ
上記4つです。
シュラブはおおむねこの4つのいずれかのタイプになると思われます。
4つの傾向の実態
上記の4つはそれぞれ、
- 翼を広げるように横幅をとるタイプ→つる性に近い
- 縦に伸びるタイプ→木立ち性・つる性の両方の特徴をあわせもつ。切り詰めれば木立ち性のようにも扱える
- 地を這うタイプ→つる性(特に、ランブラーローズ)に近い
- こんもりとまとまるタイプ→木立ち性に近い
管理人の栽培の実感はこの赤字部分のような傾向になると考えています。
これらの分類は栽培スペースのに影響する
このような分類は育てるスペースの問題[鉢植えでも良いか、それとも地植えが良いのか]にかかわります。
つる性(クライミング)に近いものは大き目の鉢か、できれば地植えで育てるのに向いています。
木立ち性(ブッシュ)に近いものは鉢植え地植えのいずれでも構いません。
品種につけられているラベルの分類ではただ一言「シュラブ」と一律表記が通常で、どのタイプかを明確に説明していない[書いていない]ことが通常です。
[※追記|上記は本稿執筆時の2016年時点のこと。その後3年を経て、当サイトの影響によるものか2019年には本稿のような分類がなされるようになってきており最近はユーザビリティが改善しています。]
シュラブ品種を購入する際の注意点
そのため、シュラブローズをお求めになる場合には「具体的にどういった樹形になるのか?」という点を販売員に店頭でしっかりと直接訪ねるなりメールするなりしてよく確認した上で購入するのをおススメします。失敗を防ぐことにつながります。
なお、例えば、ロサオリエンティスのバラ「オデュッセイア」は4タイプのうち「縦に伸びるタイプ」です。
※その花色に魔性が宿る。バラ[オデュッセイア]の栽培実感 で詳しく紹介しています。
縦に伸びるタイプは横へ広がらない分だけ無理なくコンパクトにまとまめることができるため、地植えはもちろん鉢栽培にも適するシュラブです。
補足:参考記事のお知らせ
他の樹形についても知りたい方へ
ハイブリッド・ティーってなに?|新時代を開いた現代バラ誕生の物語 では木立ち性・ハイブリッド・ティーの特徴を、
フロリバンダってなに?|枝先がブーケのように咲くバラの楽しみ方 では木立ち性・フロリバンダの特徴を、
それぞれ説明しています。
シュラブ樹形の品種を育ててみたい方へ
[初心者必見]4基準から導くおススメの『シュラブ』ローズ10選 では初心者でも育てやすいおススメのシュラブ品種を紹介しています。
よろしければこれらの記事もご覧ください。
本稿のまとめ
さて、いかがだったでしょうか。
本稿では、わかりづらいという声を多く聞く「シュラブ」樹形について、わかりづらくなっている原因と魅力、そしてより詳細な分類についての管理人の考察を紹介しました。バラを選ぶ楽しみが最も凝縮されている樹形はシュラブ樹形といえるかもしれませんね。
本稿が皆様のより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活をはじめませんか?
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バラの管理/Sentence/All photos:花田昇崇