バラ特有の栽培知識が充分でない方におススメの品種があります。つるバラとして用いられるローズ色の「アンジェラ」です。
アンジェラは、うどんこ病や黒星病などに強い耐性があり、旺盛な樹勢も相まって、地植えしてしまえばあとは放置していてもやがて見事な花を咲かせるようになる手間いらずの大変優れたバラです。他方、鉢植えなら水の管理と最小限の施肥だけで大丈夫。半日陰でも育ちます。
本稿は、誰でも育てられてファーストローズに最適な「超・初心者向け」のつるバラ「アンジェラ」の栽培実感です。
目次
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品種の情報
4基準データ
- 花色 : ローズ
- 芳香 : ☆☆☆☆☆☆ [無香~微香]
- 耐病性 : ★★★★★☆ [うどんこ病「普通よりも強い」|黒星病「最強」]
- 樹形 : 木立ち性・フロリパンダ
※4基準とはバラ入門者の方がはじめてのバラを選ぶうえでの指標となる4つの判断基準です。さまざまにある選択要素のなかから最も重要な4つの基準を紹介しています。
詳しくはこちらをご覧ください。
⇒ バラ初心者の品種の選び方。あなたに最適なバラを探す4基準
補足基準データ
- 花つき : 抜群に良い
- 花もち : やや悪い
- 花形 : 半八重・カップ咲き
- とげ : 鋭さがあるがとげは少ない
- 耐寒性/耐暑性 : 強い[冬:強い/夏:強い]
- 花径 : 6cm(中輪)
- 樹勢 : 極めて強い
- 開花サイクル : [返り咲き~]四季咲き
- 作出 : 1984年.ドイツ[コルデス]
- 原名 : Angela[アンゲラ]
- 備考 : 1982年ADR受賞
※「カップ咲き」をはじめ、バラの花形にはさまざまなものがあります。
⇒ 花びらと花のかたちで見る「花の表記」の読み歩き
※補足データは4基準に準じる2次的な基準です。4基準ほど育てやすさに直結するものではありませんが個々の花の個性を形づくる情報です。
育てやすさ|栽培難易度
[超・初心者向け]
これ以上ないほど育てやすいバラです。バラを育てる知識が0[ゼロ]の状態でも安心してはじめることができる品種です。
外観上の特徴
アンジェラは四季咲きの品種で、株が充実するまでは秋の花つきがイマイチなものの[返り咲き]、株が充実するとともに秋にも多くの花を咲かせるようになります。
花色
ご覧のような濃いローズの花色。
半八重咲きのため花びらの枚数が少なく1輪の豪華さを楽しむ品種ではないものの、株全体に花を咲かせる品種なので全体として見た場合の豪華さは比類ない豪華さをほこります。
花つき
大きな特徴が抜群の花つきの良さです。
株が充実するとともに一層の花芽をつけるようになります。
[順調に株を生育させていくことで年々花付きが良くなる、といったイメージ]
ただし、つるバラとして扱うと春以降の花つきは返り咲き程度で春ほどの見事さには及びません。
花もち
花もちはやや悪い部類です。
もっとも、特に気になるということはありません。抜群の花つきが花もちの悪さを補ってあまりあるからです。
なお、ステム[枝]が短いので切り花には向きません。枝に咲かせたまま観賞します。
香り
「無香」です。
もしくは、せいぜい「微香」でしょうか。「フルーツ香」と評価する人もいるようですが、管理人にはまったくわからないほどで、ほぼないといってよいレベルだと感じています。
香りさえあれば4基準からも最高峰の評価になりえた点が残念でならず、香りがないことだけがアンジェラ唯一の欠点です。
葉の様子
ワックスがはいった照り葉です。
育てやすさについての私の実感
耐病性
バラはさまざまな病気にかかり、品種を問わず最も頻繁にかかるのが「うどんこ病」と「黒星病」の2つの病気で、これらは「バラの2大病」と呼ばれています。
この2大病の耐病性が「かなり強い」品種です。
詳細を見ていきます。
うどんこ病への耐性
うどんこ病への抵抗力が「普通よりも強い」品種です。
[※表記の参考:普通 < 普通よりも強い < 強い < かなり強い < 最強 ]
よく「アンジェラは病気に強い」などと評価されていますが、うどんこ病にはしばしばかかるケースが見受けられます。[普通よりも強い程度]
もっとも、極めて旺盛な樹勢の強さがある[後述]のでうどんこ病に感染しても何ら問題なく生長を続けます。もしも感染部位に広がりを見せたとしても、その部分のみ摘葉したり剪定ばさみで切り落とすなりすればそれで足ります。
うどんこ病のための化学農薬は特に不要です。
ただし、注意点は、株自体はやられないものの、花にまで広がるとその分だけ[花を切除してしまうので]花数が減ります。
そこで、重層や 食酢はうどんこ病・ハダニ・窒素過多の解消に効能があります を参考に、これらの特定防除資材[特定農薬]を使ってその都度うどんこ病菌を洗い落とすのがおススメです。
うどんこ病の対策はこれで充分だと思います。
黒星病への耐性
黒星病への抵抗力は「最強」レベルの品種です。
[※表記の参考:普通 < 普通よりも強い< 強い < かなり強い < 最強 ]
最強と評価するように、黒星病でやられることはありません。
黒星病に対して何らの対策を講じる必要もありません。
抵抗力まとめ
ご覧のように2大病のうち、うどんこ病へは「普通よりも強い」程度であるものの、黒星病への「最強」の耐性を備えた品種です。
2大病の耐病性は両者の間をとって「かなり強い」と評価します。
樹勢
「極めて強い」樹勢です。
半日陰の環境で育てているアンジェラも余裕で3mを越えてくるほど大きく生長します。
若年株はシュートも旺盛ですが、数年たつとあまり発生しなくなる印象があります。
とげの具合
若い枝は鋭く目立つとげがそれなりにあります。革手袋をつけましょう。
成株になると徐々に小さなとげは少なくなります。ただ、こちらも革手袋は必要です。
栽培のコツ
地植えすればあとは放置でもOK
地植えしましょう。
植え付け時に元肥をしておけば、あとは人の手助けがなくても自ら大きく生長していきます。
病気[うどんこ病]の防除が難しいなら、それはさほど意識しなくても大丈夫です。アンジェラの強健さは病気に負けません。
地植えさえしてしまえば、あとは日々の管理を怠ったとしても、やがて多くの花を咲かせるようになるでしょう。
「樹」になるので植える場所に注意する
ガッシリとした太い幹[樹]に育ちます。また、枝も3メートルほど伸ばします。
あらかじめ誘引の目星をつけてから植える場所を決めるのがおススメです。
[つるバラとして扱います。]
北向きの半日陰でも育つ品種
完全な半日陰環境でも育つ品種です。[後掲写真]
もしも日向に地植えされる場合には半日陰環境以上に大きく生長するので植え付け段階で横とのスペースを充分に確保するようにされてください。
フロリパンダのように咲かせる?つるバラのように咲かせる?
日本でつるバラで利用されることが多いこのバラは、作出された本国のドイツでは「木立ち性・フロリパンダ」として登録されました。
日本でもフロリパンダのように育てることが可能で、この場合には旺盛な樹勢を抑えつけるように強剪定をかけながら育てます。夏の終わりに強剪定を行うと秋には一般的なフロリパンダのように咲くということですが、これはおススメしません。
極めて旺盛な樹勢のアンジェラは自ら大きく生長していこうとする意思の強いバラです。アンジェラの意思を尊重しておもむくままにつるバラとして扱うのがよいと考えています。そうすることで本稿で掲載している写真のように多くの枝に花を咲かせます。
なお、アンジェラとは英語の「エンジェル(天使)」の意味で女性につけられる名前だそうです。[ドイツでは「アンゲラ」と読みます。]
華やかな女性が大きく羽ばたくように咲く、そんなイメージを感じるバラです。
おススメの仕立て方
つるバラとしての利用をお考えなら、大型のアーチやフェンスに誘引して仕立てることをおススメします。
オベリスクはあまり向かない気がします。アンジェラの成長力がより勝るからです。
男性の腕のように枝がガッシリしているので誘引時にはくれぐれもお気を付けを。
適する栽培方法
以上見てきたように、このバラの真価を発揮させるには地植え一択かと思われます。
鉢植えはやめておくのがよいでしょう。[極めて大きな鉢は除く。]
結論:育てやすいか?のまとめ
これ以上ないほど育てやすいバラです。[超・初心者向き]
- バラの栽培知識が「ほとんどない」または「全くない」未経験者
- バラにほとんど時間をかけられない
これらのような方に最適な品種と言えるでしょう。
[手がかかるバラをたくさん見てきた経験者からすると逆に物足りなさを感じる品種です。それくらい総合的に極めて強いバラです。]
なお、万一、このバラで失敗することがあれば、バラの育て方の基本に今一度立ち戻って確認する必要があるかもしれません。その場合にはこれらを併せて参照ください。
⇒ [超基礎]バラ入門|バラ栽培の最初の最初に知っておいてほしいこと
本稿のまとめ
超・初心者向けのバラ「アンジェラ」の栽培実感を紹介しました。このバラは特に多くのコメントを必要としないほど優秀なバラです。ほぼ手間暇がかからないわりに多くの花を簡単に咲かせるなど大変魅力が大きいおススメ品種です。
本稿がより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活をはじめませんか?
写真・記事の無断掲載・転載を禁止します。
アンジェラの栽培:花田昇崇・荒牧バラ公園さん等
Sentence/All photos:花田昇崇