ハダニへの殺ダニ剤の無計画使用は厳禁|科学的に征する殺ダニ剤と物理的に征する天然由来の農薬

新品の殺ダニ剤「ダニ太郎」の箱入りの写真。

バラに寄生して加害するハダニを征するためには、殺虫剤ではなく「殺ダニ剤」という化学農薬を主に使っていきます。

本稿ではさまざまな殺ダニ剤の種類と使用上の約束事について説明します。あわせて、殺ダニ剤以外にもハダニに効果のある薬剤や天然由来で安全性の高い農薬についても紹介します。

殺ダニ剤は本稿をよくご覧になってはじめて使用を検討されるようにお願いします。

 

はじめに

本稿で紹介する殺ダニ剤はバラの害虫ハダニを駆除する薬剤です。ハダニについてご存じのない方は先にこちらからご覧ください。

1 : ハダニ|バラの害虫|葉の表面のかすり状紋様に要注意!それが寄生の印 ではハダニがもたらす被害や見分け方、その他一般的な説明をしています。

2 : ハダニの駆除方法|肉眼で見えず、殺虫剤も効かない敵を退治する実践的な手順 では被害段階別の具体的な対策手順を説明しています。

 

ハダニ対処の視点|科学的に征する殺ダニ剤と物理的に征する天然由来の農薬

結論として、ハダニ対処の視点は以下です。

さまざまなバラの害虫のなかでもとりわけしぶとい「ハダニ」を退治するには、化学農薬である「殺ダニ剤」と「天然由来の農薬」の両方を被害段階に応じて使い分けていくのがよいと思います。

殺ダニ剤はハダニが蔓延しはじめる中期段階から使いはじめるのがよいでしょう。

初期段階であれば天然由来の農薬を用います。

まず初期段階で使う天然由来の農薬から紹介していきます。

 

物理的に征する天然由来の2つの農薬

以下で紹介する2つの薬剤はともに法律に登録のあるれっきとした「農薬」です。

※参考 : 「農薬」ってなに?食べて安全な重層や食酢が農薬になる理由

しかし、「天然由来の農薬」はあなたがお持ちの無農薬のイメージそのままに扱って大丈夫です。

安全性の高い薬剤なので気軽に使って構いません。重装備も不要です。

 

天然由来の農薬①|粘着くん

使い切った古い農薬「粘着くん」(1ℓ入)の写真。

 

  • 人に対する安全性が極めて高いデンプン由来[成分|ヒドロキシプロピルデンプン]の薬剤
  • 成分が[成虫の]ハダニを覆って物理的に窒息させる
  • アブラムシにも効く
  • 連続使用してもハダニに耐性が生じない
  • 総使用回数や使用時期の制限がなく、いつでも手軽に使える

この粘着くんは要するに、デンプンのべたべた成分で小さなハダニの気門を包み込み、物理的に窒息死させる薬剤です。化学反応を生じさせて死に至らしめるものではないので耐性うんぬんの問題が生じません。これが大きなメリットです。

ただし、

  • には効果がない
  • 効果が数日しかもたない[→繁殖が早いハダニはすぐに増殖する]

というデメリットもあります。

そのため粘着くん一剤のみを過信しすぎるのは注意が必要です。

 

天然由来の農薬②|ハッパ乳剤

  • 天然のなたね油成分|なたね油90%+界面活性剤等]に由来する成分
  • アブラムシにも効く
  • うどんこ病の予防効果があり、さらに弱いながら治療効果もある
  • 連続使用してもハダニに耐性が生じづらい
  • 総使用回数と使用時期の制限がなく、いつでも手軽に使える
  • 平成22年からバラへの使用も認められた
  • ホームセンターなどで入手できる

成分こそ粘着くんと違うものの、ハッパ乳剤も粘着くんと同じように使うことができます。粘着くんと同様にバラの害虫「アブラムシ」にも効果があります。

バラの病気「うどんこ病」の予防を兼ねています。取り扱いのあるホームセンターが多いのも嬉しい点です。

※少し細かな話しですが、乳剤なのでダインやスカッシュなどの「展着剤」は加用しないように。薬害が生じます。

 

新品の展着剤「スカッシュ」(500ml)の写真。

 

天然由来の農薬|メリットとデメリット

メリット|有機栽培になる

これら天然由来の農薬はデンプン成分やなたね油の成分で害虫の呼吸器を物理的に封じることで征する農薬です。

これらを使用した収穫物はJAS(日本農林規格)の定める「有機栽培」となります。

安心して使用できるのでご近所へ気兼ねする必要がない点や小さなお子様がいらっしゃる家庭でも使えるのが大きなメリットです。

管理人の使用実感は、どちらも自然由来の成分なので「効きめが弱いかな?」と当初は思ったものの、それなりの効果が見込めます。ひとまず満足してよい薬剤だと思います。

粘着くんとハッパ乳剤はどちらを使ってもよいでしょう。

強いて問われれば、うどんこ病への効果を併せて見込める点でハッパ乳剤をおススメしておきます。

有機栽培の食用バラを栽培するにあたって、この天然由来の農薬は外すことのできないアイテムです。[ローズフェスタでも使用しています。]

※参考 : [探し方を伝授]エディブルローズ(食用バラ)の可能性を語る旅路

デメリット|2つ

デメリットの1つは、残効が望めない点です。そのため害虫が発生するたび繰り返して散布していかなければなりません。

これら天然由来の農薬は対症療法のようなもので、当然その分だけ手間暇がかかります。また、対象害虫[ハダニやアブラムシ]が増えすぎている場合には充分な効果が望めないようにも感じます。

デメリットの2つめは価格がやや高い点です。繰り返して頻繁に使うことになれば防除費用が家計を圧迫するかもしれません。

100倍~200倍ほどに水に希釈して使いますが、1リットル品で1000円を優に超えます。人や環境にやさしい手法である一方で、もしかするとお財布には少し厳しい方法ということになるのかも知れません。

 

科学的に征する殺ダニ剤

気門を塞いで物理的に征する自然由来の薬剤に対して、ハダニを化学的に退治するのが殺ダニ剤です。

殺ダニ剤は多くの種類がありますが、たとえば以下のようなものがあります。

 

殺ダニ剤①|ダニ太郎

新品の殺ダニ剤「ダニ太郎」の箱入りの写真。

 

  • 成分|ビフェナゼート
  • 成虫から卵まで効果がある
  • ホームセンターで最も入手しやすい殺ダニ剤がこのダニ太郎

 

殺ダニ剤②|コロマイト乳剤/水和剤

  • 成分|マクロライド系ミルベメクチン
  • ダニの神経に作用して活動を抑制させる
  • 成虫から卵まで効果がある
  • ホームセンターなどで入手できる

 

殺ダニ剤③|ダニカット乳剤

  • 成分|アミトラズ
  • 成虫から卵まで効果がある
  • 即効性があり残効もある

 

殺ダニ剤④|ダニトロンフロアブル

  • 成分|フェンピロキシメート
  • 成虫から卵まで効果があるが、幼虫に特に効く

 

殺ダニ剤⑤|ニッソラン水和剤

  • 成分|ヘキシチアゾクス
  • 卵の殺卵効果があり、成虫には効果がない
  • 長所は残効の点で、長期間にわたってハダニの発生を抑える効果がある

[順不同]

ご覧いただいたような複数の殺ダニ剤があります。

ただし、農薬の使用については専門知識が不可欠です。

向上心の強いあなたのために複数の殺ダニ剤を紹介しましたが、できれば初心者の方が専門店でのみ取り扱っているような極めて毒性の強い殺ダニ剤を安易に使うことは避けましょう。

殺ダニ剤を使うにしても基本的にはホームセンターなどでも購入できる類の殺ダニ剤を使うことをおススメします。

ダニ太郎コロマイトあたりは大型ホームセンターであれば取扱いがあろうと思います。[※むろんこれらの毒性が弱いから安心ということではありません。]

 

殺ダニ剤使用上の約束事

超重要|同じ薬剤・同系統の連続使用は絶対にダメ

複数の殺ダニ剤を紹介しました。そのため、あなたは「結局どれがいいの?」「どれか1つでいいんだよね?」と思われたのではないでしょうか。

ですがそうではありません

殺ダニ剤については周囲への悪影響を防ぐためにも最低でも2種類、できれば3種類以上は揃えて欲しいところです1種類しか使わないつもりであれば、最初から殺ダニ剤に手を出してはいけません。1種類も使ってはいけない、ということです。ここはとても重要です。

悪影響というのは、中途半端に同じ薬剤のみを使用してしまうと「薬剤が効きづらく、また効かなくなりやすい」うえに「増殖が速い」という特性があるため、わりとすぐに耐性ハダニというモンスターを生じさせてしまうことにつながるからです

耐性ハダニというのはあなたが使った薬剤への抵抗力を身につけ、その薬剤では死ななくなってしまったハダニです。

耐性ハダニへは“その”薬剤が効かないわけですが、それが増殖するとどうなるでしょうか。その悪影響はあなたのバラだけではおさまらなくなります。隣家のバラへ移動するリスクもありますし、ご家庭で育てられている他の野菜へも飛び火するなどかえって被害が拡大することにもなりかねません。

なお、同じ薬剤の連続使用でなくても、同系統の有効成分の薬剤であれば結局は同じ薬剤と異なりません同系統の薬剤の連続使用もNGです。

大事なことなので繰り返しますが、同じ薬剤&同系統の連続使用は絶対にいけません

 

大原則|耐性をつけさせないためのローテーション散布

そのため違う薬剤&異なる系統の殺ダニ剤を順番に散布していくのが殺ダニ剤使用の大原則です

たとえば、

  1. 1日目.ダニ太郎[成分|アミトラズ
  2. 2日目.コロマイト乳剤[成分|フェンピロキシメート
  3. 3日目.ニッソラン水和剤[成分|ヘキシチアゾクス

など、違う薬剤&異なる系統の殺ダニ剤を順番に散布していきます。

 

注意点:それでもハダニはしぶとい

上記の例で3種類のローテーションを紹介していますが、じつは3種類だけのローテーションで必ず十分な効果が生じると断言することはできませんハダニはしぶといのです

3種類といわず5種類ほどは用意するのが好ましいのですが、ハダニの対策のためだけにそれは難しいところです。

 

殺ダニ剤以外でハダニに効果がある薬剤

殺虫殺菌剤|サンヨール乳剤

新品の殺虫殺菌剤「サンヨール乳剤」を撮影した写真。

 

  • 系統/成分|有機銅剤+気門封鎖系
  • ハダニの成虫にも効く
  • アブラムシにも効く
  • チュウレンジハバチにも効く
  • アブラムシにも効く
  • 灰色かび病にも効く
  • 黒星病の予防効果がある。
  • うどんこ病の予防効果がある
  • ホームセンターなどで入手できる

さまざまな病害虫に効果のある殺菌剤のサンヨールは、黒星病やうどんこ病の予防を行いながらハダニにも効果的にダメージを与えることができます。

 

カスケード乳剤

  • 系統/成分|IGR剤/フルフェルクスノン
  • ハダニの幼虫段階に特に効く
  • 幼虫の脱皮を不完全にさせ死に至らしめる
  • バラの害虫「アザミウマ」類にも効く
  • エビ類に強く悪影響があるので養殖池付近での使用は控える

 

ハダニに効果がある薬剤のまとめ

ここで紹介した2つのうち、特にサンヨールは殺ダニ剤のローテーションの一つとして加えるのもよいと思います。

 

本稿のまとめ

さて、いかがだったでしょうか。

本稿はハダニの駆除に役立つ薬剤として、化学農薬の殺ダニ剤と天然由来の農薬について説明してきました。普段耳にしない薬剤が多くて混乱したかも知れませんね。本稿は必要に応じて適宜参照するなどで参考になさってください。

本稿が皆様のより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活をはじめませんか?

 

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バラの管理/Sentence/All photos:花田昇崇