畑の管理にでていた数か月前に「バラゾウムシをビニール傘で捕まえるやり方はどう思いますか?」と質問されました。一瞬何のことかと思いましたがバラゾウムシの捕殺手段のことのようです。
そこで、バラゾウムシが暗躍しはじめる4月に、いくつか言われているバラゾウムシの捕殺手段の調査をしてみました。
本稿では、バラゾウムシの捕殺手段について、それぞれの道具のメリット・デメリットについて調査・検討した上で管理人の感想・考察を紹介します。
目次
検証|さまざまなバラゾウムシの捕殺手段を比較検討しました
- 素手
- 洗面器[湯桶]
- ビニール傘
- 洗面器
- お皿
今回紹介するのは、古くから行われてきた「素手」、そして「洗面器[湯桶]」や「ビニール傘」による方法、さらに管理人が提案する「お皿」を使った方法です。
これらそれぞれの特徴や長短について考察しました。
本稿をご覧いただくに先立ち、バラの害虫バラゾウムシについてご存知ない方は バラゾウムシ|バラ界のドラキュラ。新鞘やつぼみを黒変させる漆黒の虫 を先に確認いただくと本稿の内容がより実感しやすいものになるかと思います。
比較検証1|素手[テデトール]
素手でそのままキャッチする方法。[通称「テデトール」手法]
説明
手でそのまま捕まえる方法です。
特別な準備・道具が一切不要なのでお手軽さが特徴です。
メリット|迅速性と株にあたりにくい
バラゾウムシは逃げ足が速く、小さな姿ですぐに姿をくらますのが特徴の害虫です。
見つけ次第すぐに行動に移せることから「道具を用意しているうちにバラゾウムシに逃げられた。」ということが少ないのがメリットです。
また、テデトールはバラゾウムシが潜むつぼみや葉、枝の隙間にも手であればすっと入っていけるのもメリットです。[→株に接触してゾウムシを落下・逃走させにくい。]
デメリット|忌避感と低い捕殺率
テデトール最大のデメリットは、たとえ手袋をしていてもやはり害虫を素手で捕まえるというそれ自体の忌避感でしょうか。「直接はちょっと…。」という声はやはり多いです。
また、手のひらの表面積は道具を使った場合と比べて半分以下のため、落下ポイントが少しでもズレれてしまいキャッチしそこなえばそのまま逃走を許してしまうのもデメリットです。
慣れていなければ捕獲できる確率が道具を使った場合よりも低いでしょう。
テデトールのまとめ|おススメ度:△
対バラゾウムシの観点からのテデトールの長短をまとめると、
- 道具を用意せずに行える手軽さと迅速性[メリット]
- 手が入る隙間さえあれば株の内側にいても捕まえにいける[メリット]
- 素手は抵抗感がある[デメリット]
- キャッチする面積の狭いてのひらで受けそこなうと逃げられる[デメリット]
などと思われます。
手軽さがよい反面、直接に、かつ手のひらの上で確実にキャッチしないといけないことから少し難易度が高いと言え、他の手段とも比較すると実用性の観点でのおススメ度は「△」といったところでしょうか。
[プロである管理人は日常はほとんどこれで済ませています]
比較検証2|洗面器[湯桶]
説明
100円ショップで買った洗面器[湯桶]を使ってキャッチする方法です。
どのご家庭でも1個は置いていることが多いアイテムで、新たに揃える必要は特にありません。
洗面器の特徴は、横幅の広さと底の深さで、一度キャッチするとすぐにそこから逃げられることが比較的少ないと思います。
[※ただし、長く置いておくのはNG。やがて這い出ます。]
今回は横幅26.5cm、高さ[深さ]9cmの一般的なサイズを使用しました。
メリット|表面積が広く、キャッチしやすい
テデトールと比べ、洗面器はキャッチする表面積がとても広く、落下してくる害虫を逃がしにくいのがメリットです。
バラゾウムシが外側の枝にいた場合には洗面器でキャッチしやすいようです。
デメリット|高さが仇になる
洗面器は高さ[深さ]があり、このため枝の隙間に指し込むのがやや難しい場面が見られます。
枝の間に指し込もうとすると、表面積と高さの両方があるので葉や枝に接触しやすく、その振動の瞬間に姿をくらましたバラゾウムシもいました。
また、バラゾウムシが株の中心の枝にいた場合にも洗面器は使えません。入っていけないのです。
このあたりはテデトールと正反対と言えそうです。
洗面器のまとめ|おススメ度:△
対バラゾウムシの観点から洗面器の長短をまとめると、
- 表面積が広く、キャッチしやすい[メリット]
- 素手で触らなくてすむ[メリット]
- 葉や枝に接触しやすく逃がしやすい[デメリット]
- バラゾウムシが株の中心付近にいた場合には使いにくい[デメリット]
などと思われます。
害虫に直接手で触れずにすみ、またキャッチしやすいので比較的取り組みやすい方法と思われます。一方で、葉や枝に接触しやすく株の中心付近のバラゾウムシへの使いにくさもありました。
外側の枝にいるバラゾウムシには実用性が高い方法ですが、内側の枝にいるバラゾウムシにはあまり有効ではなさそうです。
実用性の観点でのおススメ度は「△」といったところでしょうか。
比較検証3|ビニール傘
説明
ビニール傘を広げ、これを逆さにして落下するバラゾウムシをキャッチするという方法です。
今回の調査に使ったビニール傘は成人男性用としてはかなり小さめのサイズ[72cm]。
広げた大きさは80~81cmくらい。
メリット|網羅的に一網打尽
先ほどの洗面器と比べた場合、広げたこのビニール傘は表面積が約10倍ととても広く、落下してきたバラゾウムシを単純に言って10倍キャッチしやすいというのが最大の特徴です。
バラの直下に、逆さにしたビニール傘を構えて柄の部分で枝を叩くように揺すれば、狙ったバラゾウムシ以外も一網打尽に捕まえることができます。
ビニール傘の手法は気づいていないバラゾウムシも網羅的にまとめて捕殺できるのがメリットです。
[※ただし、そうはいってもビニール傘の面積以外に落ちたらアウトなので過信は禁物]
また、この手法は広範にキャッチできる特性から目線の高さ以上のつるバラに威力を発揮すると思われます。
手が届かない高さにいるバラゾウムシを目視するのは困難で、それを捕殺できるのはこの手段ならでは。
[この害虫の撮影ショットは真上・横から撮影したものばかりで、真下から上空のバラゾウムシを見上げながら撮影しているショットはほとんどありません。つまり上空のバラゾウムシを見つけるのは難しいわけです。(目線の位置のバラゾウムシを強いて見上げながら撮影すれば撮れますが。)]
なお、目線の高さの位置のつるバラでもこの方法は使えます。
[ただし、目線の位置のつるバラならビニール傘よりも洗面器や後述のお皿の方が使いやすい。]
デメリット1|株の下に傘を差し込めるスペースがなければ使いにくい
ご紹介した通り、調査で使っているこのビニール傘は小さめのサイズです。成人男性であれば物足りない大きさのものです。
とはいえ、これでも木立ち性のバラの用途に使うには大きすぎるのではないかと思われます。
一般的にバラは60cm程度は隣と距離をとって植えることが推奨されています。ところがこの小さな傘でも広げると80cmあるわけです。
そこで、株と株の間にビニール傘を置いてみました。するとこのようになりました。
枝の下に差し込むようにビニール傘を置いています。
すると、やはりと言うべきか80cmあるので他の株に接触し、隣の枝葉を圧迫してしまいます。
庭植えの方などは、60cmあけずに植えていたり、バラの間にコンパニオンプランツなどを植えているケースも多いと思われ、そうなるとさらに難しいかもしれません。
デメリットは、長所の裏返しになりますが、大きすぎるということになろうかと思われます。
枝と枝の間に差し込むのも難しいです。
また、洗面器以上に株の中心にいるバラゾウムシの捕獲は困難です。
この調査で使っているバラは木立ち性|ハイブリッド・ティー品種の「イヴ・ピアッツェ」ですが、イヴ・ピアッツェ以外の木立ち性[ブッシュ]のバラでも同じように難しいと思われます。
そうなると同じ木立ち性の「フロリバンダ」もそうですし、これらよりも背丈が小さな「ミニアチュア」ではなお困難でしょう。
この手段は地上部が近い木立ち性などの地植えのバラでは不向きと言えそうです。
株の下にビニール傘を指し込むためのスペースが必要だからです。
[枝葉にあたってしまえばバラゾウムシは逃げます。]
このようなことから、ビニール傘を使った手法は、つるバラや一部の大型化するシュラブでは威力を発揮するものの、地植えした木立性のバラなどではそもそも不向きであることがわかります。
デメリット2|網羅性は仇になりうる。人体に有毒な害虫の落下リスク
バラゾウムシを網羅的に一網打尽にしやすいビニール傘の手法ですが、じつはこの手法には危険も潜んでいます。
バラの害虫はバラゾウムシのように人体に無害な害虫ばかりではないことに注意が必要です。
例えばケムシなどがそれで目につかないバラの枝にとりついていることがよくあります。
ケムシの存在を確認することなく枝を揺すった場合、構えているビニール傘にたまたま落下してくれれば儲けものですが、必ずしもそうとは限りません。頭や首筋、背中にぽとりと落ちてくる危険性を頭の片隅にいれておきましょう。
ビニール傘のまとめ|実用性:高い位置のつるバラは◎
以上より、対バラゾウムシの観点からビニール傘の長短をまとめると、
- 表面積がとても広く狙ったバラゾウムシをキャッチしやすい[メリット]
- 狙っていないバラゾウムシも網羅的に捕殺できる[メリット]
- 目線よりも遥かに高い位置のつるバラについた害虫全般[バラゾウムシに限られない。ケムシなども。]をキャッチできる[メリット]
- スタンダード仕立てにも向く[メリット]
- 目線の位置のつるバラなら洗面器やお皿の方が適している[デメリット]
- 地植えした木立ち性のバラでは使いにくい[デメリット]
- 地植えした大型化しないシュラブでも使いにくい[デメリット]
- 鉢植えのバラにも使いにくい[デメリット]
- ふいに人体に有害な害虫が落下する危険[デメリット]
これまで対処しづらかった非常に高い位置の害虫を狙える点や広範囲の害虫をキャッチできる網羅性に優れた反面、庭植えや鉢植えのバラの多くがビニール傘と同じくらいの背丈やそれよりも背の低い木立ち性であることを踏まえると、ビニール傘を使う方法は限定的な場面で使う手法と言えそうです。
高い位置のつるバラの実用性は◎と思いますが、低い位置のつるバラ[実用性△]や木立ち性のバラなどでの実用性は×といったところでしょうか。
つるバラや大型化するシュラブに限定した用途なら効果を発揮する手法というのが管理人の感想です。[※人体に有害な害虫が落ちてくることもあるので注意。]
80cmのこのビニール傘は、傘としての用途では小さなサイズながら、それでもバラゾウムシを捕獲するためのバラの栽培道具としては大きすぎて使えるシーンが限られるということのようです。
比較検証4|食器皿又は100均の紙の皿
本稿の冒頭で質問を受けた管理人が提案したおススメ手法がお皿を使った方法です。
今回は100均で見つけましたが、ご自宅で使い古したお皿で構いません。陶器製ではなくプラスチック製のお皿や紙のお皿だと落下時にも安心です。
縦×横26cmの一般的なサイズのお皿です。
メリット|木立ち性のバラ全般に使える
表面積の広さだけで言うと洗面器に近い使い方になりますが、お皿に有って洗面器に無い長所があります。それは高さ[深さ]がないことです。
バラゾウムシを捕獲する道具としては、高さがないのはデメリットではなく長所です。
高さがないので葉と葉の間や株の中心にも枝に接触することなく入っていくことができます。
洗面器と同じくらいの表面積のためキャッチについても問題ありません。バラゾウムシは落下した場合にさほどバウンドすることがないので必要以上の深さは不要かと思います。
デメリット|
お皿を使った手法にデメリットは特にありません。
高い位置のつるバラでは使いにくいといった程度でしょうか。
お皿のまとめ|実用性:◎
対バラゾウムシの観点からお皿の長短をまとめると、
- 洗面器と同じ程度に表面積が広く、キャッチしそこなうことが少ない[メリット]
- 洗面器ほど高さ[深さ]がないので、枝と枝の間にすっと入っていける[メリット]
- 高さがないので株の中心付近にいるバラゾウムシでもキャッチできる[メリット]
- プラスチック製だと洗面器よりも軽く、かつ持ちやすい[メリット]
- 木立ち性のバラ全般、目線の位置までの高さのつるバラで使いやすい[メリット]
- 目線以上の高さのつるバラでは使いにくい[デメリット]
などと思われます。
お皿の場合には、洗面器やビニール傘では届かなかった株の中心部のバラゾウムシに届き、目線の位置の高さまでのバラには全般的に使える手法と思います。
考察|比較検討の結果
それぞれの手法に一長一短があることがわかります。
比較検討したところ、どの手法が良い・悪いではなくて、場所やシーン[場面]に応じて使い分けるのが良さそうです。
おススメの使い方は、
- 急いで捕殺したいなど緊急性がある場面 : テデトール
- 木立ち性のバラ全般 : お皿、洗面器
- 背の低いシュラブ : お皿、洗面器
- 背の高いシュラブ : ビニール傘
- 目線の位置までのつるバラ : お皿、洗面器
- 目線の高さ以上のつるバラ : ビニール傘
このように分けるとそれぞれの道具が使いやすいと思いました。
使う道具のポイント
使う道具の色味は、バラゾウムシが黒色の虫であることから、それに対する白色の道具にすると見つけやすくなって便利です。
今回使用した洗面器やビニール傘は白色ではありませんでしたが、おススメは白色の道具です。
今回使用したビニール傘は80cmのサイズでしたが、特徴である網羅性をより発揮するためにはサイズが大きければ大きいほど長所をいかせます。
本稿のまとめ
さて、いかがだったでしょうか。
本稿ではいくつかあるバラゾウムシの捕殺手段について、管理人が実際に1つずつ試しながら比較検討してきました。それぞれの道具の長所と短所を把握して、場所やシーンにあった道具を使って効果的にバラゾウムシを駆除していきましょう。
本稿がより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活をはじめませんか?
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バラの管理/Sentence/All photos:花田昇崇