バラの中に包まれたかのような体験(「バラ体験」)をするにはやはりバラ園を訪れてみましょう。
国内には大小さまざまなバラ園が各地にありますが、今回ご紹介するのはイングリッシュローズで名高い「デビッド・オースチン・ローゼズ社のバラ園」です。
本稿は大阪府泉南市のデビッド・オースチンのバラ園を訪れて感じたことなどをお届けします。
目次
デビット・オースチンのイングリッシュ・ローズ
イングリッシュローズはデビットオースチン社の発表するバラの総称
イングリッシュローズというのは、イギリスのバラ育種家のデビッド・C・H・オースチン(=オースティン)氏と同社が作出してきた数多くの品種(=種類)のバラの総称です。
最初の品種が発表された1961年から現在まで約50年あまり、2000年以上のバラの歴史から見れば決して長くはない時間のなかで、美しい色彩と花形、そして魅惑の香りで短期間のうちに一躍世界中で確固たる地位を築いたのがイングリッシュローズです。誰もが認める魅力あるバラをコンスタントに世に送り出してきたからこそ、このような短期間での普及が可能だったのでしょうね。
このイングリッシュローズの様々な品種で埋め尽くされた同社のバラ園は、シーズン(春5月頃・秋10月頃)ともなれば、よく手入れされた園内のあちこちからミルラ香をはじめとする魅惑の香りが漂い、時がたつのも忘れるような心地に包まれます。
ではさっそく訪れていきましょう。
デビッド・オースチン・ローゼズ社、公式の直営バラ園
全国にイングリッシュローズを扱うバラ園は数多くありますが、大阪府の泉南市に位置するこのバラ園の特徴は、やはりデビッド・オースチン・ローゼズ社が直営する公式ガーデンであるということ。直営のバラ園はここ泉南市と同社の本国イギリスの世界で2か所にしかないそうです。
(泉南市は関西国際空港(の敷地の一部)を含む市町村で、大阪の南側に所在し、大阪市内からよりも隣県の和歌山市から近い。)
イングリッシュローズが咲き誇るバラ園で「バラ体験」
まずは園内の様子をご紹介します。
園内には7500㎡あるという広大な敷地に様々な品種がそれぞれ密集して植栽されており、見応えがバツグン。
ダマスク系の強香の花、「ムンステッド・ウッド」が密集しているエリアなどは香りでクラクラきました。ちょっと、「誰もいなければここで目を閉じて横になりたいな」と一瞬本気で思ったりするのですが、そこはグッとこらえます。
3000株植えているとの公式発表ですが、個人的には取材時(=2016年)よりも現在はさらに増えている気がします。
香りは朝日を受ける前後が一番強い
これらの写真を撮影した時刻は午後だったのですが、じつは一日のうちでバラの香りが最も強く放出される時間帯は「朝日を浴びる前後」です。早朝です。
ご存知ない方も多かろうと思いますが、バラは一日中、一定の濃度で香りを放出しているわけではないのです。(これらに加えて、品種自体の特性や栽培環境により香りの強弱・長短が異なります。)正午以降の昼間だと、バラは香りを放出するよりも光合成に忙しくなります。
五感のうち嗅覚で、より一層バラを楽しむためには早めの時間帯に訪れるのがおススメです。
午後になれば香りが弱まり、「香り?う~ん、よくわからない」「これ芳香種なの?」といったケースが増えます。せっかくのバラ体験の機会の効果が半減するのはもったいないですね。
園内のイングリッシュローズの一部を紹介
テス・オブ・ザ・ダーバービルズ(Tess of the d’Uurbervilles)
テス・オブ・ザ・ダーバービルズは、
- カップ咲きからロゼット咲きに変化するさまが美しい。
- 花径は8㎝前後。強香。
- 小さな棘が無数にあり、扱う場合には皮手袋が必須。
- 四季咲き性:強い
- 花名の由来は作家トマス・ハーディーの作品より。
などの特徴があります。
クイーン・オブ・スウェーデン(Queen of Sweden)
クィーン・オブ・スウェーデンは、
- 花形:カップ状のカップ咲き。そこからロゼット咲きへ
- 花径:8㎝前後
- 香り:微香(ミルラ)
- 四季咲き性:やや弱い
- 1枝から数輪の房になって咲く。棘は少なめ。
- 花名の由来は、イギリスとスウェーデンの通商条約350周年を記念して。
などの特徴があります。
本品種は私も育てています。実際に育てた印象・感想についてはこちら。
⇒ ベランダでも育てられるイングリッシュローズ[クィーン・オブ・スウェーデン]の栽培実感
ガートルード・ジェキル(Gertrde Jekyll)
ガートルード・ジェキルは、
- 花形:ロゼット咲き
- 花径:10㎝前後
- 強香
- 四季咲き性:やや弱い(春はよく咲くが秋はほどほど。)
- 花名の由来は、20世紀初頭のイギリスの女性園芸家の名にちなむ。
などの特徴があります。
ザ・ダーク・レディ(The Dark Lady)
ザ・ダーク・レディは、
- 花形:ロゼット咲き
- 香り:強
- 四季咲き性:強い(完全四季咲き)
- 花名の由来は、シェイクスピアの作品「ソネット集」の登場人物の名にちなむ。
などの特徴があります。
プリンセス・アレキサンドラ・オブ・ケント(Princess Arexandra of Kent)
プリンセス・アレキサンドラ・オブ・ケントは、
- 花形:カップ咲きからロゼット咲きへと変化する
- 花径:10㎝前後
- 香り:強い(ティー+フルーツ)
- 四季咲き性:強い(完全四季咲き)
- 房になって咲く(写真の右上側を参照)。ややうつむき気味に下に咲く(写真の中央や左下付近を参照)
- 花名の由来は、エリザベス2世のいとこの名にちなむ。
などの特徴があります。
ゴールデン・セレブレーション(Golden Celebration)
ゴールデン・セレブレーションは、
- 花形:カップ咲き
- 花径:12㎝前後
- 香り:強い
- 四季咲き性:弱い(返り咲き)
- 花名の由来は、エリザベス2世の在位50周年を記念して。
などの特徴があります。
本品種は岡山県岡山市西部の RSKバラ園 でも見ることができます。
これらはほんの一部です。この他にも様々な品種が整然と植えられており、園内を一巡したあとには、読者のあなたもきっとイングリッシュローズの魅力の虜になっているに違いありません。
さて、園内で鑑賞できる品種の紹介はひとまずここまでとします。
上記掲載品種の他のイングリッシュローズを実際に育てています。興味がある方はこちらもどうぞ。
※赤紫のイングリッシュローズ「ムンステッド・ウッド」
⇒ 神話にみた雄々しく猛る深紅の大蛇。イングリッシュローズ[ムンステッドウッド]の栽培実感
※クリアーオレンジのイングリッシュローズ「レディ・エマ・ハミルトン」
⇒ 甘く爽やかな香りと強い耐病性。[レディエマハミルトン](ER)の栽培実感
バラ園の入園料が無料
このバラ園は、なんといっても入園料フリー(無料)なのも魅力。年間を通して無料です。民間企業が経営しているバラ園はやはり基本的には有料であるのが通常なのでこれは嬉しいですよね。
イングリッシュローズのバラ苗の即売所
バラ園と道1本を隔てた隣地に同社のバラ苗の即売所とバラ柄グッズの販売所が設けられています。園内を見てまわりイングリッシュローズの魅力に夢中になってしまった方はこちらで苗を買うことができます。
本稿のまとめ
さて、いかがだったでしょうか。
本稿ではデビッド・オースチン・ローゼズ社のバラ園とイングリッシュローズについて紹介してきました。
本稿が皆様のより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活を始めませんか?
写真・記事の無断掲載・転載を禁止します。
バラの栽培:デビットオースチンローゼズさん
Sentence/All photos:花田昇崇
参考情報:アクセス・交通の便
同所は泉南市の農業公園「花咲ファーム」の一角にあります。
- 車の場合
できればマイカーで訪れるのがベストです。
<道順>
大阪と和歌山を結ぶ阪和自動車道(高速道)の「泉南IC」を降ります。
料金所を降りた先にある信号を左折し、そのすぐ次の信号を右折します。
右折直後に阪和自動車道の高架下をくぐり、そのまま道なりに進むと目的地に着きます。
泉南ICより、約5分前後。
数十台とめられる無料の駐車場がガーデン付近にあり。
- 新幹線・電車の場合
マイカーに比べると、少し大変です。
<道順>
JR新大阪駅を起点に電車で訪れることを考える場合には、まず和歌山市まで「特急黒潮」や「紀州路快速」で行かれるのが良いかも知れません。
(遠方からの方は和歌山市内で一泊することをおススメします。バラの観賞は午前中が良いからです。)
JR和歌山駅から大阪方面に向けて北上し、阪和線の「和泉鳥取」で下車します。
ただし、同所まで片道で3㎞以上あり、また小高い山の上にあるため徒歩には向きません。
和泉鳥取周辺からタクシー又はバスを利用するのをおススメします。
- 関西国際空港経由の場合
かなり距離がありますので、タクシー又はバスを利用することになります。