とろけるほどに甘いダマスク・クラシックのバラ[芳純]の栽培実感

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最初のハイブリッドティー品種「ラ・フランス」からはじまるモダンローズ(現代バラ)の香りは、大きく分けて〝ゴージャスなダマスク系”と〝紅茶のようにさわやかなティー系”との2系統の香りの組み合わせから成っています。このうちダマスク系の香りは、いわゆる〝バラらしい”と感じさせる香りで、豊潤でとろけるような甘さを特徴としています。

ダマスク系の香りを軸に、これにわずかにさわやかなティーの香りが乗っているバラの香り成分は「ダマスク・クラシック」と呼ばれています。これから紹介する「芳純(ほうじゅん)」はこのダマスク・クラシックの香りを強く放つ芳香品種として大変名高いバラです。

本稿は、華やかで甘く誘惑的な香りを放つ類まれなる香りのバラ「芳純」の栽培実感です。

 

ローズフェスタ所有のビニールハウス内で撮影した満開の「芳純」の花姿。

当ローズフェスタのビニールハウスで今まさに咲かんとしている芳純の様子[2017年5月初旬]

 

品種の情報

4基準データ

  • 花色 : ディープ・ピンク
  • 芳香 : ★★★★★★ [かなり強い|ダマスク・クラシック]
  • 耐病性 : ★☆☆☆☆☆ [うどんこ病に「かなり弱い」。黒星病に「弱い」]
  • 樹形 : 木立ち性・ハイブリッドティー

※4基準とはバラ入門者の方がはじめてのバラを選ぶうえでの指標となる4つの判断基準です。さまざまにある選択要素のなかから最も重要な4つの基準を紹介しています。

詳しくはこちらをご覧ください。

⇒ バラ初心者の品種の選び方。あなたに最適なバラを探す4基準

 

補足基準データ

  • 花つき : 普通~やや良い
  • 花もち : 良い
  • 花形 : 半剣弁高芯咲き
  • とげ : 若い枝の先端に少数の鋭いとげ。古い枝は無数の鋭いとげ。
  • 耐候性 : 寒さは普通|暑さが苦手で夏には下葉が黄変し落葉しやすい。
  • 花径 : 13cm
  • 樹勢 : やや強い[直立]
  • 開花サイクル : 四季咲き
  • 作出 : 1981年.鈴木省三[京成バラ園芸]

※「半剣弁高芯咲き」をはじめ、バラの花形にはさまざまなものがあります。

⇒ 花びらと花のかたちで見る「花の表記」の読み歩き

※補足データは4基準に準じる2次的な基準です。4基準ほど育てやすさに直結するものではありませんが個々の花の個性を形づくる情報です。

 

外観上の特徴

芳純は日本のバラ育種に多大な貢献をしたミスターローズ・故鈴木省三氏が作出したバラです。

四季咲き性の品種で、冬期を除く春~秋に繰り返して何度も開花します。

花色

「芳純」の4分咲き。

気温や栽培環境によって写真のような濃いピンク色から薄いピンク色になったりもする。

 

深みのあるディープピンクの花色

花びらは一枚々〃が肉厚で、これらが重なることで重厚感のある豪華な印象のバラになります(八重咲き)

はっきりとわかる高芯と整った花形が美しい品種です。

※なお、色は濃淡によって様々な表情となります。多様なピンク系統のバラはこちらで紹介しています。

⇒ と幸せをとどけるピンクのバラの紹介|400種類以上から選んだお勧め品種

「芳純」の5分咲きの花姿。

しっかりした質感の花びら

「芳純」の4分咲きくらいの花姿。

やがてこのような見事な大輪の花になります。

「芳純」の8分咲きの花姿。[撮影者:花田昇崇]

 

花もち

長いステムがよくわかる「芳純」の5分咲きの花姿。

花もちはとても良く、高温となりすぎない環境なら約1週間以上も花を楽しむこともできます

また、この写真でわかるようにステム(茎)が長いため切り花に向きます。室内で楽しむことができるのも嬉しいポイントですね。

 

香り

最大の魅力は、花名からもうかがえる豊潤で甘く豊かな香りです。質と強さの両方に優れた抜群の香りは、かつて同名の香水の名前にもされたほど。

この香りの性質は、研究の末に7つに分類されたバラの香り成分のひとつ「ダマスク・クラシック」のそれで、ゴージャスな華やかさを想起させるうっとりとするほどの甘さを特色としています。芳純はこのダマスク・クラシックの香りの代表花としてしばしば紹介されています。

また、香りの強さも最強クラスにあります1981年作出と少し古い品種ながら、香りの強さにおいて数多のバラの品種のなかでもいまだ第一線にあると思われます

ちなみに、ダマスク・クラシックに分類される香りのバラは、芳純のほか「プリンセス・ドゥ・モナコ」や「ティファニー」「スプニール・ドゥ・マルメゾン」などもあります。

 

新しい葉と古い葉

「芳純」の若い葉。

新葉

当初の葉は時間とともに落ち着き、しだいに以下のような深みのある緑色になります。

「芳純」の古い葉。

 

育てやすさについての私の実感

深みのあるピンクの花色と整った花形、そして抜群の香りが魅力の芳純ですが、育てやすさについてはやや手がかかる部類と言えそうです。

具体的に見ていきましょう。

耐病性

バラはさまざまな病気にかかりますが、品種を問わず最も頻繁にかかるのが「うどんこ病」と「黒星病」の2つの病気で、これらは「バラの2大病」と呼ばれています。

芳純はこの2大病に対する抵抗力が強くありません

うどんこ病への耐病性

うどんこ病に「かなり弱い」品種です。

株の充実度により発症時期は異なるものの、消毒を行っていなければ4月にもうどんこ病が発症することがあります。

うどんこ病の発症に備えつつも発症を抑える環境作りなどの日々の心がけが大切です。

うどんこ病の症状|風が運ぶ脅威。季節はずれの粉雪がもたらす病害 ではこの病気について解説しています。

黒星病への耐病性

黒星病に「弱い」品種です。

消毒剤で予防薬のコーティングを行っていなければ5月の開花頃には黒星病が生じていることがあります。

薬剤での防除を考えるか、またはなるべく雨露の当たらない環境で育てるなどの工夫が必要です。

なお、サプロール乳剤は黒星病の初期症状に薬効が認められるので初期状態であればこの薬剤で治療させることができます[保存版]500mlペットボトルで超簡単にバラの消毒を行う方法 で6ステップで簡単にサプロール乳剤を散布する方法を紹介しています。

耐病性まとめ

ご覧のように2大病のうち、うどんこ病に「かなり弱く」、黒星病も「弱い」ことから、病気に強い抵抗力を備えている品種ではありません。

薬剤散布が必須の品種です。

 

樹勢

樹勢はやや強く、枝は直立に上へ上へと伸びていきます(直立性)横へはほとんど広がりません

栽培スペースは広くとらなくても大丈夫。

 

とげの具合

鋭いとげが少しだけある「芳純」の若い枝。

枝の先端付近のとげの様子

若い枝の先端付近は大きなとげが少しある程度で扱いやすい。

ただ一方で、株元付近は大小の鋭いとげが無数にあるので注意が必要です。

大小のするどいとげが無数にある「芳純」の古い枝。

株元付近のとげの様子

 

栽培のコツ

美しく咲かせるには側蕾が必要

「芳純」のシュートの先端。

シュートの先端

芳純はそのまま育てていると上の写真のように枝の先端付近に無数のつぼみをつけます。しかし、このまま咲かせてしまうと美しくは咲きません。

そこで、以下の写真で私が指で指している部分などの主たるつぼみ以外のものは早めにすべて摘み取ってしまいましょう。これが芳純を美しく咲かせるコツです。(これを摘蕾といいます。)

ハイブリッドティー品種で行う側蕾については 側蕾(ソクライ)のススメ|ハイブリッドティーは豪華に咲かせて一輪の美を楽しもう をご覧ください。

「芳純」のつぼみを私の指先で指した写真。

このような部分を落とす。

 

適する栽培方法

樹が上方向に成長していくため鉢で管理しやすいことから鉢向きの品種です。

一方で、地植えすることでより一層の成長を見込むことができます。ただし病気に備えるため定期的な消毒が求められます。

 

結論:育てやすいか?のまとめ

芳純は香りは抜群に優れているものの耐病性に弱さのある品種です。

薬剤散布が大前提の品種という点で栽培になれた中・上級者向けの品種であり、なかなか育てづらい品種と言えるでしょう。[中級者~上級者向き]

 

本稿のまとめ

さて、いかがだったでしょうか。

本稿は類まれなる香りのバラ「芳純」について紹介してきました。素晴らしい香りのバラなのでぜひ挑戦して欲しいバラだと思っています。

本稿がより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活をはじめませんか?

 

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芳純の栽培/Sentence/All photos:花田昇崇