コガネムシ類|花びらを食害し根に甚大なダメージを及ぼす危険な害虫

バラの害虫の「コガネムシ」が2匹、バラの葉の上に乗っている写真。

心待ちにしていたバラが開花して「さあ、今年も花を楽しもう!」と思いながらよくよく花をのぞき込むと、そこには小さな先客が。

「ちょっとあなたどこにいるのよ…。」と思わずツッコまずにはいられない、そんなバラの害虫がコガネムシ類です。

コガネムシの被害は成虫と幼虫の両方があり、このどちらもがバラに危害を加えます。成虫はようやく咲いたバラの花を食い散らして私たちを落胆させる一方で、幼虫は地に潜んでバラの根をかじって株を弱らせる危険な害虫で、深刻な場合にはバラを枯死にまで追い詰めます。バラに危害を加える虫のなかではわりとかわいい部類の見た目ですが、見逃してはいけない重要な害虫です。

本稿は、私たちにもバラにも大きな被害をもたらす害虫「コガネムシ類」の生態と診断のコツ、そして駆除方法を紹介します。

 

バラ「イヴ・ピアッツェ」の花を食害する2匹の「コガネムシ」の様子。

露地のイヴ・ピアッツェを原形をとどめないほど無残に食い散らかしているコガネムシ[マメコガネ]。

 

コガネムシの生態・加害ポイント

コガネムシってこんな虫

コガネムシを捕獲した様子。

マメコガネ[Japanese Beetle]。体長8~15ミリメートルほど。

 

「コガネムシ類」と総称していることからも伺えますが、写真のマメコガネの他にもヒメコガネドウガネブイブイなど、コガネムシにはいくつかの種類がいます。

[最もよく見かけるのがマメコガネ]

ただ、これらコガネムシの種類を細かく区別して考える実益はありません。被害はどの種類も同じです。

発生時期は5月初旬ころから9月下旬ころにかけて飛来してきます。[長く見ると4月から10月まで]

 

「成虫」の加害ポイント|地上で4つの個所を食害する

花や葉に乗り込んで食い荒らす

コガネムシの成虫は次の4か所を食害してバラに被害を及ぼします。

  • 開花した花咲いた花のなかに潜り込んで花びらを踏み散らしながら食い漁る
  • つぼみ|食害する。
  • おしべ|食害する。
  • |主に若い葉を狙って、穴をあけるように食害する。

成虫が狙ってくる中心ターゲットは開花中の花で、花に大きなダメージを与える害虫の代表が「コガネムシ」です。

直接的に花びらを食い荒らすので見た目にも明らかです。

また、コガネムシが葉を食害した場合の特徴は穴があいていることです。[葉がポツポツと網目状にあけられる

花の上にいるかどうかだけでなく、このような葉を見かけた場合にもコガネムシの襲来を疑います。

 

花を狙う2つの害虫|被害跡でわかるコガネムシとアザミウマの違い

なお、花を加害する害虫はコガネムシだけではありません。

小さな小さな害虫の「アザミウマスリップス]」も花びらにダメージを与えます。

ただしこちらはコガネムシと比べて身体が小さく、また花びらにシミをつける害[吸汁害]なので被害態様は大きく異なります。

バラの花[花びら]にダメージを与えるこの2つの害虫は、

  • コガネムシ|大きな身体で直接的に食い荒らす[=顔を近づけなくても遠目で被害がわかる
  • アザミウマ|小さな身体で汁を吸う[=顔を近づけないと被害がわからない

と見分けをつけることができます。

アバウトにでも見分け方の違いを知っておくと有益です。

 

「幼虫」の加害ポイント|地中でバラの根をかじる

コガネムシ被害の本質は地中の根が攻撃されること

飛来してきたコガネムシの成虫はバラの株元に産卵することがあります。

これは私たちが大切なバラを育てようと有機質肥料や良質な腐葉土などを大量に投下して作った理想的なバラの植え床は、害虫側から見ても理想的な産卵場所になっているからです。

こうしてバラの株まわりで孵化したコガネムシの「幼虫」は地中でバラの根を食害しながら成長します。

およそ植物の根は、動物で例えると心臓のような大切な器官です。

バラにとって大切な根を一所懸命にかじるコガネムシの幼虫は、徐々にバラを弱らせ、ついには株を枯死させるまで追いやることもあります。

このようなことから、コガネムシの被害の深刻さは、じつは地上部の成虫による花の食害ではないことに気づくことになります。

コガネムシによる被害の本質は幼虫による地中の根の食害によってもたらされる株そのものへの甚大なダメージにあります。

 

地中にコガネムシの幼虫が潜んでいるか?|診断ポイント

幼虫が潜んでいる場合、根を食害してしまうことで株が健全に生育できなくなります。

さらに、元々地中にあって株を支えたり栄養を送る役割を果たしていた根が消失してしまうわけですから、このことは地上部の株に大きな影響や変化を及ぼすのが道理です

そこでこの影響や変化に着目して幼虫の存否を判断します。

コガネムシの幼虫が地中に潜んでいるかどうかの具体的な診断ポイントは、

  1. 水やりをしたら[昔よりも]水の引きが悪くなった[=根が消失しているのでこれまでのようには水を吸えなくなっているため。]
  2. 株がグラグラとぐらつく[=消失前は根が張って地上部の株を作ったが、根が消失してしまったことで地上部を支える力が弱まっているため。]
  3. 昔と比べて株に元気がない[=根が消失したことで株にみあった養分がまかなえていないため。]

また、④株まわりで成虫が死んでいる場合にも注意が必要です。

これら①②③④のどれか1つでも該当している場合にはコガネムシの幼虫を疑います。

被害を受けていると思われるバラの株が「地植え」か「鉢植え」かでこの後の対策は異なります。[後述]

 

参考|鉢内で潜んで成虫に孵化した事例

鉢増しをしようとバラを鉢から引き抜いたところ「おやっ?」と気がつきました。

注目は鉢底。

鉢植えのバラを鉢から引っこ抜いた写真。

8号ロングスリット鉢からの鉢増し中に発見。

 

拡大すると…、

鉢の底のほうにコガネムシが潜っていることがわかる貴重な写真。

 

いました。

コガネムシ類のなかでは体調が大きい「ドウガネブイブイ」です。鈍く光沢のある胴色ですぐにわかります。

バラの鉢の底のほうに潜むコガネムシ[ドウガネブイブイ]を撮影した。

ドウガネブイブイ[Cupreous chafer]。体長25ミリメートル。

 

「ドウガネブイブイ」(コガネムシ)を指さした写真。

 

この一連の4枚は2017年6月末頃の写真です。

しっかり記録をとっていたわけではありませんが、3月頃にこの8号ロングスリット鉢へ植え替えした記憶があります。

ドウガネブイブイの幼虫は冬を土内で越冬しています。本来なら3月のこの植え替え作業中に幼虫に気づくべきでしたが6月末まで気がつかなかったわけで、写真の成虫は鉢内の根を食害しながらここまで成長したものと思われます。

これは成虫としての活動を開始して地中に這い出してくる前に発見した事例です。

[ちなみに食害されたこの写真の株はディズニーランド・ローズでその後も枯れることなく順調です。]

 

忌避方法|害虫をなるべく寄せ付けない。蓋をする。

青色の誘引トラップ|このなかに農薬を仕込む

コガネムシは青色に引き寄せられる特徴があります。

そこで青色のポリバケツやゴミバケツなどに後述の「オルトランDX粒剤」を溶いた水を薄くはっておきます。

青色に誘引されたコガネムシが集まるので、バラになるべく寄せ付けない効果が見込めます。

このオルトランDXを溶いた水は定期的に株元に撒いて使うこともできます。

黒マルチや不織布で株元を覆う|株元で産卵させないようにする

バラの株まわりで産卵する習性があることから、そもそも産卵させないようにすることが有益な方法です。

具体的には産卵させないように株まわりを園芸用の黒マルチシートで覆ったり、不織布をかぶせることで産卵されるリスクが大きく下がります。

産卵場所に物理的に蓋をするということです。

管理人はバラの株まわりには必ず黒マルチをしています。黒マルチは本来は雑草抑制のために覆いますが、この黒マルチはコガネムシの産卵阻止にも有効です。


駆除方法

ここからは駆除方法を説明します。

成虫と幼虫とで駆除方法の場合分けをし、それぞれ農薬を使わない方法[耕種的]と化学農薬の紹介などに分けて合計4項目で紹介します。

大まかに言って、成虫には捕殺を、地植えの株に幼虫がいた場合には化学農薬による駆除がおススメです。[※鉢植えの幼虫には化学農薬は必要ない。]

 

「成虫」の駆除方法|捕殺のコツ

農薬を使わない駆除方法|テデトール。ただし、意外と逃げ足が早い

成虫は花びらの上で夢中になって食害していることが多く、発見は遠目に容易です。

捕殺の基本は素早く近づき手で押さえることです。[テデトール

ただし、こちらがゆっくりと近づき、更にまたゆっくりと手を構えていると急に飛んで逃げる場合があります。ごつい見た目に反して意外に逃げ足が早いので注意が必要です。

また、地面に落下したときは一定時間動かずに「死んだふり?」のように硬直し、隙を見て飛んで逃げようとします。動かなくなっても騙されないように。

あらかじめバラの近くに網を用意できている方は網で抑え込んでしまうのも手です。

化学農薬による駆除方法|巷で紹介されているスミチオン乳剤はNG!

バラの本やインターネットの解説記事などによると「スミチオン」をコガネムシ駆除薬として薦められていることがあるようです。これは管理人がたまに質問を受けることです。

しかし、これについて結論から言うと「スミチオン乳剤」はNGです。使っている方がいれば使用をやめましょう。[2019年4月時点]

[スミチオンは法律上「アブラムシ」「バラゾウムシ」の2害虫のみです。]

スミチオンではなく次の化学農薬を使います。

  • ベニカ水和剤 | 水で2000倍に希釈して噴霧器で撒く。[ベニカはアブラムシにも効きます。この場合は2000-4000倍に希釈。]

この2000倍液を手軽に作るには [保存版]500mlで超簡単にバラの消毒を行う方法 を参考にしてください。

もしお手元になければ購入も検討されてください。


なお、化学農薬で退治することは簡単ですが、できれば日頃からバラをよく観察して、見つけた場合には直接捕殺するのが人や環境に優しい付き合い方です。

化学農薬を使用するにしても回数は最小限度にとどめ抑制的にしましょう。

 

「幼虫」の駆除方法|テデトールは困難

地植えの場合|化学農薬を使って駆除

幼虫は土のなかにいるのでそのままでは発見できません。[テデトールは困難。]

たまたま幼虫を見つけた場合には手でつまんで捕殺することができますが、土を大きく掘り起こさない限りは目視できません。そこで幼虫駆除は化学農薬を主に使って行います。

目視できない幼虫が土中に潜んでいることを推認させる事情は「地中にコガネムシの幼虫が潜んでいるか?|診断ポイント・コツ」で紹介した①②③④の事情です。

これらと照らし合わせてコガネムシの幼虫が疑われる場合には次の薬剤を使います。

  • オルトランDX粒剤 | 水で希釈して浸透させます。

株のまわりにパラパラと粒状の薬剤を撒いて、それに水をあてて希釈して土に染み込ませます。

園芸用農薬「オルトラン」を撒いたところにホースの水をあてて希釈している写真。


殺虫成分を吸収したバラの根をかじることでコガネムシの幼虫は死に至ります。

このオルトランDX粒剤は地植え・鉢、どちらにも同じように撒きます。

なお、「ダイアジノン粒剤」という薬剤がありますが、ダイアジノン粒剤もバラへの使用はNGです。

鉢植えの場合|コガネムシが潜む鉢ごと水につけて溺死させる。または植え替え

鉢植えの場合には、化学農薬を用いない2つの対処法があります。

まず1つめは、鉢が10号サイズ以内[※目安]の鉢であれば、その鉢ごとそれよりも大きな水桶を用意して、鉢のまま水に一定時間つけて幼虫を溺死させる方法です。

この場合には、活力液を希釈した水にします。根の多くを食害されていると予想されるためです。併せて地上部の株も剪定して切り戻します。

次に2つめは、シンプルに植え替えをします。この植え替えにあたり、鉢から株を抜くと大量のコガネムシの幼虫があなたの目の前にでてくる場合があります。根がなくなっていると根鉢は簡単に崩れます。ある程度の土を落とし、幼虫をすべて始末し、新しい土で鉢替えさせます。[季節にかかわらず行います。]

このように、幼虫がいたとしても、地植えか鉢植えかで薬剤に頼るかどうかは異なります。

 

本稿のまとめ

本稿では、コガネムシは成虫よりも幼虫のほうがバラへの被害度が大きく、放置してはいけない害虫であること、そして幼虫発見のコツ、これらの駆除方法などを紹介してきました。

本稿がより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活をはじめませんか?

 

写真・記事の無断掲載・転載を禁止します。

バラの管理/Sentence/All photos:花田昇崇

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