苦みと甘みが溶け込む花色まろやかなバラ[カフェ・ラテ]の栽培実感

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18世紀のイタリアで誕生したカフェ・ラテは、濃厚でコクのあるエスプレッソに甘いミルクを加えることでマイルドに仕上げられた飲み物です。エスプレッソの苦みをミルクの甘みが包んでいることでとても飲みやすい人気のドリンクですが、これと同名のバラがあります。

バラ「カフェ・ラテ」は、エスプレッソとミルクが混和したその色味を彷彿とさせる花色そのままに、ほろ苦さと甘さを感じさせるミルラ(没薬)の香りが添えられている大変魅力的な品種です。

本稿は、名前に違わぬ花色まろやかなバラ「カフェ・ラテ」の栽培実感です。

 

8分咲きの「カフェ・ラテ」の花姿の中心部の巻きを拡大した。

花芯の巻きはまるで注ぎ込まれたミルクの紋様のよう。

 

品種の情報

4基準データ

  • 花色 : 伽羅色~キャメル
  • 芳香 : ★★★☆☆☆ (微香~中香/ミルラの香り)
  • 耐病性 : ★☆☆☆☆☆ (うどんこ病に「かなり弱い」。黒星病に「弱い」)
  • 樹形 : 木立ち性・ハイブリッドティー

※4基準とはバラ入門者の方がはじめてのバラを選ぶうえでの指標となる4つの判断基準です。さまざまにある選択要素のなかから最も重要な4つの基準を紹介しています。

⇒ バラ初心者の品種の選び方。あなたに最適なバラを探す4基準

 

補足基準データ

  • 花つき : やや悪い
  • 花もち : 良い
  • 花形 : 半剣弁高芯咲き
  • とげ : ほとんどない
  • 耐寒性/耐暑性 : 夏に少し弱い。下葉が黄変し落葉しやすい
  • 花径 : 13cm[大輪
  • 樹勢 : やや強い
  • 開花サイクル : 四季咲き
  • 作出 : 2005年.オランダ
  • 原名 : Caffe Latte

※「半剣弁高芯咲き」をはじめ、バラの花形にはさまざまなものがあります。

⇒ 花びらと花のかたちで見る「花の表記」の読み歩き

※補足データは4基準に準じる2次的な基準です。4基準のように育てやすさに直結するものではありませんが、個々の花の個性を形づくる大切な要素です。

 

外観上の特徴

カフェ・ラテは四季咲き性の品種で、冬期を除く春~秋に何度も繰り返して開花します。

花色

大きな魅力はエスプレッソとミルクが混和したあのクリーミーな色味を彷彿とさせる優しい花色にあります。

伽羅色~キャラメル色のまろやかで美しい花色は、見る者の気持ちをほっこりと落ち着かせてくれそうです。

キャラメル色のバラ「カフェ・ラテ」の8分咲きの花姿。[撮影者:花田昇崇]

 

花もち

8輪の「カフェ・ラテ」の開花した花姿。

切り花にして長く楽しむことができるのが嬉しい。

 

カフェ・ラテの魅力をさらに引き立てる要素が花もちの良さです。美しい花色を長く楽しむことができる花もちの良さは花の魅力をより一層豊かにしてくれます。

切り花として流通していることからも伺えるように花もちの良さは折り紙つきです。

 

花つき

ただし、花つきは、一般的なハイブリッド・ティー系品種のそれと比べるとやや悪いという印象を受けます。

ハイブリッド・ティー(HT)ってなに?|樹形の特徴|モダンローズの誕生にまつわる歴史

 

とはいえ、日頃の管理や株の充実度により花つきの良し悪しは変わってきますのでさほど気にすることはありません。

「カフェ・ラテ」のつぼみ。

つぼみ

 

香り

ミルラ(没薬・もつやく)の香りを放つ中香品種で、花色と並ぶこの品種の大きな魅力が香りです。

日常あまり耳にしないであろうこのミルラという香りは、八角やハーブのアニスシードによく似ていると言われます。(ただしアニスよりも甘さは控えめ。)

ほろ苦さと強い甘みとともにやや青臭さもある独特の香りで、いわゆる典型的なバラらしい香りとは少し距離があります

このミルラの香りに触れると、どうやら落ち着いた印象(リラックス)を受ける方が多いようです。

この花色と香りを備えたバラの名がカフェ・ラテとはよくよく納得のいくネーミングです。

 

葉の様子

管理人の経験上、強さを感じにくい葉をしています。

 

「カフェ・ラテ」の葉。

 


 

育てやすさについての私の実感

「カフェ・ラテ」の6分咲きの花姿。

耐病性

バラはさまざまな病気にかかりますが、品種を問わず最も頻繁にかかるのが「うどんこ病」と「黒星病」の2つの病気で、これらは「バラの2大病」と呼ばれています。

この2大病に「かなり弱い」品種です。

詳細を見ていきます。

うどんこ病への耐病性

うどんこ病への抵抗力が「かなり弱い」品種です。

[※表記の参考:かなり弱い弱い < 普通よりも弱い < 普通]

株の充実度により多少の違いがありますが、いずれにせよ弱い品種です。

早め早めに予防薬剤を散布することが必要です。薬剤の散布を怠ると花季のどこかのタイミングでうどんこ病が生じる可能性が高いでしょう。

うどんこ病の症状|風が運ぶ脅威。季節はずれの粉雪がもたらす病害 ではこの病気について解説しています。

発症した場合には食卓にある食酢などの手ごろな防除資材を使って早め早めの対処が肝心です。

⇒ 食酢はうどんこ病・ハダニ・窒素過多の解消に効能があります

黒星病への耐病性

黒星病への抵抗力が「弱い」品種です。

[※表記の参考:かなり弱い < 弱い < 普通よりも弱い< 普通]

予防薬剤のコーティングを施してなければ例年5月には黒星病の発症を確認することになるでしょう。できるだけ雨露にあてない工夫をすることが大切です。

黒星病の対策は感染初期であれば効果が認められています。 [保存版]500mlペットボトルで超簡単にバラの消毒を行う方法 ではペットボトルを使った手軽な消毒方法を紹介しています。

抵抗力まとめ

ご覧のように2大病のどちらにも弱く、病気に強い抵抗力を備えてはいません。

薬剤散布が必須の品種です。

育てるにはこれらの病気と立ち向かう心構えが求められます。

 

樹勢

病気に強くは言えない品種ですが、一方で樹勢はとても強いです。地植えをすると枝ふとくよく育ちます。[ただし、葉を落とさないように育てることが不可欠。]

横への広がりは1mほどスペースに余裕を設けていれば充分ですが、品種の特性として上への伸長力により優れている印象です。

 

とげの具合

とげが少ないため扱いやすい品種です。

少し気を付ければとげに刺さる心配は無用かと思われます。

「カフェ・ラテ」のとげ。

目に見えるとげがぽつぽつとある程度。

 

栽培のコツ

半日陰はダメ。日光を特に好む品種

私が試したところによれば、1日3時間程度しか日当たりがない半日陰の環境で半年ほど2株を育ててみたところいずれもよく育ちませんでした。他方で違う場所で充分に日光を浴びせて育てたカフェ・ラテはよく育ちました。

日光以外の栽培条件は同様です。

半日陰ではよく育たない品種だと思われます。充分な日光が降りそそぐ環境で育てるようにしましょう。

 

アブラムシが多くつく

バラには大なり小なりアブラムシがつきますが、特に多く集まる印象を受けます。

アブラムシをなるべく寄せ付けない日頃の管理を意識したいところです。

 

適する栽培方法

株が太く大きく成長していくので地植えがおススメです。株がよく育つと花数も多くなります。

ただし地植えをするなら雨露を避けられる場所をよく選ぶ必要があります。鉢で育てる場合にしても意識的に雨露を避けるようにしたいところです。梅雨時期や降雨時には鉢を軒下へ移動するのが安全です。

 

結論:育てやすいか?のまとめ

ご紹介してきたようにカフェ・ラテはバラの2大病に強いとは言えず、耐病性に不安がある品種です。

樹勢の強さがあるので病気を克服していこうとする強さは備えていますが、それでも薬剤が必要となるケースが多くあるかと思われます。

病気や薬剤の知識が求められる点で育てづらい品種と言えるでしょう。[中・上級者向け

 

「カフェ・ラテ」の8分咲きの花姿。2輪写っている。[撮影者:花田昇崇]

 

本稿のまとめ

切り花の人気品種カフェ・ラテの栽培実感でした。少し手のかかる品種ではありますがその分だけ開花の喜びはひとしおですよ。

本稿がより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活をはじめませんか?

写真・記事の無断掲載・転載を禁止します。

カフェ・ラテの栽培/Sentence/All photos:花田昇崇


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