その花色に魔性が宿る。バラ[オデュッセイア]の栽培実感

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ロサオリエンティスシリーズのバラ「オデュッセイア」の開花写真。赤紫色の花色の拡大写真。撮影:五感で楽しむ薔薇の専門店ローズフェスタ店長:花田昇崇

「“バラの花色”といえばどのような花色を思い浮かべますか?」

そう聞かれたら、あなたならどのような色合いをイメージされますか?おそらくは赤や白にピンクなどの鮮やかな原色や単色(一色)の花色を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

今回ご紹介する品種[オデュッセイア]は、従来のような原色かつ単色の花色とは少し趣きの異なるバラです。「かわいい」や「おしとやか」・「優美」・「繊細」などとしばしばイメージされがちな従来の花色とは一線を画する深みのある色合いが魅力の品種。

比較的、黒星病への耐性が強いため減農薬・無農薬栽培も可能。バラ栽培の初心者にもおススメできる品種です。

本稿は、「ロサ・オリエンティス」から2013年に発表されたばかりの比較的新しいバラ[オデュッセイア]についての私の栽培実感を紹介します。

【掲載写真は2015年現在のものです。】

 

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“ その花色に魔性が宿る。英雄オデュッセウスの物語 ”

バラの品種[オデュッセイア]の写真。ロサオリエンティスより2013年に発表された。

バラ[オデュッセイア]。写真はいずれも当店(ECショップ『五感で楽しむ薔薇の専門店 ローズフェスタ』)のローズファームで撮影。

 

[オデュッセイア:品種データ]

  • 品種名:オデュッセイア(Odysseia)
  • 分類:シュラブ
  • 開花サイクル:弱い四季咲き
  • 花径:8㎝
  • 花形:半八重咲き・ロゼット咲き
  • 香り:強香(ダマスク)
  • 樹形.樹高:直立性.1.7m×1.0m
  • 樹勢:強い
  • 作出:木村卓功.2013年.「ロサ・オリエンティス」

 

花名の由来

花名の由来は古代ギリシアの詩人ホメロスの作と伝わる叙事詩「オデュッセイア」より。

叙事詩オデュッセイアは神話上の戦いであるトロイア戦争の英雄オデュッセウスの苦難の後半生を語った物語。物語は知らずとも「トロイの木馬」という言葉を耳にした方ならいらっしゃるだろうと思う。この作戦を立案した人物として一般的には知られている。同作では、トロイア戦争後の10年間にわたる英雄の苦難の帰路が、怪物セイレーンや魔物スキュラ、魔女キルケ―などとの遭遇を交えて描かれている。

このようなギリシア神話の叙事詩の名が冠せられたバラが「オデュッセイア」。花色を見て「なるほど。」と頷くところのあるネーミング。「ロサ・オリエンティス」の命名つながりから、雑誌「NewRoses」の玉置一裕さんあたりが名付けた印象を受けましたが、はてさてどうなのでしょうか。(※あくまで私の予想です。)

 

オデュッセイア、花色の魅力

200株前後を育てていますが、率直に長所の多い品種だと思っています。なかでも目を引くのは、やはりその特徴的な花色でしょう。複合的で深みのあるカラーが魅力です。年間を通してみた花色の違い(変化)についてご覧いただきます。

 

春の二番花以降(夏の高温期を除く。)の表情。基本カラー

ロサオリエンティスより2013年に発表された新品種のバラ、オデュッセイアの画像。2番花の写真。

バラ[オデュッセイア]。黒味がかった赤色(Black-red)が基本となり、そこにパープルが控えめに姿を見せる。

 

オデュッセイアは年間を通せばBlack-redのベースカラーに、ほんの少しパープルが見え隠れする感じの複合的な色合い

「黒味を帯びた赤色」といったところ。よくよく見れば、左下あたりの花弁にほんの少し紫が乗っているのがおわかりいただけるだろうか。

 

夏場の高温期などの表情。

ロサオリエンティスシリーズより2013年に作出された新品種のバラ、オデュッセイアの写真です。

バラ[オデュッセイア]。2015年夏季シーズンでの一枚。右側あたりに葉やけが見られる。

 

夏場などの高温期には、パープルは影を潜め、より一層、赤黒い表情となる。

パープルが完全に退色したこのような夏場の濃赤色も人気が高い。

炎天下においても燦然と赤く輝く様子は英雄さながらの力強さを感じさせる。

 

※掲載写真は2015年の夏季シーズンでの一枚。外気温が35度を超える連日の猛暑日のなかでのハウス内環境で、強烈な日差しにやられて葉やけを起こしている。

 

※なお、赤系統のバラはこちらでも紹介しています。

⇒ おススメの赤バラ|200種類以上から選ぶ品種の紹介

 

初春の一番花・晩秋の冷温期の表情

オデッシュセイア1

 

「魔性が宿る」と表現したパープルが姿を見せる頃合いは春の一番花と晩秋の冷温期

この季節に咲く花色はBlack-redの基本カラーの随所にパープルがあらわれ、ある花は花弁に一筋のパープルがはしり、またある花はパープルに支配されたかのように花弁全体が紫色に染まるなど、魔が宿ったかのような妖艶な花姿となる。

物語を彩る異界の住人が躍動するのは年間を通してそう長い時間ではありません。魔性の宿るひとときの美しさは、見る者をバラの世界に引きずり込む力、魔力があると言えましょう。

オデュッセイア最大の見どころはこの時期です。

 

ロサオリエンティスシリーズのバラ「オデュッセイア」の開花写真。赤紫色の花色の拡大写真。撮影:五感で楽しむ薔薇の専門店ローズフェスタ店長:花田昇崇

赤紫の開花写真[※2016年,春.撮影]

 

オデュッセイア、その香り

魅力は花色だけではありません。ダマスク系の濃く、そして強い香りが長期にわたって持続します。ダマスク系の香りというのは、バラが放つ数種類の香り成分のうちの一分類で、ダマスクは「誰もがイメージするバラの香り」そのものです。このダマスクの香りに、ハーブの香りが少し加わった感じがオデュッセイアの香り

濃厚で上品な香りは、セイレーンの甘美な歌声のように人の身体と心を蕩けさせます。

 

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育てやすさ、適した環境について。

これより以降は、実際に育ててみたい方を対象としたオデュッセイア栽培の参考情報を書きます。2013年の新品種ということであり、私のオデュッセイア栽培歴は約1年間です。

[※2015年現在のデータ]

必ずしも充分なデータ量に基づくとは言えないかも知れませんが、得られた栽培実感を記載しておきます。

 

適した環境1|特に、日当たりを好む

一般的に、バラは太陽(日光)をとても好む植物です。理想を言えば、朝から晩まで絶え間なく太陽を浴び続けることのできる栽培環境が好ましい。とはいえ、そのような環境は現在の住宅事情ではなかなか難しいことから、実際には3~4時間程度の日照で生育する品種が多いのが現状。

ところがオデュッセイアについては、3~4時間程度の日照では生育に難が生ずるのではないかという印象を今の私は持っています。日陰気味の場所では開花数にかなりの影響があった(悪くなった)のです。

[開花数が悪かった環境の情報]

  • 日照時間 : 午前中のみ。(季節により前後するが、約3~5時間程度)。午後の日照はほとんどない。
  • 栽培環境 : 鉢(8号・ロングスリット鉢。オリジナル培養土)栽培。鉢を地面に直置きはせず、地表より数十㎝上空に杉の板を水平に並べ、その上に鉢を置いていたので風通しに問題はない。ただ、鉢と板が直に接する鉢底の水はけはやや悪い。(=鉢内の水が底から少し流れづらい。)
  • 実験苗数 : 接ぎ木2年生苗 5株
  • 周辺環境 : 周囲はやや湿気のある場所だが風通しはすこぶる良好。

この環境下で5株ほど栽培し、いずれも開花数に難があった。オデュッセイアは親品種の片方が一季咲きのスパニッシュ・ビューティー(Spanish Beauty)のため、完全な四季咲きではない点を踏まえても開花数が相当に少なかったように思う。さらに言えば、この場所で育てた株は秋には咲かなかった

このようなことから、特に日当たりの点を意識して3~5時間以上の照時間を確保できる場所で育てるのがよいと思います。日照不足の影響が強くあらわれる品種と言えるのかもしれません。

 

適した環境2|地植え・鉢植え、いずれも大丈夫

オデュッセイアはシュラブ樹形に属し、直立に生長していきます。樹形というのは、枝がどのように伸びて生長していくかということですが、直立というのは文字通り、横へとは広がらずに上へ上へと伸びていく性質のことです。

※シュラブ樹形の特徴についてはこちら。

⇒ シュラブ(S)ってなに?|樹形の特徴|シュラブ樹形がわかりづらい原因と多様な個性が集まる理由

 

直立性の長所はスペース(場所)をとらないことです。おおむね鉢のサイズから外へとはみ出すことがなく(少なく)なるからです。場所のことにあまり頭を悩まされずに手軽に楽しめるというのはメリットですね。スペースをとらない直立性は鉢栽培向きと言えます。

 

他方で、オデュッセイアは地植えにも向いています。地植えに向くか否かは樹形との関係もさることながら、黒星病というバラ宿命の病害との関係で考えます。

黒星病を簡単に説明しておくと、これは雨によってもたらされる病害で、最初、バラの葉の表面に不規則に小さな黒い斑点が生じ、それが他の葉にも急速に拡大しつつ、小粒だった黒い斑点自体も徐々に肥大化していき、やがて感染した葉が晩秋の落ち葉のように黄変して落葉するという症状です。

植物は光合成でエネルギーを蓄えており、この光合成は葉で行われています。植物の生命活動は根から水分と養分を摂取し、それを葉が日光を受けてエネルギーへと変換する(=光合成)わけですが、黒星病はこの葉の大部分をを失わせしめるので恐ろしい病気なのです。

ですが、安心してください。

オデュッセイアはこの黒星病に比較的強いのです。これは長所です。黒星病に感染はしますが樹勢は衰えません。例えるなら、敵の銃弾を受けてもひるまず、被弾しながらなおも進軍する戦車のような強健さです。オデュッセイアでしたら薬剤に頼らずとも地植えで減農薬または無農薬栽培が可能です。(むろん定期的な薬剤散布をすれば尚安心ではありますが。)

 

以上のように鉢植え、地植えのいずれにも向くというのは素晴らしい長所です。

 

追記|とげの様子について

ロサオリエンティスシリーズのバラ「オデュッセイア」の枝の様子。

とげの様子。[2016年,春.撮影]中心の縦筋が入っている枝は前年枝。右に伸びているのが今春のシュート。

 

オデュッセイアのとげの様子についてご紹介します。写真でご覧いただくのがわかりやすくて良いと思います。

ご覧のとおりに、大きくて鋭いとげがありますもっとも、その数は多くなく、目に見えないほどの小さなとげはありません肉眼で見える範囲で避ければ足りるので、とげはあれども扱いやすい部類と言ってよいのではないかと思います

 

 

本稿のまとめ

さて、いかがだったでしょうか?

オデュッセイアを育ててみて感じた栽培実感を品種の魅力を交えて紹介しました。

案内した通り、バラ栽培の入門者におススメして良い品種です。「あまり細かな手間がかからない」というのがとにかく良い点です。それでいて香りが素晴らしく、花色も比類ない。バラを育てる楽しみを手軽にはじめることができます。あなたも魔性が宿る花[オデュッセイア]から異界への入り口へ、もといバラを育てる楽しみ、そしてバラとの暮らしに触れてみませんか?

 

バラを育ててみたいと思ったあなたはこちらもご覧になってみてください。

⇒ バラ初心者の品種の選び方。あなたに最適なバラを探す4基準

 

最後までお読みくださりありがとうございました。

※2016年はこれから開花シーズンを迎えます。本年の栽培経験を踏まえ、本稿は掲載写真の追加や記事のリライトを適宜行っていきます。

 

写真・記事の無断転載を禁止します。

Sentence/All photos:花田昇崇

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コメント

  1. アイスバーグ より:

    ぜひ育ててみたいです。ところでトゲはきついでしょうか?

    1. rose-festa-square より:

      アイスバーグさん

      こんにちは。はじめまして。
      トゲについて言及できていませんでしたね。質問いただいた点を本文に加筆して写真も追加しましたのでご覧になってみてください。トゲはありますが扱いやすいのでさほど気にされなくても大丈夫と思います。
      オデュッセイアは素敵な品種です。ぜひ挑戦されてみてくださいね。

  2. アイスバーグ より:

    お返事ありがとうございました。
    今年の暮れで、丸三年になるアイスバーグ(つる大苗)が、300輪以上もの花を咲かせてくれました。
    オデユッセイアの新苗が6月中旬頃に届く予定です。
    アイスバーグのように育て易いバラで美しく咲いてくれれば嬉しいです。

    1. rose-festa-square より:

      アイスバーグさん
      いいえ、滅相もない、コメントくださりこちらこそありがとうございます。
      300輪とは見事ですね!誘引され、一面を覆う純白のアイスバーグの開花姿は想像するだけでもうっとりしそうな景観でしょうね!冬の誘引作業が大変そうにお見受けしますが、それほどの花を咲かせてくれるなら苦労も乗り越えられますよね。
      もうすぐ新苗が届くのですね。
      アイスバーグさんならきっと見事に咲かせられることだろうと思います。秋に(少しでも)開花させられるように夏に気をつけてしっかりと株を作っていかれてください。
      そういえば、本文で書いてなかった補足の情報です。オデュッセイアは夏場は葉やけしやすいです。夏の日差しには少し気を付けられると良いと思います。

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