ベランダでも育てられるイングリッシュローズ[クィーン・オブ・スウェーデン」の栽培実感

イングリッシュローズ「クィーン・オブ・スウェーデン」の8分咲き。

クィーン・オブ・スウェーデン」はマンション住まいでバラの栽培を諦めているあなたに特におススメのイングリッシュローズです。

とげが少なく、また、枝が真っすぐ上に向かって育つ直立性で株全体が暴れずにまとまるため、鉢植えにしてベランダで育てることも可能な同ブランド中の数少ない品種の一つです。他方、地植えでは直線上に等間隔に配置することで生垣的な用途にも使えます。

花は、カップ咲きからロゼット咲きへと変化する中程度のソフトピンクで、上を向いて咲くのと相まって、眺める私たちにまるでたくさんの笑顔のエールを送ってくれているかのような愛らしさを感じさせます。

本稿は、ベランダや道沿いから行き交う人に笑顔のエールを届けてくれる愛らしいバラ「クィーン・オブ・スウェーデン」の栽培実感です。

 

クィーン・オブ・スウェーデン花の中心部を写した。ぎっしり詰まった花弁が詳細にわかる。

 

品種の情報

4基準データ

  • 花色 : ソフトピンク
  • 芳香 : ★☆☆☆☆☆ [微香|ミルラ]
  • 耐病性 : ★★★★☆☆ [うどんこ病「普通よりも強い」|黒星病「普通よりも強い」]
  • 樹形 : シュラブ|木立ち性タイプ

※4基準とはバラ入門者の方がはじめてのバラを選ぶうえでの指標となる4つの判断基準です。さまざまにある選択要素のなかから最も重要な4つの基準を紹介しています。

詳しくはこちらをご覧ください。

ラ初心者の品種の選び方。あなたに最適なバラを探す4基準

 

補足基準データ

  • 花つき : 良い
  • 花もち : 普通
  • 花形 : カップ咲きからロゼット咲きへ
  • とげ : かなり少ない
  • 耐寒性/耐暑性 : 強い[冬:強い/夏:普通よりも弱い]
  • 花径 : 8cm(中輪)
  • 樹勢 : 普通~夏以降に旺盛
  • 開花サイクル : 返り咲き[弱い四季咲き]
  • 作出 : 2004.デビット・オースチン・ローゼズ/イギリス
  • 原名 : Queen of Sweden

※「カップ咲きやロゼット咲き」をはじめ、バラの花形にはさまざまなものがあります。

⇒ 花びらと花のかたちで見る「花の表記」の読み歩き

※補足データは4基準に準じる2次的な基準です。4基準ほど育てやすさに直結するものではありませんが個々の花の個性を形づくる情報です。

 

名前の由来

クィーン・オブ・スウェーデンの名前の由来は、イギリスとスウェーデンが結んだ修好通商条約[1654年]の350周年の節目を祝して名付けられた名称です。

 

外観上の特徴

開花サイクル

クィーン・オブ・スウェーデンは春先の開花は見事ですが、四季咲き性が弱く、秋の開花数は少なめの品種です。[返り咲き

春の開花を大いに楽しみたい品種です。

 

開花の様子

クィーン・オブ・スウェーデンの開きはじめ。

開きはじめは、気温が高い昨今では5月の1番花で少しアプリコット味を帯びることもあります。

クィーン・オブ・スウェーデンの3分咲き。

 

花色・花びら

クィーン・オブ・スウェーデンの6分咲き。

ソフトピンクの花色は中心部がやや濃い色味をもっています。

咲きはじめはカップ咲き。

クィーン・オブ・スウェーデンの開花写真。

開花ステージによりカップ咲きからロゼット咲きに変遷します。

ロゼット咲きがわかるクィーン・オブ・スウェーデンの花姿。

 

花つき

の花つきはとても良い

もっとも夏以降はさほどでもなく、春と比べての開花数は大幅に減ります。[返り咲き

木立ち性[ブッシュ]タイプのシュラブで、花はフロリパンダのように咲きます。

シュラブってなに?|多様・多彩なバラの個性が集まるシュラブの魅力

ブロリパンダってなに?|枝先がブーケのように咲くバラの楽しみ方

 

花もち

花もちは普通程度といった印象。

 

香り

香りは強くなく、せいぜい微香といったところ。

かすかにミルラの香りがします。(ティーの香りがするとも言われます。)

 

葉の様子

丸くて小さなクィーン・オブ・スウェーデンの葉。

丸い葉はころころしていてかわいい。写真からは水をはじく照り葉のように見えますが、実際はさほどでもありません。

葉の表面のコーティングはほどなくわからなくなります。

 

育てやすさについての私の実感

耐病性

バラはさまざまな病気にかかり、品種を問わず最も頻繁にかかるのが「うどんこ病」と「黒星病」の2つの病気で、これらは「バラの2大病」と呼ばれています。

この2大病の耐病性は「普通よりも強い」といった印象です。

詳細を見ていきます。

うどんこ病への耐性

うどんこ病への抵抗力が「普通よりも強い」です。これは長所です。

[※表記の参考:普通 < 普通よりも強い < 強い < かなり強い]

耐病性が「普通よりも強い」場合には、雨露の当たる環境であればさほど気にしなくても良く、うどんこ病のための薬剤散布はひとまず不要でしょう。

黒星病への耐性

黒星病への抵抗力が「普通よりも強い」です。

[※表記の参考:普通 < 普通よりも強い < 強い < かなり強い]

「普通よりも強い」程度の場合には花季のどこかのタイミングで黒星病が発症するでしょう。ただし、何が何でも薬剤コーティングをしなければ枯死するといったほどではありません。

株が充実する2~3年以降は管理がラクになるでしょう。

灰色かび病への耐性

灰色かび病への耐性に「弱さがある」可能性が見受けられます。

梅雨時など雨の日が続いて多湿の状態が長引くときは用心深く観察する必要があります。花やつぼみに灰褐色のかびが付着していないかどうかに注意が必要です。

バラや他の植物との密植を避け、風通しを確保しましょう。この点ベランダでは比較的風通しが良い(状況が多いと予想される)のでやや安心できます。

耐病性まとめ

ご覧のようにクィーン・オブ・スウェーデンは2大病のうち、うどんこ病と黒星病に「やや強い」抵抗力をもっています。

総合的な耐病性の強さは「普通よりも強い」品種と言えますが、灰色かび病への「弱さがある」点に注意が必要です。

ただ、雨露を避けて風通しを確保しやすい鉢で育てられる品種なので(黒星病と)灰色かび病への備えがしやすいのではないかと思われます。

 

樹勢

樹勢は「普通~夏以降に旺盛」。

春先の枝の伸長は普通程度。

気温が高くなる夏以降にはよく枝を伸ばします。もっとも、枝は直立性で上に向かって伸びていき横には広がらないので他のスペースを侵しません。

イングリッシュローズの多くは枝が左右に広がる品種が多いのですが、この品種はそうならないため、限られたスペースのベランダでも育てられる数少ないイングリッシュローズの一つです。

 

とげの具合

とげが少ない品種です。

大小のとげが少なく、素手で扱うこともできます。(といっても、革手袋をつけるとなお安全です。)

 

栽培のコツ

冬の剪定のポイント

シュラブ樹形のため冬の選定を浅めにして、枝を伸ばして誘引していく方法もありますが、この品種はあまり長く伸ばさないように切り詰めていくのがおススメです。

基本は、樹高の2分の1の高さの位置を目安に切り揃える、または株元から1mの高さを目安に枝数を多めに残して切り揃えることです。

その他、

  • 古い枝は株元から切る。
  • 弱小枝(主枝と比べてあまりにも小さすぎる枝)は付け根から切り落とす。
  • 一番花を咲かせた枝を切る。

などを冬の寒いうちに行いましょう。

 

適する栽培方法

  • 鉢植えの良さ = ベランダでも育てられる。
  • 地植えの良さ = 直立性であること、とげが少ない点等で生垣的な用途で境界に植えるのに適する。

このように鉢植え、地植え、いずれでも活躍できるバラなのであなたにあった環境で育てることができます。基本的にはどちらも向くと思います。

管理人の考えとしては、

  • ベランダで育てられるイングリッシュローズが比較的少ないと思うこと
  • (灰色かび病への弱さから、)ベランダは(地植え環境よりは)風通しが良い場合が多いと思われること
  • 黒星病の耐性が普通なのでなるべく雨露を当てない環境が好ましい

などの理由から鉢植えをおススメしておきます。

 

水滴を受けているクィーン・オブ・スウェーデンの7分咲きの花姿。

 

結論:育てやすいか?のまとめ

  • 風通しの良い場所で育てる
  • 雨露の直撃を避ける

この2点を意識しておけばあとは問題なく育てられる品種で、耐病性も「普通よりも強い」ので育てやすい品種と言えるでしょう。(初心者向き)

 

クィーン・オブ・スウェーデンの満開時の花の中心。水滴がついている。

 

本稿のまとめ

クィーン・オブ・スウェーデン」が咲き誇る写真。

 

「クィーン・オブ・スウェーデン」の栽培実感を紹介しました。マンション住まいでバラ栽培を諦めているあなたにこそ特にオススメのバラです。

なお、本品種を含むイングリッシュローズは デビット・オースチン・ローゼズ社のバラ園|大阪府泉南市 でも紹介しています。たくさんのイングリッシュローズに直接触れることができるので興味のある方はぜひ訪れてみてください。

本稿がより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活をはじめませんか?


 

写真・記事の無断掲載・転載を禁止します。

クィーン・オブ・スウェーデンの栽培/Sentence/All photos:花田昇崇

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