水はけが悪い土地でのバラの地植え|高植えのメリット・デメリット

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もしあなたのお住まいの地盤が粘土質土壌などであって排水に問題がありそうな土地柄であればバラを通常とおりに株元まで地中に埋めるのはちょっと待ってください。

生育不良になったり、最悪の場合には根腐れを起こして枯れてしまうかもしれません。

水はけが悪い土壌は高植えすることでこのような状況が随分と改善します。粘土質土壌などの排水不良地でバラを植えるなら高植えがひとつの解決策です。

本稿は、高植えのメリット・デメリットや行う手順、そしてショートカット方式の高植え方法を併せて紹介します。

 

粘土質土壌の原則|バラ栽培には適さない

原則|粘土質の土地は不向き

過湿と酸欠で根腐れを引き起こしやすい

まず最初に確認しておきたいことは、原則として、粘土質の土壌はそのままではバラの生育には不向きです。[※粘土質に向く植物もあります。]

粘土層の土は粒子が細かく、少量の水でもギュッと凝縮して塊になりやすい特性があります。その結果、土と土との間に空気や水が入り込む隙間ができにくく、バラの根をはるために適した団粒構造とは真逆の特性をもっています。

粘土質の土壌は水持ちが良い反面、水はけは良くありません。水はけの悪い土地は過湿気味になりやすく、したがって根腐れしやすい環境になるのでバラにとって良い環境ではありません。

※参考 : このあたりのことは 2つの視点で見るバラの水やり|基本となる取り組み方 内の「水とバラとの関係」項で説明しています。

なお、ギュッと凝縮された粘土質の土は土中の空気量も少なく、灌水によっても空気の入れ替えが難しいという特徴もあります。

このような土壌の性質から、もしも株元まで深く植えてしまえば粘土質の土の圧迫を受けて根に酸素が届かなくなり、ついには酸欠による根腐れを引き起こすおそれも生じます。

そのため、粘土質の土壌でバラを育てていこうとすれば、本来であれば「土壌改良」という手間のかかる作業をあらかじめ行わなければなりません。

水をよく通す排水の良い土壌に変えていく必要があるのです。

 

土壌改良はとても大変な作業

とはいえ、この土壌改良という作業は大仕事です。

一帯を耕作することからはじまり、土の性質を変えるために後掲のような複数の改良資材を広範囲に、しかも大量に投与しなければならず、また土の性質が一朝一夕に変わることはないので時間もかかります。

土壌改良を1人で行おうとすれば費用・時間ともに多くのコストを要する負担の大きい作業になります。

 

例外|高植えは肉体的な負担が小さい

そこでこのような負担を回避するひとつの解決策をご紹介します。

それは高植えを行う、という方法です。

高植えとは、地表面の上に盛り土をして周囲よりも一段高くなる植え場所を設けてそこに植え付けるという方法です。

この高植えには以下のようなメリットがあります。

 

高植え|3つのメリット

  • [直接そのまま植えた場合と比べると]排水の問題が大幅に改善される
  • 耕作は植え付け予定箇所の周辺の小範囲で足り、広範囲の耕作[強い粘土層の場合は「掘削」というに表現に近い。]という重労働から解放される[=人的コスト減]。
  • 土壌改良資材の投下も植え付け予定箇所の周囲の最低限度の分量で足りる[=費用コスト減]。

まとめると、高植えで得られるメリットは、より少ない労力と費用で粘土質土壌でのバラの生育不良を回避することができることにあります。

 

高植え|3つのデメリット

反面、デメリットもあります。それは、

  • 平面よりも一段高い位置・空間を設ける高植えは、そこに陽ざしが集中するため株元・根が通常よりも強い乾燥にさらされるリスクが生じる
  • 乾燥に加え、水はけが改善した分だけ、水切れ症状も起こしやすい
  • 重要]高植えで植えた株は安定性を欠く。台風時はもちろん、強風の際には株が倒れないことに警戒が必要。

の3点があげられます。

このようなデメリットがあるのでこれを踏まえ以下の注意点があります。

高植えの注意点
  • バラの生育期[春~秋]は乾燥に注意し、水切れに気を配る必要がある。
  • 晴天が続く炎天下の夏場は地植えであっても定期的な潅水[水やり]を忘れない
  • 盛り土が風に飛ばされていれば追加で土を足してあげる。
  • 生長した株が強風で倒壊しないようにいつも以上に支柱・構造物への誘引をきっちりと行う

この4点が注意点です。

なお、植え付け初期だけの注意点として、盛り土が崩れないようにジョウロでゆっくりと水を与えるようにしましょう。

粘土質の土壌はやがてほどほどに固まるのでそれ以後は盛り土も徐々に崩れにくくなっていきますが、最初の頃は注意します。

 

管理人の考え

高植えは乾燥状態に伴う水枯れと強風に気をつける必要があることはお伝えしました。

この高植えを行うことによって得られるメリットとデメリットを比べると、私は土壌改良を行う手間とコストよりも高植えのデメリットを抱えるほうが取り組みやすいのではないかと思っています。

 

高植えの手順

排水不良地での高植えの一般的な方法

ここからは実際に行う手順を紹介します。

ステップ1|植え付け箇所の周囲を深耕する

まずは植え付け予定地の周囲の半径50cmほどの範囲を深耕します。盛り土をする箇所の下をしっかりと掘っておきます。

粘土質土壌はとにかく土がかたいのでスコップもクワもすんなりとは入っていきませんがここは気合一発です。

固まっている土のかたまりを掘り起しては砕きながら周囲が柔らかくなるように耕します。こぶしほどの石はもちろん、小石などもできるだけ取り除きましょう。

深さについては、可能なら下に50cmほど掘ることができればそれが良いのですが、50cm未満の位置に粘土層が横たわってそれ以上掘り進められない場合には、[下に行けない分だけ]横(周囲)を少し広めに掘るなど工夫されてみてください。

 

ステップ2|掘り穴の底に石を敷く

ステップ1で耕作した土を一度穴の外にかき出し、穴の底にごろ石や砂利石などを並べて敷き、石の層を設けます。

こうすることで随分と水はけがよくなります。

※必ずしも石を敷かなければいけないわけではありません

 

ステップ3|1の箇所[土中]に土壌改良剤を加える

ステップ2でかき出した土を掘り穴に戻します。

ステップ1でよく耕した土は見た目では柔らかくなっているように見えるかも知れませんが、これは一時的なものです。降雨で水を含めばすぐに元通りにかたくなってしまうことが多かろうと思われます。

そこでこの土質の改善を行います。

耕した土に以下の土壌改良資材のなかから必要なものを適宜・適量選んでよく混ぜ合わせます。

  • 牛糞堆肥[完熟のもの] 
  • 腐葉土[完熟のもの] 
  • 赤玉土[大・中・小を適量]
  • ピートモス 団粒構造をできやすくする。
  • バーミキュライト
  • パーライト
  • [有機・苦土]石灰
  • 真砂土 など

 

100リットル以上の「真砂土」の写真。

100リットル以上の真砂土。真砂土はとても重く、運ぶのに難渋する。

 

これらの資材はすべて必要なわけではありません。2つ3つ程度で大丈夫だと思います。

  • [完熟]牛糞堆肥
  • 腐葉土
  • ピートモス
  • パーライト|通気性を良くして水はけを良くする。「黒曜石パーライト」がおススメ。

このあたりが手頃です。

牛糞堆肥や腐葉土、ピートモスなどの有機質や有機質肥料は粘土質の土を団粒構造に変えていくための資材です。

※なお、牛糞堆肥は「完熟」したものが好ましいのですが、じつはこれがあまり出回っていません。ホームセンターなどで売られている「完熟」と名がつく牛糞堆肥はじつは未完熟のものが非常に多いと私は感じています。

完熟した牛糞はいやな匂いが一切なく、手触りもさらさらとしています。

 

完熟した牛糞たい肥の写真。

完熟した牛糞はパウダーのようにさらさら。

 

さて、上記のような土壌改良資材を加えてよくなじませると次のようにやわらかくふかふかの土になります。

粘土質の土壌を深く耕し、牛糞たい肥や真砂土、苦土石灰を混ぜ合わせてバラを植えるに適した土にした。その写真。

団子状に見えるのは砕いた粘土の欠片。白く見えるのは有機石灰。有機石灰は使用後にすぐに植えてOK.

 

今回は次のバラを植えます。

8号スリット鉢にはいったバラの苗。

成長が悪いバラを植えることにした。

 

ステップ4|3の場所の上に盛り土をする

改良資材と混ぜ合わせたステップ3の土の上に盛り土をしていきます。

この盛り土用の土は、ステップ2と3の余剰分の土だけでは容量が足らないのでどこか違う場所から別途もってくる必要があろうかと思います。

お庭の別の場所から集めてくるか、古い土を再利用するのがよいでしょう。

ステップ3と同じように土質の改善をしておきます。

 

ステップ5|盛り土のなかに収まるように植え付ける

盛り土のなかに収まるように植え付けをして高植えは完成。

ここまでのステップ1~4によって植え付け土壌はバラの生育に適するふかふかの土になっていると思います。

水をたっぷりとあたえて植え付けは完了です。

 

盛り土を省き、土を少量にして植える高植え例

ここまで紹介してきた方法でも、じつはかなりの労力が必要です。

女性おひとりでは困難かもしれません。

[粘土質の地面を大きく掘ったりごろ石や土壌改良資材を運んだりなどするので。]

この労力をさらに減らすために上記1~5ステップのどこかを省略できないものかと日ごろから考えていました。

そこで、手間を減らす方法を併せて紹介します。

 

ショートカット方式|盛り土を減らす

ステップ2と4を省略する

ステップ1[深耕する]とステップ3[土壌改良材を加える]は排水性に大きく影響して、高植えの目的・メリットを大きく損ないかねません。この1と3で手を抜くことはおススメできません。

そこで残るステップ2[堀り穴の底に石を敷く]とステップ4[盛り土の容量を減らす]を省略して植え付けたいと思います。

ごろ石や土をわざわざ集めてくる労力が少なくなるでも大変さは随分と変わってきます。

 

ショートカット方式|具体的な手順

この場合には以下のように置きます。まずは鉢からだした株を土の上にそのまま置きます。

粘土質の土壌に真砂土や牛糞たい肥を混ぜこんで土壌を改良した土の写真。

 

くぼむ程度に土を掘った場所にバラの苗を置いている写真。

写真撮影時に株を安定させるために少し地中を掘ってるが、実際にはフラットにならした土の上にそのまま置けばOK。

 

そしてバラの周囲に土をかぶせるようにして盛り土していきます。そうするとこのようになります。

[これでもそれなりの容量の盛り土にはなります。]

排水不良地にバラを高植えした写真。

小石に見えるのはどれも砕いた粘土層の一部などの土。

 

水受けを設けて灌水して根と土を馴染ませれば完成です。

 

[重要]ショートカット方法の注意点

通常の高植えよりも一層気を配らないといけない注意点があります。

それは、高植えは一般に横風の影響を強く受けるにもかかわらず、このショートカット方式の特徴は、バラの根と地面との接着面が極めて脆弱な点です。

[後掲の写真をご覧いただいて予想がつくかもしれませんが、この方式だと足元(株元)がぐらぐらとして安定しづらいのが欠点です。]

株が大きく生長した場合には横風を受ける表面積も大きくなるので、根が充分に地中に張れていなければ風の強さに抗しきれず株が倒されてしまうリスクがあります。

株が倒れてしまうと大小の根が切断されてしまいかねず、生育期の根が切断されることは株に大ダメージを与え、たちまちバラは枯れてしまう可能性が生じます。

そこで、このショートカット方式の注意点・コツは、万が一にも株が転倒しないようにすることがこの方法のポイントです。

具体的には、支柱をこのように2か所にしっかりと立てて固定しておくようにしましょう支柱は1本ではなく必ず2本以上します

串刺しのようで見た目が少し不格好に見えるかもしれませんが、枝葉が展開すると案外気にならなくなります。

地植えしたバラが倒れないように、株元に2つの支柱を交互にクロスするように指して倒れないようにしている写真。

 

支柱をかなり傾けて低い位置で交差(クロス)させることで支柱の強度を増しています。(写真では省略しているが、支柱同士もしっかりと結んでおく。)

このようにしておくことで四方いずれの強風に対してもなかなか頑丈です。

最後に、水を与えて高植えは完成です。

 

本稿のまとめ

さて、いかがだったでしょうか。

本稿では粘土質土壌は本来バラの生育には不向きであること、それを改善する高植えのメリット・デメリット、そしてショートカット方式の高植え方法と注意点を紹介してきました。

排水不良地で悩む方は注意点をしっかり意識しつつ挑戦なさってみてください。

本稿がより良い暮らしに役立てば幸いです。あなたもバラと暮らす生活をはじめませんか?

 

写真・記事の無断掲載・転載を禁止します。

バラの管理/Sentence/All photos:花田昇崇

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