よしうみバラ公園|汐風にそよぐ海峡の地。しまなみ海道のバラ園|愛媛県今治市

しまなみ海道上の島「大島・吉海町」の山の上にある「亀老山展望公園」から眼下に架かる「来島海峡大橋」を撮影した写真。

愛媛県今治(イマバリ)市所属の瀬戸内海の島「大島・吉海町」の「よしうみバラ公園」は海を間近に感じるバラ園です。

同園はオールドローズから近年の新品種まで400種3500株のバラがところせましと植栽されており、多彩な花色をまんべんなく、ブッシュからクライミングまで幅広い系統が集められています。

本稿は愛媛県今治市に属する瀬戸内の島、「大島・吉海町」にあるバラ公園と島の魅力をお届けします。

序章・しまなみ海道とは?

しまなみ海道に架かるたたら海峡大橋を撮影した。

 

しまなみ海道とは、本州と四国をつなぐ西瀬戸自動車道の通称であり、広島県尾道市(本州側)と愛媛県今治市(四国側)の直線状に位置する島々を大小の橋で結んだ高速道路のことを言います。基本的には自動車が通行する道ですが、しまなみ海道が他の本州四国間を架橋する明石海峡大橋や瀬戸大橋と異なる点は、島々を結ぶ橋の側道や橋下に自転車・歩行者道が設けられている点です。

橋に設けられたこの自転車・歩行者道を利用することで、本州四国間を自転車で横断することが可能となり、汐風を切って走る爽快さや橋から眺める瀬戸内海の見事な景観を楽しめることから人気を呼び、今ではサイクリストの聖地とも言われています。

 

愛媛県今治市のサンライズ糸山付近の写真。自転車専用道路から下を見下ろしながら撮影している。

 

管理人もしまなみ海道のサイクリングは合計3度ほど走っています。猛暑だった炎天下の8月末に尾道・今治間を2日で往復した当時[2010年頃]の記憶は今でも「とても苦しかった楽しかった」良い思い出です。

サイクル旅行をご検討の方は、夏場は避けて春や秋などがおススメです。

ご覧のようなしまなみ海道を構成する島のひとつが本稿の舞台となる「大島」です。来島海峡を挟んだ今治市のすぐ対岸にある島で、島といってもなかなかの広さ。

地図にして大島の中心あたり、西に開いた入り江[湾]のそばに「よしうみバラ公園」があります。

 

しまなみ海道のバラ園‐よしうみバラ公園

芝生を挟んだ場所から遠くの「よしうみバラ公園」を撮影した写真。

吉海バラ公園を芝生を挟んで遠くから撮影。背後に山が見える。大島はかなり広い島。左手側すぐには海が広がっている。

 

よしうみバラ公園の敷地は広大で、約2.8ヘクタールもあるそうです。バラが植樹されているご覧の写真奥のエリア以外にも、手前の芝生が植えられている場所でくつろげるようになっています。

ここよしうみバラ公園は行政が運営していることもあり、入場料金は無料[フリー]で、なんと365日24時間いつでも立ち入り自由だそうです。

 

吉海町にある「よしうみバラ公園」を撮影した写真。

外側からの写真。画面奥にある建物や売店ではグッズや食べ物が販売されている。

 

外観から色とりどりの花を見てとれるので、どのようなバラに出会えるのかと否応なくテンションも高まります。

さっそく園内へと入っていきましょう。

 

園内の様子

よしうみバラ公園のバラの最盛期を撮影した園内の写真。

吉海バラ公園で咲きほこるバラの写真。様々な品種が色とりどりに開花し満開を迎えている。

 

見た目にわかる、色とりどりの多岐にわたるバラの品種の数々。どれも丁寧に管理され見事に咲きそろっています。

 

つるバラ「シュネー・ヴァルツァー」の株元の写真。充実した株の様子がわかる写真。

「シュネー・ヴァルツァー」の株元。充実した株の様子がわかる。

 

400品種ある品種の幅はじつに多彩で、管理人が感じたよしうみバラ公園の4つの特徴・見どころを紹介したいと思います。

 

特徴1|2000年以降の比較的新しい品種が多い

よしうみバラ公園の園内で咲く最盛期のバラの様子。

 

園内を観賞していると、発表されてまだ日の浅い新しい品種が多いことに気づきます。

20世紀半ば~後半のハイブリット・ティー全盛時代のバラの割合が案外と少なく、見た感じでの判断ながら、約過半数か、もしかしたらそれ以上の割合で2000年以降に発表された比較的新しい品種が占めているかもしれません。

発表されて間がない新しい品種はまだまだ情報の蓄積が少ないため、このように直接に触れられる機会はなかなか貴重です。

後の特徴5.「出会えるバラの紹介」を参考に、興味をもったバラがあれば直接訪れてみると参考になる点があろうかと思います。

 

特徴2|クライミング・ローズが見事

園内にはフェンスに誘引された見事なクライミングローズが多数ありましたので紹介します。

春の一季咲き品種ながら、白と桃色が混じる柔らかな花色が美しく、世界中で大人気のクライミングローズ「ピエール・ドゥ・ロンサール」の仕立てが特に見事でしたのでご覧ください。

 

2輪写っているつるバラ「ピエール・ドゥ・ロンサール」(LCI)の美しい花姿。美麗な写真。[撮影者:花田昇崇]

「ピエール・ドゥ・ロンサール」。正式な分類は「ラージ・フラワード・クライマー」(LCI)。一季咲きだがときに返り咲く。世界バラ連合会「栄誉の殿堂入り」品種。

 

ピエールドゥロンサールには、2つの有名な枝代わり品種「ブラン・ピエール・ドゥ・ロンサール」・「ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサール」があります。これら2つが折り重なる花色の競演をご覧ください。

左側にはピンク色のピエールドゥロンサールが、そして右手側には全体に白みの強いブランピエールドゥロンサールがこぼれんばかりに咲きほこっています。

 

100輪以上のバラが咲きほこる圧巻の美麗写真。写真手前の左側にはつるバラ「ピエール・ドゥ・ロンサール」が、写真中央にはつるバラ「ブラン・ピエール・ドゥ・ロンサール」が満開を迎えている。

「ピエール・ドゥ・ロンサール」[左]と「ブラン・ピエール・ドゥ・ロンサール」[右]

 

じつはこの2種だけではありません。さらにルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサールも隣に並んでいます。

ロンサールはどれも美しい花形と花色が魅力ですが、ルージュはこれらの魅力に加えて強い芳香も持ち合わせた品種で、ロンサール一派に埋め尽くされたご覧の空間からは香りを通り越した気品が漂ってくるようにすら思えます。

至福の感情に包まれる極上の空間がここにあります。

 

写真左側にはつるバラ「ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサール」、そして中心には「ピエール・ドゥ・ロンサール」、そして右側には「ブラン・ピエール・ドゥ・ロンサール」が揃って満開を迎えている美麗な写真。

「ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサール」[左]。「ピエール・ドゥ・ロンサール」[中心]。「ブラン・ピエール・ドゥ・ロンサール」[右]が揃って満開を迎えている。

 

その他にも数多くのクライミングが並んでいますが、本稿ではひとつだけ紹介しておきます。

定番のミニバラ「オレンジ・メイアンディナ」のつる仕様の「つるオレンジ・メイアンディナ」です。誘引されたフェンス一面が朱色の花で覆われています。

 

ミニチュアローズの「オレンジ・メイアンディナ」の枝代わりの「つる・オレンジ・メイアンディナ」が画面いっぱいに咲きほこる写真。

 

もしも自宅につるバラを植えようと計画・検討されている方であれば、具体的なイメージづくりに有益だと思います。

カタログではわからない様々な品種の生の情報を直接じっくりと観賞できるのはバラ園ならではですね。

 

特徴3|アメリカ「J&P社」の品種が多い。他方「デルバール社」やイギリス系が少ない

耐病性がかなり強い木立ち性|フロリバンダ品種の「ファビュラス!」で知られるアメリカの「J&P社」の品種が、他のバラ園と比べて多く揃っている印象です。

日本で広く流通する海外のバラの育種会社はフランスやドイツ、そしてイギリスやオランダなどが多く、アメリカの育種会社の品種はこれらヨーロッパの国々の品種ほどには国内で流通していません。

「グランド・プライズ」や「コティヨン」その他アメリカの品種を数多く観賞できるのは嬉しい見どころです。

 

フロリバンダローズ「グランド・プライズ」の花姿。咲き進むにつれてアプリコット色になるバラ。

「グランド・プライズ」[J&P]

 

フロリバンダ・ローズ「グランド・プライズ」は咲きすすむにつれてアプリコットカラーになる。[写真上]

フロリバンダ・ローズ「コティヨン」はまるで妖精がステップを踏むような軽快さを感じさせる軽いライラックカラーが美しい。[写真下]

 

軽いライラック色のフロリバンダローズ「コティヨン」の花姿。

「コティヨン」[J&P]

 

反面、フレンチ・ローズの雄「デルバール社」の品種はあまり見かけませんでした。

「グランデ・アモーレ」などわずかに同社の古い品種があるものの、近年のデルバールは耐病性に優れた名花を数多く輩出しているので、その点は少し残念かもしれません。

同じようにイギリス系[デビット・オースチン・ローゼズやハークネス]の品種もほとんど見られませんでした。

※なお、デビット・オースチン・ローゼズのバラは関西の日本における本拠地で数多く見ることができます。

デビッド・オースチン・ローゼズ社のバラ園|大阪府泉南市

 

特徴4|出会えるバラの紹介

では、最後に同園で鑑賞できる品種を紹介していきます。

デルバールやイギリス系の品種をのぞく欧米の著名なナーサリーの有名品種が数多くあります。あなたの心が打ち抜かれる、そんな運命のバラとの出会いはここよしうみバラ公園にあるかもしれません。

 

アウグスタ・ルイーゼ

アプリコット~ピーチの色味のバラ「アウグスタ・ルイーゼ」が咲きほこる様子。

「アウグスタ・ルイーゼ」。1993年発表。アプリコット~ピーチの花色で花つきがよい。

 

オレンジ・メイアンディナ

朱色に近い色味のバラ「オレンジ・メイアンディナ」[ミニアチュア]が咲きほこる花姿。

「オレンジ・メイアンディナ」(Min)。1982年発表。朱色に近い花色で、目を覆うほどの鮮やかな色合いが特徴の定番のミニバラ。

 

小夜曲

はっきりした花形が特徴のバラ「小夜曲」の花姿。

ミニアチュア・ローズ「小夜曲(サヨキョク)」。1996年作出。整ったはっきりした花形が特徴。花弁は薄い。

 

サンライト・ロマンティカ

光り輝くような黄色の花色のバラ「サンライト・ロマンティカ」が咲きほこる写真。

フロリバンダ・ローズ「サンライト・ロマンティカ」の開花写真。2002年発表。

 

光り輝くような黄色の花色。多花性で、1株だけでこれほどの開花数。

黒星病に強く、また芳香も強い。露地栽培にも最適で、初心者にオススメの木立ち性バラ。

※こちらの記事では厳選したオススメの木立ち性バラを10品種紹介しています。育てやすい木立ち性をお探しならご覧になってみてください。

[初心者必見]4基準から導くおススメの「木立ち性」バラ10選

 

シュネー・ヴァルツァー

クライミング・ローズ「シュネー・ヴァルツァー」の花姿。

クライミング・ローズ「シュネー・ヴァルツァー」[雪のワルツの意味]。1987年発表。返り咲きで年に数回咲く。

 

チョコレート・サンデー

赤茶色のバラ「チョコレート・サンデー」の花姿。

「チョコレート・サンデー」[LCI]。2009年発表。赤茶色を基調とする花色で花名に納得。とげが多い。

 

つる桜霞

画面いっぱいに咲くクライミング・ローズ「つる桜霞」の花姿。

「つる桜霞」[CL]。2001年発表。桃色を基調とした平咲き品種だが、強い日差しを受けて赤みが増している。フロリバンダの「桜霞」の枝代わり。

 

パローレ

ローズピンクの超巨大輪のバラ「パローレ」の花姿。

ハイブリッド・ティー「パローレ」。2001年発表。特筆すべきは圧倒的に巨大な花の大きさ。ローズピンクの花色も美しい。

 

ファビュラス!

咲きほこる純白のフロリバンダローズ「ファビュラス!」の美しい花姿。

素晴らしい!を意味する花名の「ファビュラス!」[FL]。特徴3.で紹介した米国のバラ育種会社J&Pの代表的な花。純白の花色に強い耐病性が魅力。

 

ブラン・ピエール・ドゥ・ロンサール

背後の青空に映える美しいバラ「ブラン・ピエール・ドゥ・ロンサール」[LCI]の花姿。[撮影者:ローズフェスタ]

LCI[ラージ・フラワード・クライマー]タイプの「ブラン・ピエール・ドゥ・ロンサール」。枝元の「ピエール・ドゥ・ロンサール」と比べて色合いは白味が増している。

 

ふれ太鼓

鮮やかな「黄色」にはじまり、それがやや赤みを増して「オレンジ色」になり、さらに赤みを増して「赤色」へと変化する花色が特徴のバラ「ふれ太鼓」の満開の花姿。[撮影者:花田昇崇]

クライミング・ローズ「ふれ太鼓」。1974年発表。鮮やかな「黄色」にはじまり、それがやや赤みを増して「オレンジ」になり、更に赤みが増して「赤」へと移ろいでいく色彩変化が見どころ。

 

リトル・アーティスト

ミニチュア・ローズ[リトル・アーティスト」の花姿。[撮影者:ローズフェスタ]

ミニアチュア・ローズ「リトル・アーティスト」。1983年発表。花つきがよく、次々と咲く。

 

ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサール

濃くて明るい赤色の花が房になって咲くバラ「ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサール」[LCI]の花姿。[撮影者:ローズフェスタ]

「ルージュ・ピエール・ドゥ・ロンサール」[LCI]。2002年発表。濃く明るい赤色で房になって咲く。強い香りと四季咲き性が魅力のクライミングローズだが、さほど耐病性は強くない。

 

るる

フロリバンダ・ローズ「るる」の満開の花姿。

フロリバンダ「るる」。2006年発表。コーラルピンクの花色がくしゃくしゃになって咲く。

 

レッド・クィーン

緋色の花色と剣弁高芯咲きの花形が特徴のバラ「レッド・クィーン」の美しい花姿。[撮影者:花田昇崇]

ハイブリッドティーローズ「レッド・クィーン」。1998年発表。緋色の花色と剣弁高芯咲きの花形が美しい。

 

ワイルド・プラム

ミニチュア・ローズ「ワイルド・プラム」の花姿。

ミニアチュア・ローズ「ワイルド・プラム」。写真のように多花性でよく咲く。

 

[以上五十音順]

 

バラ公園|まとめ

ここまでよしうみバラ公園について1~5の特徴・見どころを紹介してきました。

無料でここまでしっかりしているバラ園は率直に素晴らしく、充分に訪れてみる価値があると感じています。

 

大島の魅力・今治市の観光スポット

大島にはこちらのバラ園以外にもお立ち寄りスポットが多くあります。サイクリングで有名なしまなみ海道上の島のひとつで、サイクリストにとっても必見の施設が数多くあります。バラ公園以外にも、

  • よしうみいきいき館
  • 亀老山(キロウサン)展望公園
  • 村上水軍資料館

などがあり、どれも大島でしか味わえない刺激的な体験ができるスポットです。時間があればどれも足を運んでおきたいおススメの場所です。

しまなみ海道随一の眺望。亀老山展望公園と大島・吉海町(愛媛県今治市)の魅力

 

本稿のまとめ

さて、いかがだったでしょうか。

本稿は愛媛県今治市にあるよしうみバラ公園を紹介してきました。

年中楽しめる四季咲きの花が中心のよしうみバラ公園をはじめ、四季により様々な表情を見せる島の魅力溢れる大島よしうみ町で日頃の疲れを癒してみてはいかがでしょうか?

本稿が皆様のより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活をはじめませんか?

 

写真・記事の無断掲載・転載を禁止します。

バラの栽培:よしうみバラ公園さん

Sentence/All photos:花田昇崇

 

補足|アクセス情報など

よしうみバラ公園インフォーメーション

所在

  • 愛媛県今治市吉海町福田1296
  • 問い合わせ先:吉海支所 産業建設課 TEL:0897-84-2111

開園時間

  • なし。24時間立ち入り自由

休園日

  • なし。24時間立ち入り自由

入場料金

  • 無料(フリー)

開花シーズン/見ごろ

  • 春 : 5月10日~23日頃が最盛期[目安]
  • 秋 : 10月末~11月半ば頃[目安]

交通/アクセス

  • 自動車:西瀬戸自動車道(通称:しまなみ海道)大島北インターから約4㎞。車で10分。
  • 自転車:よしうみレンタサイクルターミナルより、急いで約15分程度。ゆっくりで約30分程度。
  • バス:岡山駅発。倉敷行約30分。下撫川下車、徒歩5分

※自動車かサイクリングの途中に自転車で立ち寄るのがおススメです。

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