神話にみた雄々しく猛る深紅の大蛇。イングリッシュローズ[ムンステッドウッド]の栽培実感

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イングリッシュローズ「ムンステッド・ウッド」(シュラブ)の拡大写真。

バラの品種を探している方でイングリッシュローズのなかから育ててみたいと希望される方が多くいらっしゃいます。それも他の樹形や分類のなかから広く探していこうというわけではなく、最初からイングリッシュローズありきの方

このような場合にはご本人の希望する特徴をもつイングリッシュローズをおススメしていくことになりますが、たとえば、

  • イングリッシュローズを育ててみたい
  • 初心者でも育てられる品種がいい
  • 強い香りがいい
  • (色は)赤系がいい

というあなたにお届けするのがイングリッシュローズ「ムンステッドウッド」です。あまり有名とは言えないかも知れませんが、剪定を除いてはほとんど手がかからない育てやすい品種です。しかも比類なき香り。ただ唯一最大の欠点は・・・。

本稿は優秀なイングリッシュローズ「ムンステッドウッド」の栽培実感です。

 

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ムンステッドウッド・品種データ

4基準データ

  • 花色 : 深紅(ブラック+パープル+レッドが混じり合う複合色)
  • 芳香 : ★★★★★☆ (強香)
  • 耐病性 : ★★★★☆☆ (うどん粉病は「やや強い」。黒星病も「やや強い」)
  • 樹形 : シュラブ・適宜剪定した場合にはこんもりとまとまる。or枝を伸ばした場合にはよく伸びて地を這う。

※4基準の考え方はこちらをご覧ください。

⇒ バラ初心者の品種の選び方。あなたに最適なバラを探す4基準

※こちらの記事ではムンステッドウッドをはじめとするシュラブ樹形の特徴等について紹介しています。樹形の特徴や魅力を知ることでより一層シュラブ樹形を楽しめるようになります。

⇒ シュラブ(S)ってなに?|樹形の特徴|シュラブ樹形がわかりづらい原因と多様な個性が集まる理由

 

補足基準データ

  • 花つき : 普通
  • 花もち : 良い
  • 花形 : ロゼット咲き
  • とげ : かなり多い
  • 耐寒性/耐暑性 : 夏に注意。下葉が黄変し落葉しやすい。
  • 花径:10cm
  • 樹勢:強い
  • 開花サイクル:四季咲き

 

イングリッシュローズとは?

それまで20世紀を席巻していたのは鮮やかで百花繚乱の花色を要し、しかも四季咲き性を備えたモダンローズ系統のバラでした。オールドローズ群に見られる優しい花色と花形、そして芳醇な香りの魅力がバラ界から半ば忘れ去られた存在に甘んじていたのは、ひとえにオールドローズに属する大部分の品種が四季咲き性を持ちえなかったからに他なりません。

一季咲きのオールドローズ品種では、もはやモダンローズの四季咲きに慣れたバラ愛好家達を満足させることができなくなっていたのです。

20世紀半ばに登場した英国の育種家デビット・オースチン氏の試みは、このオールドローズとモダンローズ双方の長所を融合せんとすることにありました。つまり、

  • オールドローズ特有の優しい花色と花形
  • オールドローズ特有の芳醇な香り
  • モダンローズ特有の四季咲き性
  • モダンローズ特有の多彩な花色

これらを兼ね備えた全く新しい品種を生み出すことオールドローズ群とモダンローズ群に見られる長所を融合する試み、それがイングリッシュローズ誕生のきっかけ(歴史)と理解されています

これら4つの特徴こそ今日ひとつの巨大な体系を成しているイングリッシュローズを紐解くキーワードでもあります

このような歴史の中で、2007年、さらに新しい特徴(=耐病性)を有するイングリッシュローズとしてムンステッドウッドは世に登場しました。

 

ムンステッドウッドの特徴

イングリッシュローズ「ムンステッド・ウッド」(シュラブ)の開花写真。赤黒紫が複雑に混じる複合色と濃厚なダマスク香が魅力のバラ。五感で楽しむ薔薇の専門店ローズフェスタ店長の花田昇崇が撮影。

 

イングリッシュローズはその品種のほとんどがシュラブ樹形に属し、それはムンステッドウッドも同様四季咲き性を有し、冬季を除く春~秋に繰り返して何度も開花します

 

花の魅力

イングリッシュローズ「ムンステッド・ウッド」(シュラブ)の開花写真。赤黒紫が複雑に混じる複合色と濃厚なダマスク香が魅力のバラ。大きく2輪咲き、背後につぼみが2個見える。花田昇崇が撮影。

ロゼット咲き(花芯が一つ)の美しい花形

 

荒々しい深紅の花色

中心部位は赤黒く、縁はパープルが足された色合い優しさを感じる色合いというよりは、むしろ男性的な力強さ。それがムンステッドウッドの花色の印象。

女性的な色合いを多く感じるイングリッシュローズのなかで2000年以降に多く登場するようになった男性的な色合いの一系統にムンステッドウッドも属します。

 

花もち

イングリッシュローズ「ムンステッド・ウッド」(シュラブ)の開花写真。

花びらが少し崩れてきているが、崩れ落ちる最後のそのときまで踏みとどまる

 

花もちは「普通」程度ですが花びらが散るまでロゼット咲きの花形が崩れることなくその形をとどめ、そのまま花びらが散っていくので見苦しさがありません

※「ロゼット咲き」をはじめ、バラにはさまざまな種類の花形があります。

⇒ 花びらと花のかたちで見る「花の表記」の読み歩き

気温や雨風の影響により左右しますが、目安としてはだいたい「3日」を基準としてその前後1~2日程度でしょうか。

色味は時間の経過によりやや退色するものの、開き始めから散り際まで最初の色味を“ほぼ”残している点が見事

 

花つき

イングリッシュローズ「ムンステッド・ウッド」(シュラブ)の開花写真。赤黒紫が複雑に混じる複合色と濃厚なダマスク香が魅力のバラ。大きく2輪咲き、つぼみも6個写っている。花田昇崇が撮影。

違う枝の先端に各1輪ずつ、合計2輪咲いている。各枝の脇に複数のつぼみが見える。このように房になって咲き、花つきが良い

 

花つきが良い部類に入ります。株の充実具合にもよりますが、ムンステッドウッドはしなやかな枝をよく伸ばすため、枝の分枝からも多くの花をつけます

つぼみは3~5輪ほどの房となり、順番に咲いていきます。春の一番花をすべて開花させると見事。

 

香り

非常に強いダマスク香で初めて対面した者はたじろぐほど。

強いダマスク香に軽く爽やかなフルーツの甘みがうっすらと香るのがムンステッドウッドの香り。デビットオースチン社の調香師によれば「ブルーベリーにすももが混ざったような香り」とも。

いずれにせよ強い芳香をもつ香りのバラであるのは間違いがなく、一度かげば脳髄をとろけさせられるほどの香りの魅力に押し倒されるやも知れません

 

とげの具合

イングリッシュローズ「ムンステッド・ウッド」(シュラブ)のとげの様子。株全体を大小のとげがびっしりと密集する姿を映した写真。花田昇崇が撮影。

凶悪なまでに荒々しい大小のとげが株全体にびっしりと密集する

 

ムンステッドウッド最大の欠点は、間違いなくとげの具合

凶悪なまでに荒々しいとげがあります大小さまざまなとげは株元から枝の先端にいたるまで株全体に密集し、素手での作業が全く危険なほど扱うには皮手袋が不可欠です

また、若い枝(新枝)は柔らかくムチのようにしなるので、風に揺れるしなやかな枝のとげが衣服に絡みつくなどの被害をもたらしやすく株まわりにも注意が必要

ムンステッドウッドを育てるには、このような荒くて猛々しいとげとの付き合いが宿命としてついてまわります

そのため「地植えであれば育てる場所を、鉢植えであれば置く場所を選ぶバラ」ということになろうかと思います。

 

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ムンステッドウッドの育てやすさ

耐病性

ムンステッドウッドの耐病性は総じて「強い」ため安心して育てることができます

 

うどん粉病への耐病性

うどん粉病に「やや強い」品種です。

施設栽培ではうどん粉病にかかることがあるものの、露地栽培ではそう多く発生しません

たとえ発生してもさほど広がらないため神経質になる必要はありません。放置でもよく、著しい病葉のみを切除するなどの対策で足ります。

 

黒星病への耐病性

黒星病に「強い」品種です。

春から梅雨シーズンまでにかけて黒星病にやられることはまずないため安心して育てられます梅雨シーズン以降には定期的な薬剤散布をしておくとなお安全ですが、全くしなくてもやられる可能性は少ないと思います

同じイングリッシュローズでの赤黒系の、例えば「ウィリアム・シェイクスピア2000」などと比べても黒星病への耐性は格段に増しています。

 

樹勢

樹勢はとても強い

樹勢が「とても強い」品種です。非常に旺盛に生長するシュラブなので成長速度の点では何らの心配もいりませんぐんぐんと生長します

 

鎮めることを怠ればあらわれる。荒ぶる神話の怪物

強すぎる樹勢のため、むしろコントロールすることに気を配ることがポイントです。

枝の剪定を浅めにとどめたり、そもそも剪定を行わなかった場合には樹勢の強さに任せて大いに伸びます。

地を這うようにまで伸びることも多々あります枝の先端についた赤く黒く紫の顔は、茂った鈍い色の葉としなる枝や凶悪なとげの体躯と相まって、さながら出雲神話にあらわれた深紅の大蛇「ヤマタノオロチ」の獰猛な姿を連想させます

定期的に鎮める(=剪定をすることが大切です。(後述)

 

栽培のコツ

イングリッシュローズ「ムンステッド・ウッド」(シュラブ)の葉の様子。花田昇崇が撮影。

葉の様子。照り葉ではない。水が切れると黄変しやすい。しかし樹勢にはあまり影響しない

 

水・肥料は多めが良い。薬剤散布はお好みで

耐病性・樹勢ともに強い品種のためさほど手がかかりません

地植えであれば冬に元肥を与えておけば、それだけであとはさほどに手をかける必要がありません。

鉢植えであれば施肥と水やりに注意します。旺盛な成長を補ってあげるのに大切なことは人間が施す肥料です。規定量を守り、それよりもやや多めの施肥がおススメです。水を好む品種なのでこれもやや多めが良いでしょう。水不足の環境だと葉が黄変しやすくなります。

薬剤散布は手間がかかるようなら不可欠ではありません。もしも何か手間暇をかけたいということであれば、化学農薬は避けて、うどん粉病の対策に特定農薬の「重層」などを希釈して散布するだけで充分な効果が見込めます。

 

剪定に注意が必要

ムンステッドウッドは剪定に注意が必要です。夏と冬の年2回の剪定はきっちりと行う必要があります

  • の剪定=枝を樹高の半分に切り戻す
  • の剪定=枝を樹高の3分の1~4分の1に大胆に切り戻す(3分の2以上は切って捨てるということ)

地植えの場合において冬や夏の剪定を浅めに済ますと、生長しすぎるためしなやかな枝が自らの重みで沈んで地を這うようになり、ヤマタノオロチと化します

他方で、鉢植えの場合において冬や夏の剪定を深めにしておけば、木立ち性のバラのように扱うこともできます

剪定を行う深浅(シンセン)によってこのような違いをだすことができます。

 

適する栽培方法

地植えであれば巨大で獰猛なシュラブへと育て上げることができます。

他方で、鉢植えであればコンパクトに仕立てることができます。

いずれを求めるかは、スペースの問題などのご自身の環境によって決めてください。

私のおススメは、ムンステッドウッドの強さを生かした地植えです。ヤマタノオロチ化までさせるかどうかは個人の好み次第ですが、いずれにしても見事なシュラブになることをお約束します

 

結論:育てやすいか?のまとめ

以上見てきたように、ムンステッドウッドは耐病性が強いうえに樹勢もとても強い品種なので、育てていくなかで失敗があったとしてもそれに負けずに乗り越えていける強さのある大変育てやすい品種です

バラの知識がゼロでも育てられるそんなイングリッシュローズだと思います。(ただし剪定を間違えれば大蛇化してしまうリスクがある点だけは忘れないように。)

 

 

その他のイングリッシュローズ

  • クリアーオレンジのイングリッシュローズ「レディ・エマ・ハミルトン」

⇒ 甘く爽やかな香りと強い耐病性。[レディエマハミルトン](ER)の栽培実感

  • イングリッシュローズが咲き誇るデビットオースチンのローズガーデン、園内の様子はこちら。

⇒ デビッド・オースチン・ローゼズ社のバラ園|大阪府泉南市

 

 

本稿のまとめ

さて、いかがだったでしょうか。

イングリッシュローズの「ムンステッドウッド」について紹介しました。

なお 初心者必見!4基準から導くおススメの『シュラブ』ローズ10選 では、ムンステッドウッド以外にも育てやすいシュラブ樹形の品種を紹介しています。まだご覧になられてない方は参考になると思います。

本稿が皆様のより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと一緒に暮らす生活を始めませんか?

 

写真・記事の無断掲載・転載を禁止します。

Sentence/All photos:花田昇崇

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