エディブルローズ(食べられるバラ/食用バラ)の可能性を語る夢路

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エディブルローズを加えたローズカプレーゼの写真

五感で楽しむ薔薇の専門店 ローズフェスタ の花田です。

食べられる花(食用花=エディブル・フラワー)が近年注目を集めています。

日本人と食用花との付き合いは エディブルフラワーの歴史 でも触れましたように古くから我々の暮らしの中でとりいれられ身近にあったものです。エディブルフラワーは全く新奇なものではありません。

ここにきてエディブルフラワーがとみに注目を集めるようになった理由はその栄養素の高さが明らかにされたことにあります。花によってそれぞれ栄養素は異なりますが、ビタミンや食物繊維などが他の野菜・フルーツと比べて何ら劣るものではないことがわかったのです。豊富な栄養素に加えて様々な種類と花色の多彩さから百花繚乱の様相を呈するエディブルフラワーは、料理人の工夫次第で単に料理に添えることのみならずその場をすら演出することができる力を秘めています。このような魅力が注目を集める理由と思われます。

様々な種類のエディブルフラワーのなかでも特に人気なのはやはり「バラ」。(=エディブル・ローズ=食用バラ。)園芸の中でも栽培が難しいとされる部類の花ですが、これを食用として育てるには“園芸におけるノウハウ”とはまた違った注意が必要です。使用目的が異なるため栽培方法が大きく異なるわけです。

本稿では、花屋などで取り扱われている観賞用のバラがどのような役割をもって栽培されているかに触れた上で当店の考えるエディブルローズに適した品種やその可能性について案内していきます。飲食店・カフェのオーナー様や和菓子・洋菓子業界の方、ホテル関係の方などに特にご覧いただきたい内容です。

エディブルローズとはいかなるものか、そして今後の展開とは?当初構想より10年にわたる「観賞用のバラの対極にあるエディブルローズとはなにか。」を語る夢路へとお進みください。

 

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五感で楽しむ薔薇の専門店ローズフェスタが運営するバラ園(バラ園名「ローズフェスタパーク」内で咲いた食べることのできるバラ「シャルル・ドゥ・ミル」を3輪写した写真。花田昇崇が撮影

ローズフェスタパークで咲いているエディブルローズ「シャルル・ドゥ・ミル」(OLD)

 

前置き

食べられるバラはどのようなものか。これをよりよく理解していただくためには、やはり観賞用のバラがどのように栽培されているのかを知っておいていただきたいと思います。

 

「見る・観賞する」ことを目的に生産されている文字通りの観賞用のバラは、花束や結婚式のブーケなどの素材としての切り花として流通しています。バラのもつ豪華さと乱れのない花姿が“高貴で品がある”というそのイメージづくりに大きく貢献しているのはご承知の通りです。

このような観賞用のバラは管理された施設内で“観賞すること”の一点に特化して栽培されています。植えておけば自然と花屋のバラが「出来上がる」わけではありません。乱れのない花姿はプロの手でしっかりと管理栽培することでようやく得られる商品です。

ではその管理とはいかなるものか。観賞用のバラの育て方とともに、これを口にしてはいけない理由をお伝えしたいと思います。

 

観賞用のバラを口にしてはいけない理由

病害虫のデパート

他の草花と比べてみてバラは様々な病気にかかり、また害虫も数多く寄ってきます。“病害虫のデパート”と揶揄される所以です。これら病害虫に関連する様々な知識が求められることがバラ栽培の敷居を上げる最大の原因ともなっていることは1株でもバラを育てられた経験のある方ならご承知のことかと思います。

病害虫の被害を減らすことにビニールハウスは有用です。しかし被害のすべてを抑えきることはできません。ハウスはハウスなりに露地栽培の場合には生じにくい別の病害虫が生じやすくなるためです。

※たとえば施設栽培の代表的な害虫にハダニをあげることができます。

⇒ ハダニ|バラの害|葉の表面のかすり状紋様に要注意!それが寄生の印

ハウス栽培にせよ露地栽培にせよ鑑賞に堪えうる品質水準のバラを作ろうと思えば、病害の拡大を阻止する治療薬や、そもそも病害に罹らせないようにするための予防薬などを併せ重ねて散布していかなければなりません

以下は“完全”な無農薬で実験栽培している、あるバラのつぼみの姿です。

 

バラのつぼみにまとわりついたたくさんのアブラムシの写真。バラは病害虫に弱く、定期的な薬剤散布をしなければすぐにこのようにアブラムシがまとわりつく。

バラのつぼみにまとわりついたたくさんのアブラムシ。最小限度の薬剤散布さえしなければすぐにこのように害虫のアブラムシがまとわりつく。この状態で咲いた花には花びらの隙間のいたるところにアブラムシが入り込み、またその分泌液でベタベタとなり、とても鑑賞にたえるものではない。

 

高い完成度を求められる観賞用

一度生じた被害痕は治癒した以後にも残るものが多くあります。観賞用のバラは観賞するための商品であって高い完成水準が求められますが、キズが残ってしまうわけです。キズのあるダイヤモンドリングに高い価値が与えられないのと同じように、病害虫の被害痕は商品としての価値を大きく損なう要因です。

-病害虫の被害痕を残してはいけない。-

このような意識が生産者にはあります。では事後的な対応の治癒では不十分となる病害虫の被害に対していかに対処していけば良いでしょうか。

シンプルな解決策はそもそも病害虫にやられないように予防としての薬剤散布を念入りに行うことです。事後的対応の治癒が十分にのぞめない以上は予防に手を尽くすしかないと考えるのが生産者・供給者側としての率直な心情です。

 

観賞用のバラの正体

かくして観賞用のバラは様々な薬剤で守られることになります。個々の病気や害虫それぞれに異なる複数の薬剤を念には念を入れて散布していくことになるため、各薬剤ごとに定められている総使用回数は年間の規定数を上回るケースが多くなりがちだという噂も耳にします

つまり“薬剤で幾重にもコーティングされたバラ”、それが観賞用のバラの美しさの正体と言えます。

これは良いも悪いもありません。本来病害虫に弱い花を、観賞用として強いて高い水準の品質で求めるわけですから。

 

観賞用のバラ=工業製品

薬剤でコーティングされた観賞用のバラは、ある意味で“工業製品”のようなものです。庭などで咲かせる天然自然のそれとはまったくの別物だと認識ください。

食用として口に入れることは最初から想定されてはいません

ですから仮に工業製品である観賞用の花びらを食べた場合に中毒症状が生じるケースがあったとしても、それは当然の事態ですので全く驚くべきものではありません。

まず食べてはいけませんし、万一口に入れてしまった場合には速やかに医師の診察を受けるようにしてください。

以上が観賞用のバラを口にしてはいけない理由です。

 

エディブルローズを育てる

無農薬で栽培したイングリッシュローズ「テス・オブ・ザ・ダーバービルズ」の開花姿。エディブルローズ/食用バラとして使うことができる。五感で楽しむ薔薇の専門店ローズフェスタ店長の花田昇崇が撮影。

無農薬で栽培したバラがこちら。少しの降雨でも花びらにダメージが入る。ご覧のバラは比較的良質な状態。

 

エディブルローズ=農産物

エディブルローズ(食べられるバラ/食用バラ)とは口に入れることを前提にしたバラのことです。ここまでご覧いただければ察しが付くかと思います。

同じバラながら、観賞用のバラと対極にあるのがエディブルローズです。

こちらは観賞用のように見る人を感嘆させる鉄壁の美しさを誇ることが第一の目的ではありません口に入れることの安全性をこそ第一に考えている農産物です

 

エディブルローズになり得る品種

では、エディブルローズになり得る品種とはどのような要素が必要でしょうか。興味のある方がご自宅で育てられる際の指針となる選択基準を示しておきたいと思います。私花田の考える独自の基準は以下の通りです。

 

耐病性の強さ

農薬まみれの農産物を食べて嬉しい人などいません。病害虫のデパートであるバラ栽培においていかに農薬の使用回数を減らしながら綺麗さを保ちつつ栽培できるか。生産する側の悩みはこのあたりにあります。

解決策はバラの品種自体が有する耐病性にあり、耐病性の強い品種を選択することが基本です。加えて香りの強い品種であれば尚良いでしょう。逆に耐病性の弱い品種は適しません。耐病性が弱いとどうしても化学農薬の手助けが必要になってきます。それも頻繁に。耐病性の強弱は農薬まみれとなるか否かの直接の要因になるので弱い品種は避けるべきでしょう。

最も重要な基準は耐病性が強いこと、つまり化学農薬の使用回数を減らすことのできる品種が良いということです。

 

食べて美味しい=味覚

食べ物ですから食べて美味しいかどうかが重要です。ただ、我々日本人はこれまで花びらを日常的に食べてきたわけではありません。そのため慣れていません。

じつはバラも品種により花びらの食べやすさに違いがあります。あまり知られていないことですが、すべての花びらは同一の食べやすさではありません。適さないものは口の中でいつまでも花びらが残る嫌な食感と苦みがあり二度と食べるまいと思う品種も多くあるのです。品種選定の上で食感は極めて大切です。そのため私自身も100品種追記:2017年現在は400種類)以上の食べ比べをした上で当店のエディブルローズ用の品種を決定しています。

爽やかながらあっさり食べられる花びら”であること、これが生食であれ加工用であれいずれについても適していると感じています。

まずは食べてみて、嫌な食感と苦みがないかどうかを確認しつつ品種選定を進められると良いでしょう。

 

嫌味のない色合い=視覚

たしかにバラは百花繚乱の多彩な色合いがあります。ですが食卓に、例えば青色の色彩が並んだとしたらどうでしょうか。おそらく食欲を大きく損なうのではないでしょうか。

食事は視覚で楽しむものでもありますから、青系(紫系)のように食欲を減退させる色合いは相応しくありません。食欲を促進する色合いが好ましいでしょう。

エディブルローズとしての品種を選ぶ際にはその花色が食卓に並ぶに相応しいかどうか、これも重要な基準です。

 

耐病性・視覚・味覚の3つの関係・考え方

上記3つの基準のどれか一つに依拠するのではなくて、これら3つを総合的に勘案して具体的な品種の選定をしていくのが良いのではないかと考えます。当ローズフェスタではこのような基準を経て品種の選定をしています。

※たとえば黒バラの銘花といわれるパパメイアンも食用になります。栽培のコツ等はこちら。

⇒ 強香で食用にも使える花弁。バラ[パパメイアン]の栽培実感

※こちらの記事では、記事後半で当ローズフェスタの考えるエディブルローズの理念について触れています。

⇒ ばらの町・福山市でバラ園づくり|ローズフェスタ店長日誌10回目

 

4.花もちの良し悪し(生産者・消費者双方)

花もちの良し悪しは品種によって大きく異なります。基準4はジャムやアイスなどの加工食品に限定して用いる場合には特に問題になりません。収穫後早い段階で花の形を崩して加工を終えてしまうわけですから。

基準4は生食用として提供する場合に問題となり得ます。生食用であればやはり調理直前まで花形を維持できていた方が良いと考えるからです。理由は花びらは食べる直前に料理に加える方が調理演出として優れていると考えるためです。

提供の形態によりますが、やはりお客様の目の前でお皿や料理に加えた方が演出一般として良いと思われます。サラダを例にとると、しなっていたり濡れてべったりしている花びらでは驚きや感動は届けにくいのではないかと考えています。ただしこれは敷居の高い提供方法であり、仮にエディブルローズの整形花をご所望とあれば価格は一気に跳ね上がるものと思われます。

いずれにせよ生食用の品質を最適な状態に保つ保存方法があれば基準4は不要です。なお、夏場の常温下の場合には採花から1~2日程度で散る品種も多くあるので、基準4は夏場では特に問題となります。

 

五感で楽しむ薔薇の専門店ローズフェスタが運営するバラ園内の様子を写した写真。有機・無農薬で育てているイングリッシュローズの「グラハム・トーマス」が6輪写っている。爽やかなイエローが眼に眩しい。花田昇崇が撮影

有機・無農薬で育てているイングリッシュローズ「グラハム・トーマス」は形が崩れやすく花もちがいまいち。(写真はローズフェスタパークより。)

 

食品として求められる安全水準であること

これまでバラの特性について述べてきました。バラを農産物として生産することならではの苦労があり、その特性を踏まえて説明してきました。

けれど結局は食品としての品質を備えていることが何より重要なのは言うまでもありません。すべては安全性を向上させるためにあり、そのための耐病性基準であり味覚であり視覚への配慮です。

 

必ずしも整形花ではない

綺麗さを第一に生産しているものではありません。観賞用のバラのように整った整形花ばかりではないことに予めご承知いただく必要があろうかと思います。見事な花形のものもありますが、必ずしも整形花がスタンダードではありません。

また浸透性の殺虫剤などの使用については極めて抑制的であるべきため、多少の虫の混入があり得るかと思います。これは農薬コーティングがされていない安心の証拠とお考え下さい。

 

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エディブルローズの可能性

無農薬で栽培したイングリッシュローズ「テス・オブ・ザ・ダーバービルズ」の花びらをボウルに入れた写真。無農薬なので食用として使うことができる。赤と紫が混じる美しい花びらを召し上がれ。

無農薬で栽培した香り高いイングリッシュローズ(1輪)の花びらをボウルに入れたもの。どのように生かすかはあなたのアイデア次第。

 

最後に、このようなエディブルローズの用途についての当店の提案を書いておきます。活躍できるシーンの一部を紹介するに過ぎませんが参考になれば幸いです。

  • ローズカクテル-白ワインやリキュールにつけてバラエキスを抽出する。お店の目玉としてカクテルを提供されてみてはいかがでしょうか。
  • ローズジュース-定番のジュース。バラエキスを抽出して作ります。炭酸を交えて飲めば気分も爽快。カフェメニューの端に加えてみてはいかがでしょうか。
  • ローズジャム-定番のジャム。花弁を砂糖などで煮詰めることでお店オリジナルのローズジャムが出来上がります。オリジナルローズジャムを使ったバンを販売されてみてはいかがでしょうか。
  • ローズアイス-定番のアイス。ローズエキスを原料に加えたり、花びら自体やそれを砕いたものを加えて作ります。ご自宅、店舗いずれでも活躍できるオリジナルジェラートとなること請け合いです。
  • メインディッシュに添える-肉料理などのメインディッシュの傍らに食べられるバラを。メインディッシュの豪華さが格段に増すことは間違いありません。バラと合うソースといただく食事は会話も弾みますね。
  • サラダにあえる-生食用をそのままサラダの具材の一つとしてあえる。単調な色合いからカラフルなサラダへ。食事を楽しむことは素敵な女性への近道です。ご自宅でも簡単にお作りいただけます。ぜひ挑戦されてみてください。
  • ローズデザート-ローズケーキやローズムースなど、デザートとバラとの相性は抜群です。生食用でもドライでも、アイデア次第で様々なデザートにお使いいただけます。新メニューにバラを使ったオリジナルデザートを考案されてみてはいかがでしょうか。

これらに紹介したものは一部にすぎません。用途は限りなく、可能性は無数にあると感じています。 エディブルフラワーの楽しみ方 でも簡単に紹介しているので宜しければ参考にしてみてください。

 

[NEWS]エディブルローズ(食用バラ)取り扱い開始のお知らせ

五感で楽しむ薔薇の専門店ローズフェスタが運営するバラ園内の様子を写した写真。食用バラが咲いている。花田昇崇が撮影

当店が運営するバラ園「ローズフェスタパーク」に咲くエディブルローズ品種

 

以上ここまでご紹介してきた考え方に基づき、当初構想より10年、試行錯誤を繰り返しつつこれまで準備を進めてきたエディブルローズ(食用バラ)の取り扱いをいよいよ本年(2017年)より開始いたします。

詳細は追ってお知らせいたします。

※準備中

 

本稿のまとめ

さて、いかがだったでしょうか。

本稿ではエディブルローズを理解してもらうために観賞用のバラがいかなるものかについて説明してきました。そもそもバラに馴染みが薄い方にとってはバラ=観賞用をイメージしているものと思われるためです。これとエディブルローズが全く違う栽培方法であることが伝わりましたでしょうか。そして品種の選び方や可能性についての私見を述べてきました。

本稿で紹介してきたエディブルローズは感性を磨く食事を提供するものです。料理の色どりや食感、そして香りなどを五感を使って味わうひとときはあなたの感性をさらに磨き上げる有益な時間となることでしょう。

あなたもバラと生きる暮らしをはじめませんか?

 

記事の無断掲載・転載を禁止します。

Sentence/All Photo:花田昇崇

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