美しい夕陽をふと眺めたとき、ふっと幼少の頃に見上げた夕陽に重なり、故郷のことを思い起こした経験はありませんか?
まるで暮れなずむ夕陽のように散り際が朱色一色に染まる花姿のバラ「ノスタルジー」は、バラの2大病に「とても強い」ことからほぼ無農薬で育てることが可能です。また、樹形もコンパクトにまとまるため鉢で育てやすいのも長所です。初心者が気楽に鉢で育てにあたり最適なバラの1種と言えるでしょう。
本稿は、いつか見た夕陽を思い起こさせる郷愁の花色のバラ「ノスタルジー」の栽培実感です。
目次
品種の情報
4基準データ
- 花色 : 中心部はクリームホワイト/外側は朱色 | 大部分がやがて朱色に染まる
- 芳香 : ★★☆☆☆☆ [微香~中香]
- 耐病性 : ★★★★★☆ [うどんこ病・黒星病ともに「かなり強い」]
- 樹形 : 木立ち性・ハイブリッドティー
※4基準とはバラ入門者の方がはじめてのバラを選ぶうえでの指標となる4つの判断基準です。さまざまにある選択要素のなかから最も重要な4つの基準を紹介しています。
詳しくはこちらをご覧ください。
⇒ バラ初心者の品種の選び方。あなたに最適なバラを探す4基準
⇒ ハイブリッド・ティーってなに?|新時代を開いた現代バラ誕生の物語
補足基準データ
- 花つき : 普通~やや良い
- 花もち : 良い
- 花形 : 半剣弁高芯咲き
- とげ : 株元には大小の無数のとげ。若い枝の先端には少数の鋭いとげ。
- 耐寒性/耐暑性 : 普通/夏には下葉が黄変し落葉しやすい。夏は苦手。
- 花径 : 13cm
- 樹勢 : やや強い[が、コンパクトにまとまりやすい]
- 開花サイクル : 四季咲き
※「半剣弁高芯咲き」をはじめ、バラの花形にはさまざまなものがあります。
⇒ 花びらと花のかたちで見る「花の表記」の読み歩き
※補足データは4基準に準じる2次的な基準です。4基準ほど育てやすさに直結するものではありませんが個々の花の個性を形づくる情報です。
外観上の特徴
ノスタルジーは四季咲き性の品種で、冬期を除く春~秋に繰り返して何度も開花します。
つぼみ
ご覧のつぼみがほころびはじめると、徐々に朱色の可愛らしい花びらが顔をのぞかせてきます。
朱色一色に見えるこのつぼみの色味は花が展開するにつれて色味を変えつつ楽しませてくれます。
続いて花色をご覧ください。
花色
私が感じるノスタルジーの魅力は花色の変遷(うつろい)にあると思っています。
当初、朱色一色だった花びらは時間の経過とともに移ろい、徐々にクリームの色味が生じて、これと朱色とが比率を変えながら変化しています。
花が咲き進むにつれて中央付近のクリーム色が増していき、このクリーム色と朱色の比率がおおよそ2:1程度になります。(クリーム2:朱色1)
クリームホワイトと朱色のダブルカラ―(覆輪)が大変美しいノスタルジーの花姿が上記です。私はこの割合がこの品種の最も美しい花姿だと感じていますが、いかがでしょうか。
さて、上記の花色の割合は長くとどまってはくれません。まるで花全体を飲み込むようにクリーム色が勢いを増していきます。
このまま全体がクリーム色の一色に染まったままで咲き散るかと思いきや、この品種が特異であるのは、この後に一転して朱色が勢いを増して全体を染め上げることです。
ところで、「ノスタルジー」の意味は、「過ぎ去った時間や故郷などを懐かしむ気持ち」を意味するフランス語だそうです。
私は、なぜこのバラがこのような名を付されたのかを不思議に思っていました。詳細はわかりかねますが、私なりに解釈したところでは、「朱にはじまり朱に終わるこの花色の変遷をして、作出者に「望郷の念」を思い起こさせたことにある」のかもしれないと自分なりに勝手に納得しているところではあります。いつか見た夕日を思い出させる「郷愁の花色」と呼べるのかもしれませんね。
ご覧いただいているあなたはいかがお感じでしょうか。
花つき
ノスタルジーは花つきが良いため、次々とつぼみをあげてきます。
花もち
花つきの良さに加えて、花もちも良く、高温になりすぎない環境下であれば4日~1週間前後も花を楽しむことができます。
ただし、花枝が長くないので切り花にはあまり向きません。花は斬り落とさずに咲いた花をそのまま楽しむのがおススメです。
香り
巷の情報によると香りの強さが「中香」や、さらには「強香」とされているものもあるようです。
私の感覚では香りはさほど強いとは感じません。ほのかに香る「微香」か、せいぜい「中香」といったあたり。
とはいえ、香りの強弱についての感覚はたぶんに個々人の嗅覚に左右されることから、これはあなたご自身でご確認されるのが良いと思います。
葉の様子
葉は美しい照り葉で黒星病への強さを伺わせます。
育てやすさについての私の実感
美しい花が多く咲き、しかも特異な花色の移ろいを楽しめるノスタルジーはとても育てやすいため、はじめてバラを育てる初心者にもお薦めしたい品種です。
その理由を以下で見ていきましょう。
耐病性
バラはさまざまな病気にかかり、品種を問わず最も頻繁にかかるのが「うどんこ病」と「黒星病」の2つの病気で、これらは「バラの2大病」と呼ばれています。
うどんこ病への耐性
うどんこ病に「かなり強い」抵抗力を有しています。
[※表記の参考 : 普通 < 普通よりも強い < 強い < かなり強い < 最強 ]
株自体の生命力が衰えている場合は格別、順調に生育している状態であればうどん粉病にほとんどかからないか、多少かかることがあったとしても「薬剤を散布しなければ!」と目くじらを立てるほどの必要はなさそうです。
黒星病への耐性
黒星病に「かなり強い」抵抗力をもっています。
[※表記の参考 : 普通 < 普通よりも強い < 強い < かなり強い < 最強 ]
黒星病への抵抗力はその品種の育てやすさに最も影響する要素です。これにとても強いことは大変大きな品種の長所です。
耐病性まとめ
このようにうどんこ病と黒星病の両方に「かなり強い」抵抗力を備えています。
薬剤散布のことをあまり考えずにバラを育てる楽しみを満喫することができるでしょう。
樹勢
「やや強い」樹勢です。
しっかり作られた土に地植えすれば太く大きく成長していくことでしょう。
鉢植えの場合には、さほど大型化せず低い位置でコンパクトにまとまりやすいと思います。
地植え、鉢植え、そのどちらにも適すると思いますが、鉢で育てやすいバラを探している方には鉢植え用のバラとしても特におススメしておきたい品種です。
とげの具合
比較的小さめのとげが目立つ品種です。素手での取り扱いは避けた方が良いでしょう。取り扱い時には革の手袋をつけましょう。
栽培のコツ
たくさんの花を咲かせることから株はたくさんのエネルギーを消費しがちです。そのため充分なエネルギーの補給をしてあげることが肝要です。
そのため施肥量について言えば、地植えの場合にはごく一般的な量で結構ですが、鉢植えの場合には施肥を多めにするのが良いでしょう。
適する栽培方法
地植えをした場合には、株が太く大きく成長していくのより健やかな成長が見込めます。耐病性の強さも相まって花がら切りや枝の剪定などを除いた日頃の管理があまり必要ありません。
それゆえ最もおススメするのは日向で地植えにすることです。バラの花を気楽に楽しむことができるでしょう。
他方、鉢で育てる場合にも特に問題はありません。地植えと比べれば水やり等の手間暇は増えるものの、それでも他の品種と比べれば遥かに手間暇は少なく済むでしょう。
結論:育てやすいか?のまとめ
再三述べてきたように、また4基準の項目からもわかるように、ノスタルジーは初心者でもとても育てやすい品種です。まったくの優等生品種で栽培の手間暇は少なく済みます。
忙しいあなたに最適なバラの1本です。[初心者向き]
本稿のまとめ
さて、いかがだったでしょうか。
いつか見た夕日を思い出させる郷愁のバラ「ノスタルジー」について紹介しました。
この品種のように病気に強くてオススメできる木立ち性のバラはこちらで紹介しています。
⇒ 初心者必見!4基準から導くおススメの『木立ち性』バラ10選
本稿がより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活をはじめませんか?
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ノスタルジーの栽培/Sentence/All photos:花田昇崇