バラの品種ラベルやバラの本などで目にする「フロリバンダ」という用語。
バラの樹形の分類でしばしば目にする「ハイブリッド・ティー」「「シュラブ」「クライミング」・・・いまいちよくわからない。
そんなお困りのあなたにお届けするのが本稿です。「フロリバンダってどんなのだろう?」と疑問をお持ちのあなたのためのフロリバンダの説明です。枝先がブーケのように咲くフロリバンダの楽しみ方をわかりやすく紹介しています。
目次
木立ち性・フロリバンダの特徴と楽しみ方
フロリバンダを理解する前に・・・。木立ち性ってなに?
「木立ち性」や「つる性」などのバラの分類がありますが、これはバラが「将来的にどのような樹のタイプに育つか」「どのような花のつけ方をするか」という観点からの分類です。
バラの樹形[=バラの樹の分類]には大きく以下の3パターンがあります。
- [支柱などに寄り添わずとも]自ら自立できるタイプ
- [支柱やアーチなど構造物に寄り添わせてくくりつけるなどする必要がある]自ら自立することができないタイプ[自立が難しいタイプ]
- その中間のタイプ
の3つのタイプです。
「自ら自立できる」というのは、一般的な樹木のイメージとお考え下さい。公園や街路樹に立っている樹は空に向かって一人立ちしていますがこのように自らの力だけで直立できるという意味です。
この「自ら直立できるタイプ」のことをバラの樹の分類では「木立ち性(ブッシュ)」といいます。
自ら自立できるタイプのバラ = 木立ち性のバラ[ブッシュ・ローズ]
木立ち性|フロリバンダってなに?
自立できる木立ち性タイプのバラは、さらにそれぞれ3つの特徴をもったタイプに分けられています。
- 木立ち性|ハイブリッド・ティー
- 木立ち性|フロリバンダ
- 木立ち性|ミニアチュア
の3つが主だったものです。[その他、一部のオールドローズ]
[このうちハイブリッド・ティー系統のバラの特徴は 別稿 に譲ります。]
このフロリバンダの特徴について続けていきます。
フロリバンダの特徴
フロリバンダの特徴をよりよく理解するために、どのようにしてこのような特徴をもったバラが誕生したのかという点から語りたいと思います。
フロリバンダ誕生の歴史
木立ち性|フロリバンダというバラの系統は20世紀初頭に誕生した比較的新しいグループです。
「ハイブリッド・ティー系統」の1号品種である「ラ・フランス」を生み出したフランス人ジャン=パプティスト=ギヨーは、彼の晩年に中国原産のロサ・キネンシス[和名「コウシバラ」]系のバラと日本原産の「ノイバラ」を交配させて「ポリアンサ系統」というのを生み出しました。このポリアンサは言うなれば「東洋のバラの遺伝子の系統」と言えるでしょう。
この「ポリアンサ系統」のバラに「ハイブリッド・ティー系統」のバラを交雑させることによって双方の特徴が混じりあった新たな系統が誕生することになります。それがフロリバンダ[別名「ハイブリッド・ポリアンサ」]です。
この第1号品種[「エリゼ・ポールセン」1924年]は1867年以降に誕生した新系統になるため、フロリバンダ品種も「現代バラ[モダンローズ]」に属する一系統になります。
このような誕生の経緯からフロリバンダのバラは、
- ポリアンサ系統[ロサ・キネンシス,ノイバラ]のバラの特徴
- ハイブリッド・ティー系統のバラの特徴
を大なり小なり有することになります。
フロリバンダ系統が備える特性
「ポリアンサ」「ハイブリッド・ティー」双方それぞれの特質はおおむねこの4つです。
- ポリアンサの特性:房咲き
- ポリアンサの特性:小輪系
- ハイブリッドティーの特性:大輪系
- ハイブリッドティーの特性:四季咲き性
この4つの特性が組み合わさり、フロリバンダのバラの特徴が生み出されています。
[※ハイブリッド・ティーの特性にさらに「芳香」を加えて「5つの特徴」と見ることもできる。]
フロリバンダ5つの特徴
- ほとんどの品種の花径が中輪
- 房咲きになるので開花時の花数が多い[ブーケのように咲かせられる]
- 丈夫で育てやすい品種が多い
- 香りの強い品種が少ない
- 四季咲き性
これがフロリバンダ品種の多くに比較的共通する特徴です。
多くの品種が枝先に房となって花を咲かせるためフロリバンダ品種はブーケのようにも見える豪華さがあります。
「フロリバンダ」とは「花を束ねる」の意味です。切り花用に流通しているスプレーバラもこのフロリバンダ系統です。
片親がハイブリッド・ティー系統なので、ハイブリッドティーと親子関係にあります。また、同じく片親であるポリアンサ系統の強健さを継承しているので育てやすく初心者向きの品種が多いのも特徴です。
※ブライダル・ピンクの特徴・育てやすさなどを 花嫁を連想させるバラ[ブライダル・ピンク]の栽培実感 で詳しく紹介しています。
フロリバンダを楽しむコツ
つぼみが時間差で開花する
紹介した写真でご覧いただいたように、フロリバンダ品種は一枝に多くの花を咲かせるのが特徴です。
ただこれらの花が一斉に開花してブーケ状に咲きそろうわけではなく、時間差で開花していくことを知っておきましょう。
枝先のつぼみのうち、まず中央付近の花だけが他に先んじて一足早く開花します。それからしばらく遅れて(数日後に)他のつぼみが開花を迎えます。この場合、養分の大部分を最初の花がもっていってしまっているため、他のつぼみは小さく貧弱になりがちです。
開花を統一し、花の大きさを均一にする
そこで開花時期を調整し、併せて花の大きさをなるべく均等にするために、中央のつぼみは咲かせずにピンチ(摘蕾=てきらい)しましょう。
ピンチのタイミングは、咲かせる前の段階であればそれで大丈夫ですが、できればなるべく早めに行うのがよいでしょう。結局落とすつぼみです。
中央のつぼみをピンチをすることでその他のつぼみに養分が均等にわたるようになり、他のつぼみが大きく咲きます。これらのつぼみを一斉に開花させることでブーケのように咲きそろえることができます。
こうすることでフロリバンダ品種を一層楽しめるようになります。
なお、このような中央のつぼみのピンチはフロリバンダ品種で積極的に行うものの、ハイブリッドティーでは行いません。ハイブリッドティーでは中央のつぼみは必ず残します。こちらは側のつぼみをピンチします。
詳しくは 側蕾(ソクライ)のススメ|ハイブリッドティーは豪華に咲かせて一輪の美を楽しもう をご覧ください。
補足|参考記事
他の樹形についても知りたい方へ
ハイブリッド・ティー(HT)ってなに?|モダンローズの誕生にまつわる歴史 では木立ち性・ハイブリッド・ティーの特徴を、
シュラブってなに?|多様・多彩なバラの個性が集まるシュラブの魅力 ではシュラブ樹形の特徴を、
それぞれ説明しています。
フロリバンダ樹形の品種を育ててみたい方へ
[初心者必見]4基準から導くおススメの『木立ち性』バラ10選 ではフロリバンダ品種を含む木立ち性タイプのバラのなかから初心者でも育てやすいおススメの品種を紹介しています。
よろしければこれらの記事もご覧ください。
本稿のまとめ
さて、いかがだったでしょうか。
本稿ではフロリバンダという樹形の特徴や楽しむコツについて説明しました。フロリバンダの特徴を知ることでバラの樹形の理解が進み、あなたにとってより良いバラを楽しむ手助けとなれば嬉しく思います。
本稿が皆様のより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活をはじめませんか?
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バラの管理/Sentence/All photos:花田昇崇