「バラのつぼみが干からびてる・・・」
開花目前だったバラのつぼみが一夜にして突然に黒く変色して、折れ曲がるようにしおれて枯れる症状があります。さながら吸血鬼・ドラキュラ伯爵に生気を吸い取られたかのように無残に黒変したつぼみやしおれた新鞘を目にすると、奪われた開花への期待は落胆の淵へと追いやられます。
本稿は、バラ界の吸血鬼こと「バラゾウムシ(通称)」がもたらす被害とこの害虫を駆除するコツを紹介します。
目次
バラゾウムシの被害
バラゾウムシってこんな虫

バラゾウムシを私の掌で撮影。体長が3mmほどでかなり小さい。
バラゾウムシは黒い甲虫類の一種で、新鞘がぐんぐんと生長している時期にどこからともなく飛来しバラに被害をもたらす害虫です。
正式には「クロケシツブチョッキリ」となにやら舌をかみそうな名前ですが、一般的には「バラゾウムシ」の名前で知られています。
アブラムシやハダニ、チュウレンジハバチの幼虫など他の害虫のようには大量にあらわれませんが、それでも数匹が群がることで大きな被害をもたらします。
※高温乾燥時に多発するバラの害虫のハダニの生態についてはこちら。
⇒ ハダニ|バラの害虫|葉の表面のかすり状紋様に要注意!それが寄生の印
※どこからともなく飛来し枝を傷つけ、葉を食害するチュウレンジハバチの親子についてはこちら。
⇒ チュウレンジハバチ|葉っぱが消えてなくなった?親子2世代によるダブル被害
頭部が動物のゾウの鼻のように見えることから「“ゾウ”ムシ」という名がついたそうです。
最も多くあらわれる時期は4月下旬~5月上旬ころですが、8月初旬ころまでやってきます。

目を凝らさないとわからないがこのなかに本稿の害虫が隠れている。見つかるだろうか?
どんな被害がある?バラゾウムシの被害

黒く変色したバラのつぼみ。ゾウムシが産卵することによって折れて、そして無残に黒変する。
バラゾウムシは以下の3か所に被害をもたらします。
- つぼみ:黒変させる→枯れさせる&産卵する
- 新鞘:先端部分をちりちりに乾燥させる→枯れさせる&産卵する
- 花首:先端付近の枝を噛み切る[産卵する]
つぼみや新鞘などがターゲットになり、数多く発生している場合には次々とつぼみがやられて「開花する花がなくなった!」という話もあります。このような場合には小さくない被害になります。
これだけでも大きな被害ですが、これよりも特に本稿で知っておいてもらいたいポイントは、枯れるだけにとどまらず産卵されているという点です。
下の写真はいずれも産卵されていると思われる被害跡です。

つぼみの被害

噛みちぎられた花首。流れでる樹液がまるでドラキュラ伯爵によって引き起こされる惨劇の跡のよう。
![バラゾウムシに噛み切られた花首付近の枝。[拡大写真]](https://i0.wp.com/rose-festa.com/wp-content/uploads/2019/04/9.%E3%83%90%E3%83%A9%E3%82%BE%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%82%B7%EF%BD%9C%E3%83%90%E3%83%A9%E7%95%8C%E3%81%AE%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%80%82%E6%96%B0%E9%9E%98%E3%82%84%E3%81%A4%E3%81%BC%E3%81%BF%E3%82%92%E9%BB%92%E5%A4%89%E3%81%95%E3%81%9B%E3%82%8B%E6%BC%86%E9%BB%92%E3%81%AE%E8%99%AB.%E8%8A%B1%E9%A6%96.jpg?resize=919%2C690&ssl=1)
柔らかい枝の被害跡。
被害箇所に産卵して仲間を増やす
―被害部が同時に産卵箇所である―
バラゾウムシによる被害が問題視されるのは上の写真でご覧いただいたようにバラのつぼみを開花不能にさせること、そしてその被害部位に卵を植え付けて産卵場所に変えてしまう点です。このことを知っておくことがなにより大切です。
血を吸われた者を吸血鬼にするように、バラゾウムシの被害を受けた箇所が新たな加害虫を生み出します。
そのため被害を受けたつぼみや新鞘などはそのまま放置していてはいけません。必ず集めて、袋に入れて口をしっかり閉じてゴミに出しましょう。
もしも見て見ぬふりをした場合にはやがて地面に落ちてわからなくなります。地上に落ちたつぼみなどのなかで育った幼虫はやがて土中にもぐり、翌年度にあなたのバラに更なる被害をもたらすことになるかもしれません。
―被害部はなるべく早く集める。そして必ず捨てる―
これを実践しましょう。

葉裏で身を隠す。

葉と葉の間に潜む。
バラゾウムシ(成虫)を退治する
「捕殺」と「化学農薬による駆除」の2つの手段がありますが、おススメは捕殺です。
捕殺のコツ|テデトール
この害虫は危険を察知すると下に落下して逃げます。黒い虫なので土とまじると見つけることが困難です。地上に落下させないようにしつつ空中で受け止めるのが捕殺のコツです。
バラゾウムシは空を飛んで逃げないこともありこの方法が一般的です。
やり方は簡単で、下の写真のようにバラゾウムシの下で掌をあてておくだけで大丈夫です。[心配であれば新聞紙や鉢皿などで受け止めましょう。ただし、構えている途中で枝に当たらないように。]

このように真下に掌を構える。危険を察知すると下に落下して身をくらませるので、これを防ぐために真下に掌をあてている。
枝を少し揺らすとぽとりと掌に落ちてきます。このように。
![バラの害虫「バラゾウムシ[クロケシツブチョッキリ]を掌の上に乗せて拡大して撮影。触手や手足までよくわかる写真。](https://i0.wp.com/rose-festa.com/wp-content/uploads/2019/04/1.%E3%83%90%E3%83%A9%E3%82%BE%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%82%B7%EF%BD%9C%E3%83%90%E3%83%A9%E7%95%8C%E3%81%AE%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%80%82%E6%96%B0%E9%9E%98%E3%82%84%E3%81%A4%E3%81%BC%E3%81%BF%E3%82%92%E9%BB%92%E5%A4%89%E3%81%95%E3%81%9B%E3%82%8B%E6%BC%86%E9%BB%92%E3%81%AE%E8%99%AB.%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%83%E3%83%81.13%E5%85%BC%E7%94%A8.jpg?resize=919%2C690&ssl=1)
捕まえるのはとても簡単。特にすばやいということもない。
この虫の大きさを確認してもらう意味も兼ねて捕殺の様子を掲載しておきます。捕殺は指一本で行えるので非常に簡単です。
少し残酷とも思えますが薬剤に頼らない手段[テデトール]はこのようにします。

指で圧死させた死骸
とにもかくにも見つけ次第、産卵されるよりも前に捕殺するのが大事です。
その他の捕殺手段
テデトール以外に薬剤に頼らず道具を使って捕殺する方法があります。
洗面器やビニール傘などを使った方法です。これらの道具の特徴や適する場面について調べてみました。詳しくはこちらをご覧ください。
化学農薬で駆除する
化学農薬に弱いため、わりとよく効きます。
- スミチオン乳剤 : 水で1000倍に希釈して噴霧器で撒く
スミチオンはホームセンターなどで入手できます。
化学農薬で退治することは簡単ですが、日頃からバラをよく観察して、見つけた場合には直接捕殺するのが人や環境に優しい付き合い方です。
1000倍液の薬剤を簡単に作って散布する方法は [保存版]500mlペットボトルで超簡単にバラの消毒を行う方法 をご覧ください。
もしも薬剤がない場合にはこちらをご利用ください。
ただ、あくまでもおススメは捕殺です。スミチオンのチカラに頼るにしても使用回数は最小限度にとどめ抑制的であるのが好ましいと思います。
本稿のまとめ
本稿では、バラゾウムシの姿や被害の様子、捕殺のコツなどを紹介してきました。
本稿がより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活をはじめませんか?
写真・記事の無断掲載・転載を禁止します。
バラの管理/Sentence/All photos:花田昇崇

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