ドイツのタンタウ社が作出した「アシュラム」は珍しい意味をもったバラです。アシュラム[アシュラーム]とは、インドのヒンドゥー教での「修養の場[徳を磨いて人格を高めるための場所]」を意味する宗教用語のようです。
このような厳かな名前がつけられた「アシュラム」は、美しく深い濃緑の葉と濃いオレンジが目を引くバラで、耐病性も「普通よりも強い」ことから比較的育てやすくて初心者におススメできる品種です。
本稿は、美しく深い緑に囲まれた修養の地を灯[トモ]す光明さながらのオレンジのバラ「アシュラム」の栽培実感です。
目次
品種の情報
4基準データ
- 花色 : 濃いオレンジ[アプリコット・オレンジ]
- 芳香 : ★☆☆☆☆☆ [微香|フルーツ香]
- 耐病性 : ★★★★☆☆ [うどんこ病&黒星病ともに「普通よりも強い」]
- 樹形 : 木立ち性|ハイブリッド・ティー
※4基準とはバラ入門者の方がはじめてのバラを選ぶうえでの指標となる4つの判断基準です。さまざまにある選択要素のなかから最も重要な4つの基準を紹介しています。
詳しくはこちらをご覧ください。
⇒ バラ初心者の品種の選び方。あなたに最適なバラを探す4基準
⇒ ハイブリッド・ティーってなに?|新時代を開いた現代バラ誕生の物語
補足基準データ
- 花つき : 良い
- 花もち : 良い
- 花形 : 丸弁平咲き
- 花びらの枚数 : 最大で30枚
- とげ : 鋭いがごく少数[後掲の写真参照]
- 耐寒性/耐暑性 : 普通[冬:普通/夏:普通]
- 花径 : 12cm[大輪]
- 樹勢 : 普通[地植えでも大型化しない]
- 開花サイクル : 四季咲き
- 作出 : 1998年.ドイツ[タンタウ]
- 原名 : Ashram
※「丸弁」「平咲き」をはじめ、バラの花形にはさまざまなものがあります。
⇒ 花びらと花のかたちで見る「花の表記」の読み歩き
※補足データは4基準に準じる2次的な基準です。4基準ほど育てやすさに直結するものではありませんが個々の花の個性を形づくる情報です。
育てやすさ|栽培難易度
[初心者向け]
はじめてバラを育てようと思われた方や栽培知識に自信がない方でも大丈夫な品種です。
外観上の特徴
アシュラムは四季咲き性の品種で、冬期を除く春~秋に繰り返して何度も開花します。
つぼみ~ほころび
開花。花色の魅力
花色は濃いオレンジ色。[茶色を帯びると見る向きもある。]
海外ではアプリコット・オレンジと評価されているようです。
高温環境だとオレンジの色味がやや後退することでアプリコット色がでるのではないかと思われます。
15℃~20℃程度の気温[春と秋]だとオレンジの色味が強くでるようです。
咲き開いた姿がこちら。美しい大輪のオレンジになります。
花つき
良い花つきです。
ハイブリッド・ティーは比較的花つきが少なめになりがちですが、そのなかではわりと良い部類だと思われます。
花もち
花もちが良いです。
花びらに厚みがあってしっかりしているので簡単には散りません。
春・秋(気温15~20℃前後) = 4~6日前後
ステムが長いこともあり切り花用におススメです。
香り
無香か、せいぜい微香といったところ。
管理人はほぼ無香と感じていますが、嗅覚が鋭い方によればほのかにフルーツの香りがするという評価を聞きます。
どのような香りがするかはぜひあなたご自身で確認なさってみてください。
新しい葉と古い葉との対比
新しい葉は強くワックスがかかった美しい照り葉。
照り葉のワックスは時間とともに落ち着き、以下のようになります。
育てやすさについての私の実感
耐病性
バラはさまざまな病気にかかりますが、品種を問わず最も頻繁にかかるのが「うどんこ病」と「黒星病」の2つの病気で、これらは「バラの2大病」と呼ばれています。
この2大病の耐病性が「普通よりも強い」品種です。
うどんこ病への耐病性
うどんこ病に「普通よりも強い」品種です。
[※表記の参考:普通 < 普通よりも強い < 強い < かなり強い < 最強 ]
耐病性が「普通よりも強い」場合には、雨露の当たる環境であればさほど気にしなくても良く、うどんこ病のための薬剤散布はひとまず不要と思われます。
気になる方は重層や 食酢はうどんこ病・ハダニ・窒素過多の解消に効能があります で紹介している手段で足りるでしょう。
黒星病への耐病性
黒星病に「普通よりも強い」品種です。
[※表記の参考:普通 < 普通よりも強い < 強い < かなり強い < 最強 ]
「普通よりも強い」程度の場合には花季のどこかのタイミングで黒星病が発症するでしょう。しかし、たとえ一部の葉が黒星病にかかることがあろうと、そこから蔓延して丸坊主になるほど葉を落とすことはありません。
抵抗力まとめ
ご覧いただいたように2大病のどちらも「普通よりも強い」抵抗力を備えています。
樹勢
樹勢は「普通」です。
耐病性が「普通よりも強い」ので普通の強さの樹勢でも比較的順調に生長します。
また、地植えして成株になっても高身長化せずにコンパクトにまとまりまります。[大型化しない。]
栽培スペースを大きくとられることがないのでちょっとした場所の余裕があれば育てることができます。鉢栽培に最適です。
とげの具合
若い枝も古い枝も目立つ少数の鋭いとげがあります。
ただ、気を付けて扱えばとげを避けることができるので革手袋は必須ではありません。
若いとげはこんな感じ。
古い枝のとげはこちら。若いとげがそのまま大きくなったような感じです。
栽培のコツ
紹介してきたとおりほどよく優等生なバラです。
特筆すべき点は見当たりません。ただ1点だけ。
花後の切り戻し[剪定]は浅めに
ステムを頻繁に伸ばさないので枝はなるべく大事にするほうが良さそうです。
花後の剪定は、一般的なルールとおりに5枚葉の上で切るようにしましょう。
[切り花にするために枝を落とすときも同じ位置で切るようにする。]
適する栽培方法
コンパクトにまとまる樹形のため鉢植えに最適ですが、もちろん地植えにも向きます。[地植え・鉢植え、どちらにも向く]
鉢で楽しみたい方は鉢で、水やりの手間を抑えたり大きく育てたいなら地植えと、お好みで。
管理人のおススメは鉢植えです。
結論:育てやすいか?のまとめ
これまで見てきたように、アシュラムは以下のような特徴があり育てやすい品種です。[初心者向き]
- 2大病の耐病性が「普通よりも強く」て比較的育てやすい
- コンパクトな樹形で地植え・鉢植えどちらにも向く
- とげが少ない
本稿のまとめ
さて、いかがだったでしょうか。
修養場に灯るオレンジのバラ「アシュラム」について紹介してきました。
美しく深い色の葉の中に一輪だけぽつんと咲くアシュラムはまばゆく光明のようにも見えます。香りが[ほぼ]ない点だけが残念に思えますが、もしかするとそれはアシュラムでは雑念になるのかもしれません。育てやすさや温かみのある花色など魅力が大きいバラだと感じています。
なお、 絆の花。オレンジのバラの紹介|100種類以上から選んだお勧め品種 では様々なオレンジ系統のバラを紹介しています。よろしければこちらもどうぞ。
本稿がより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活をはじめませんか?
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アシュラムの栽培/Sentence/All photos:花田昇崇